Radio Bagdad【CD】

「アラブの春」に捧げられた在仏イラク人による
ポップかつトラディショナルなアラビック・サウンド

　テュニジアの「ジャスミン革命」をきっかけに一昨年からはじまった「アラブの春」は拡大を続け、アラビア半島の一角を占めるシリアでは現在、残念ながら内戦状態となっていることはご承知のとおり。その隣国であるイラクも例外ではありませんが、同国出身のミュージシャンからそんな運動にエールを送るさわやかでポップな伝統音楽作品が届きました。
　ファウジ・アル＝エディはイラク南部の港湾都市バスラ生まれ。この町はイラク第２の都市で、最高気温で世界記録をもっていることで知られています。ファウジは青年期にバグダードの音楽院でアラブの伝統音楽（ウードと歌唱）と、西洋のクラシック音楽（オーボエ）を学習し音楽の道を着実に進んでいましたが、1971年に当時の独裁体制を嫌い、フランスに留学し、以後、帰国することなくフランスに住み続けています。フランスでも音楽学校でオーボエとホルンを学び、シャンソン歌手ジョルジュ・ブラッサンスやカナダのレナード・コーエンを発掘した音楽賞を獲得。それからはさらに独自の音楽を模索するようになりました。1976年にはファースト・アルバムを発表し、それから現在までに10枚以上のアルバムをリリースしてきました。
　本作はそんなファウジの最新作。彼は西洋音楽も長く学習したことから、完全な伝統音楽アンサンブルからジャズに接近したバンド、またウードの弾き語りといったさまざまなプロジェクトをもっていますが、ここでは９人のバック・バンドを引きつれています。ウード、ギター、ベース、アコーディオン、ドラムズ、各種伝統パーカッションといった布陣ですが、彼がパフォームする独自の音楽はいつでもアラブの伝統音楽がベースとなっていて、今回ももちろん例外ではありません。決して“ミクスチャー”なんてものではなく、伝統音楽をナチュラルに現代化したサウンドといいましょうか。もし、イラクに平和が続いていたらこんな音楽が好まれていたかもしれません。ポップだけど、しっかりと根を張った音楽。そんなさりげなさがアラブ音楽の未来を指し示しているようです。（メーカー資料より）