書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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時効なし。 若松 孝二 (著)
若松孝二については以前「~全発言」について書評を書いた。
若松孝二については以前「~全発言」について書評を書いた。その後の三池崇史を超えるかのような活躍ぶりを見るにつけ突然の逝去が惜しまれる。
映画に時効はない。作家が亡くなろうと作品は猶も生き続ける。ピンク映画を撮り反権力の象徴に祭り上げられたが本人は決してそこに安住しなかった。評論家によってピンク映画が評価され市民権を獲得するのに逆に反発し一般映画に進出した。自身の作品でありながら駄作を一蹴しものづくりに携わる人間の矜持を示した。
2004年の「17歳の風景」を見て透明感のある肩肘張らない演出に瞠目した。海外でも映画人を勇気付けるものだと高く評価された。次回作への情熱は尽きることがなかった。撃たれても刺されても死なないような人の交通事故死には無念さとともに、「ケーブルホーグのバラード」のような爽やかさを抱かずにいられない。
雑誌「事業構想」12月号には事故前日のインタビューが載っている。若松が手帳に書き毎朝開いたという四原則「群れない、頼らない、ぶれない、ほめられようとしない」は黒書店員の後半生の指針ともなろう。合掌。
黒書店員 D