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あたし　毒きのこ

「あたし　きのこ　ひとにたべられるために　うまれてきたわけじゃないから」と毒きのこが語りだすプロローグからはじまる本書。
食毒があやしいきのこは食べず、汁が皮膚につくと危険なきのこは触らない。
それが中毒を防ぐ方法なのだが、素人は毒きのこの見分けに苦労する。
詳細な写真を掲載したきのこ図鑑は他からも発行されているが、本書は毒きのこの中毒事例を引用し、毒性や症状を解説した点が光る。

中毒事例は書籍や新聞記事から古今を問わず引用されていて、きのこの入手方法と調理法、食べてから症状に至るまでの様子が記されている。
不幸にも起きてしまった中毒事故から学ぶことは多く、野生のきのこを食べるのは命懸けだという危険性も生々しく感じられる。

毒きのこが怖いのは重々承知の上だが、「毒」という対象は人の好奇心を掻き立てるものでもある。
魅了された人が生み出した文学や歴史、調理方法の地域性にもふれられていて、きのこライターの著者の手にかかれば、「毒」も「楽」に変わるかのよう。
毒きのこがエピローグでなんと語るかは、読んでからのお楽しみ。

ロフト名古屋店理工書担当　中村