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コラム

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2020年4月号

今月の特集は
『資本主義を考える』
『【燃え殻書房】燃え殻さんという小説家のたゆたう共振性』

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)

すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。





今月の特集(一部抜粋)





 『資本主義を考える』

 近年、「資本主義」そのものを問う議論に、大きな関心が集まっています。成長の停滞、格差・不平等の拡大など、私たちが生きる資本主義世界には、いまかつてないほど難題が山積みです。そんな中で突如起こったコロナウイルス・パニックは、グローバル資本主義への強烈なボディブローになりました。
 20世紀は資本主義VS社会主義の対立が世界を覆いました。しかし勝利者となり、事実上唯一の経済体制となった資本主義にも、この十数年で大きな変化があり、また変化の予兆があります。なかでもインターネットやAIテクノロジーのインパクトは大きく、現代資本主義を考えるはずせない論点になっています。
 資本主義への処方箋も、保守VSリベラルあるいは新古典派VSケインズ派、近代経済学VSマルクス経済学などの従来の対立軸のみならず、ポズナーとワイルの『ラディカル・マーケット』のような、最新の経済学に基づく斬新なオルタナティブが出てきました。そのへんはのちほど触れるとして、まずウォーミングアップに、「資本主義とは何か」について次の2冊でざっくりつかみましょう。

丸山俊一、NHK「欲望の資本主義」制作班『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る― ―「欲望の資本主義」特別編』(東洋経済新報社・1,500円)
ヤニス・バルファキス/関美和訳『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社・1,500円)
 前者は日本を代表する経済学者・思想家として屹立する知の巨人・岩井克人の最新語り下ろし。代表作『貨幣論』の根本思想を中心に、資本主義の本質に迫ります。これまでの著作以上に明快で、かつ岩井さんの近年の研究を反映した洞察が繰り広げられています。貨幣経済=資本主義は近代の産物ではなく、すくなくとも紀1前6世紀からあり、貨幣や資本主義の本質をつかんだ最初の人は古代ギリシャの哲人アリストテレスだったなど、目からウロコのお話があります。
 後者もユニーク。ギリシャの財務大臣を務めたこともある経済学者で政治家のバルファキスが自らの娘に経済をわかりやすく解説。バルファキスのメンターはマルクス、ギリシャ悲劇、ケインズ、ブレヒトだそうで、マルクス主義への親和性は感じますが、貨幣論など明らかに近年の研究を参照しており、ありきたりの教科書的な解説ではありません。
 思想史的な資本主義論としてもう1冊、哲学者の荒谷大輔による『資本主義に出口はあるか』(講談社現代新書・900円)もいいです。近代以降の社会を「右/左」でなく「ロック/ルソー」という対立軸で整理し、「そもそも資本主義とは何か」という資本主義原論として、有用な頭のトレーニングになるでしょう。

非物質化する資本主義
 さて、前述のように近年の資本主義における顕著な変化として、「IT化」「データ化」「無形化」があります。資本主義は従来「土地」「機械」など「モノ」を一手に利益を生み出してきました。しかし今、情報、データといったさまざまな「形も重さもないもの」「無形資産」が、利益を生み出しているのです。このテーマを掘り下げた本を2冊挙げましょう。

 ジョナサン・ハスケル、スティアン・ウェストレイク/山形浩生訳『無形資産が経済を支配する――資本のない資本主義の正体』(東洋経済新報社・2,800円)の原題はCapitalism without Capitalつまり「資本なき資本主義」。「無形」の原語はintangibleつまり「さわれない」「実体がない」。無形資産が経済に占める割合が増えると、経済の「質」も変わる。例えばスピルオーバー(波及効果)が大きい、スケーラブル(拡張可能)になる、シナジー効果が出る、などなど。ややアカデミックではありますが、とても示唆的な本です。

 ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、トーマス・ランジ/斎藤栄一郎訳『データ資本主義――ビッグデータがもたらす新しい経済』(NTT出版・2,700円)は、金融市場へのオルタナティブとして「データリッチ市場」を提起します。データが豊富になれば金融市場の重要性は低下し、その先には貨幣の役割に大きくブレーキがかかり、貨幣中心市場からデータリッチ市場への軸足の移行が起こると説きます。著者は『ビッグデータの正体』の著者でもあります。
 ちなみに、かつてエコノミスト、ダイアン・コイルは『脱物質化社会』(東洋経済新報社、2001年)という本で先駆的な指摘をしていました。その原題はThe Weightless World=「重さのない世界」でした。また、京都大学の諸富徹教授は、こうした状況を資本主義の「非物質主義的転回」と呼んでいます。

諸富徹『資本主義の新しい形』(シリーズ現代経済の展望/岩波書店・2,600円)

グローバリゼーションのIT化
 資本主義の「グローバル化」も、ITによって「新次元」の進展をみせています。リチャード・ボールドウィン/遠藤真美訳『世界経済 大いなる収斂――ITがもたらす新次元のグローバリゼーション』(日本経済新聞出版社・3,500円)は、グローバル化を産業革命以降1990年以前の「オールド・グローバリゼーション」と90年代以降の「ニュー・グローバリゼーション」に二分し、前者において進んだ先進国と新興国の「大いなる分岐」が、後者=現在において逆に「大いなる収斂」をもたらしているというビッグ・ストーリー。この収斂をもたらしたのがコミュニケーション技術であり、その帰結であるグローバル・バリューチェーン革命=複雑な国際生産分業ネットワークです。

…続く

2020/04/03 掲載

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