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書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

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ジュンク堂書店 難波店店員

書店員:「ジュンク堂書店難波店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|難波店

戦争と性 マグヌス・ヒルシュフェルト (著)

戦争と性

性を直視した、戦争のリアル

この本は、1956年に翻訳刊行された河出書房『世界性学全集第1巻 戦争と性』の復刻版であり、ベルリン性科学研究所主宰のマグヌス・ヒルシュフェルト博士の手になる原著は、ナチスが政権を握る直前の1930年に刊行されている。直近の戦争は、人類が初めて国家総動員体制下で戦った第一次世界大戦である。
戦争が始まると男たちは戦場へと駆り出される。愛する伴侶の無事を祈っていた女たちは、男たちの不在の長期化につれて、性欲を持て余すようになってくる。そのことを責めるわけにはいかない。性欲は食欲と共に人間の二大本能であり、種族保存のための欲望であるからである。性欲なくして、人類は今地球上には存在しないだろう。男日照りが続くと、例えば捕虜を相手の醒愛が流れ出す。あるいは、傷病兵への情愛が深まってくる。看護婦たちの献身的な仕事も、単なる美談とは言い切れなくなってくる。
一方、自分たちが祖国のために命を賭けている時にそのような疑いに襲われた男たちも、モラルを掲げて不義の妻のことにかんかんになる資格は、おそらく無い。平時のモーラルをかなぐりすて、新しい戦争のモーラルに盲従するのが戦場の兵の義務であり、性もまたその例外ではありえないからだ。娼婦たちが軍隊部隊の一部を形成していた中世の出征に対し、近代の戦争で長期にわたって比較的に大きな単位の部隊を戦線のある局面または兵站地域に釘付けにした陣地戦は、それに応じて定着的な形の売淫を必要とした。そうした娼家に集まってきた娼婦は、以前からそれを職業にしていた者もいるにはいたが、多くは非占領地の慢性的な窮乏に追いやられてその身体を売った女たちであり、こういう女たちの数はどんどん増加していった。仕事はつらく、性病に脅かされて多くは短期間しか続かない娼婦は、慢性的な供給不足の状態にあったからだ。
一方、こうした娼家における監督された売淫のみが、かろうじて性病とそのために引き起こされる戦力の麻痺とにたいして十分な保護を約束するものであったが、戦場や兵站地域において、それは充分に機能し得なかった。平時のモーラルを失った兵士たちを、性病は容赦なく襲い、余りに罰則が厳しいとそれは隠され緩いと性病を回避するモチベーションが下がるため、娼家の売淫へも侵入し、蔓延していく。逆に進んで性病に罹ろうとする兵たちも出てくる始末だ。この病気にかかっているものは、すくなくともその期間中は、戦場で死ぬ危険を免れたからである。
こうした、戦場・兵站での性の実態を、自国を勝利へと導く作戦に組み込もうとする向きさえ出てくる。1870年のフランスの新聞は、ドイツ軍に占領された地域の娼婦たちに向かって、国民的義務まで引き合いに出してあけすけに、ドイツ兵に大量的に性病を感染させよと訴えたのである。
これが、戦争のリアルである。そこには、映画やドラマが中心テーマとしたがる「真の勇気が試された!」「極限状態でも愛があった!」という救いや希望は、無い。
ヒルシュフェルトは、好事家的に戦争における性の狂乱状態を描いたわけではないし、科学者として、没価値的に事実を記録しただけではない。“解放された現衝動の狂乱、従軍者および国に残っていた者の野蛮化、戦場の男たち、銃後の女たちおよび有棘鉄条の背後の捕虜たちの性の悩み、売淫が到る処でとった厭うべき形態、性病の蔓延、健全な性感の大量的毀損、兵站地の性的無政府状態および銃後における大衆殺戮の利用者の酒池肉林の生活、夫婦関係および性倫理の破綻―これらすべては戦争の直接関係の結果であり”、“戦争のある限り。われわれはこの性愛の堕落、「人間」という概念を侮辱するこの、世にも恐るべき恥辱から逃れることはできない”と結論し、戦争そのものを告発しているのだ。「だから、戦争は、するな!」と。
本書冒頭で解説を担当する宮台真司も、次のように総括する。“ヒルシュフェルトの主張は単純です。戦争がしたいなら、道徳的頽廃にツベコベ文句を言うな。道徳的頽廃にツベコベ文句を言うなら、戦争をやめろ。”
その宮台は、昨年(2013年)橋下大阪市長が在沖米軍の風俗活用を求め、兵士の性のコントロールはいつの時代も軍の最重要課題だと述べたことを取り上げ、「目の付け所は良い」が、独英仏に要求できることを宗教原理主義の国で、ピューリタン的性道徳に帰依する人びとが政治的影響力を持つ宗教原理主義国家である米国には要求できない、と評している。

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