書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「丸善書店・ジュンク堂書店 営業本部」のレビュー
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からすのてんぷらやさん かこ さとし (作・絵)
1973年に発行されてから子どもたちに愛されてやまない絵本…
1973年に発行されてから子どもたちに愛されてやまない絵本、「からすのぱんやさん」。
幼いころ読んだ記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
私自身、本を広げる度にページいっぱいに広がるおいしそうなパンたちに胸をときめきかせていました。(この本を思い出すたびに、無性にパンが食べたくなります・・・)
さて、その「からすのぱんやさん」、40年ぶりに続刊が出ました。しかも4冊。
ぱんやさんで育った4羽の子ガラスたちがおとなになって、四者(羽?)四様、さまざまなお仕事に奮起します。
その中で私がおススメしたいのは「からすのてんぷらやさん」。
三女で黄色い羽根が特徴のレモンさんが手伝うのは「てんぷらやさん」。
なんと手伝うきっかけはてんぷらやさんが火事になったから。
お店のご主人のお見舞いにいくと奥さんは行方不明、一人息子は怪我で目が見えなくなり、主人は意気消沈。
そこで再建のためにレモンさんがひと肌脱ぐ・・・という絵本とは思えないシリアスな設定です。
とはいえ子どものためのおはなしですので、おもしろおかしくてんぷらを作って、ページいっぱいにおいしそうなてんぷらが広がります。
結末も、絵本らしく大人も子どもホッとできる展開。
なぜこの題材なのか、あとがきによると作者本人が戦災や震災に遭った際、レモンさんのような心優しいひとたちに触れた経験に基づいているとのこと。あとがきを読んでから改めて読み返すと、また違った印象を受けました。
お子さまがいらっしゃる方はもちろん、幼い頃「からすのぱんやさん」に胸を踊らせた方にもおススメの1冊。からすの兄弟たちの成長に心が温かくなるはずです。
(評者:ハイブリッド総合書店honto 書誌データベース担当 AT)