紙の本
地味だけれども面白い
2017/07/15 21:33
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投稿者:アジア坊 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私事ながら高校生の頃に読んだ時には全く印象に残らず、ストーリーも犯人も
一切覚えていませんでした。
この新版で解説者の中川右介さんが中学生時代に読んだらとても読みやすかった
と書いておられるのを読んでさすがだなあと思いました。
あれから何十年、大人になって読んでみたら、読みやすいだけでなく地味は地味でも
滋味に満ちた魅力的な物語と登場人物。
じっくり読めば、きっと楽しめる名作です。
紙の本
その男は誰だったのか
2023/09/26 16:15
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヨーロッパでの第二次世界大戦が終了したのは、1945年5月。日本の終戦より少し早い。
名探偵ポアロが主人公のこの長編小説が発表されたのは1948年だから、戦後間もない時期といえる。
原題は「Taken at the Flood」で、「Flood」には「満潮」と意味があるし、邦題は直訳。
それに、この作品の巻頭にあるシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』から引用されている一節にもこうある。
「うまく満潮に乗りさえすれば道はひらけるが、(以下、略)」
この作品は、まさに満潮に乗ろうとした男がその寸前で乗り損ねてしまう話なのだ。
先にヨーロッパの戦争終結が1945年5月と書いたが、この物語は1944年秋にポアロがある資産家が空襲によって命を落としたという話を耳にしたというエピソードから始まる。
その時、生き残ったといわれる後妻に資産がすべて相続されてしまうことになる。
割を食ったのが、この資産家に金銭的な援助を受けていた親族たち。
そこに現れるのが、この後妻のかつての夫が生きていることを知る人物。それが真実ならこの後妻に相続はいかない。
そして、起こる殺人事件。
文庫本にして400ページ超ある長編小説ながら、殺人が起こるのはほぼ半分近くなってから。
つまり、読者はすっかり状況を把握できている状態で、犯人探しを行うことになる。
実はこの作品の犯人は、細部はともかくとして、こういうような設定でなされているのではないかということがなんとなくわからないでもない。
もちろん、そんなに簡単な仕掛けをアガサ・クリスティーがつくるはずもない。
殺された人物は、本当は誰なのか。そのあたりが面白い謎だ。
紙の本
戦争の影
2019/09/17 14:02
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争の影響がすごく大きい作品でした。空襲で亡くなったり、従軍していたり。相変わらず、家族それぞれの性格を描き出す天才クリスティー。最後はそれで良いのか?調子良くないか?と思いつつも面白いです。
紙の本
満潮に乗って
2021/10/30 15:50
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投稿者:ムギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大富豪がなくなり、今まで大富豪に頼って暮らしていた人々は困窮する。あの新妻さえいなければ。彼らそれぞれの描写がリアルで、怪しさ満点。さまざまな思惑が重なり、それぞれの人々の目線で物語は進んでいく。
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大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。戦後、後ろ盾としてのゴードンを失つた弁護士や医師らクロード家の人々は、まとまった金の必要に迫られ窮地に立たされていた。“あの未亡人さえいなければ”一族の思いが憎しみへと変わった時…戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く。
【感想】
http://blog.livedoor.jp/nahomaru/archives/50450786.html
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大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。戦後、後ろ盾としてのゴードンを失つた弁護士や医師らクロード家の人々は、まとまった金の必要に迫られ窮地に立たされていた。“あの未亡人さえいなければ”一族の思いが憎しみへと変わった時…戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く。
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大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。戦後、後ろ盾としてのゴードンを失った弁護士や医師らクロード家の人々は、まとまった金の必要に迫られ窮地に立たされていた。”あの未亡人さえいなければ”一族の思いが憎しみへと変わった時……戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く
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物事にはタイミングがあり、それを見極められるか見極められないかで結果が変わって来る。
この話はタイトル通り、それを象徴している話でした。
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クリステイーにハズレなし!はじめのほうの人間模様は少々辛かったが、後半は時間も忘れて読みふけった。しかし…2年以上前だからよくは覚えていないけれど、ドラマは全然違う話だったような??(2010-12-04L)
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エルキュール・ポアロ・シリーズ
戦争中の爆撃によって死亡した富豪ゴードン・クロード。生き残った若い未亡人ロザリーン・クロードの相続した遺産。ロザリーンをまもる兄デビッド・ハンター。遺産相続の期待を裏切られたクロード一族。ロザリーンの元夫がアフリカで生き残っていると証言した男の死。疑惑をかけられるデッビッド。検死審問で死んだ男をロザリーンの元夫ロバート・アンダーヘイと証言したポーター少佐の自殺。クロード一族の仕掛けた罠。ロザリーンの自殺。ポアロの推理。
2011年2月12日読了
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英語の表題だと分かりやすい。
taken at the flood
floodというと、洪水かと思っていたが、
波が押し寄せる、満ち潮もの状態なのかもしれない。
潮の満ち引きに関するいろいろな言葉が引用されていた。
どれも読んだことがない文献なので、いちど確かめようと思う。
ロザリーンが、性格がよいことになっていたので、読み進みやすかった。
味方したくなる人間と、味方したくない人間とがあるのは仕方がないことなのでしょうか。
結果としては味方していた2人は犯人でなかったのでよかったが、
結果はハッピーエンドとはいえないのだろう。
遺書が結婚で無効になるが、その場合は全額相続ではなく、
信託財産になるという仕組みなど、こまめに読んでいると
イギリスにおける遺産相続の法律に詳しくなりそうです。
動機がなさそうに見ることが、ある制約条件が成り立つと、
動機そのものだったりすることも知りました。
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単調な生活を送る主人公(女)はある日、危険なにおいのする男に出会う。その出会いによって莫大な遺産問題と殺人事件に関わることになってしまい・・・。
プロローグ、第一編、第二編構成となっておりプロローグでは事件の予兆を匂わせ、第一編では事件が起こるまで、第二編ではポアロ登場という感じです。
前にも書いたかもしれませんがクリスティの魅力は事件が起こるまでの登場人物の関係性や言動を詳細に描いてあることだと思います。ですからそこで事件が起こっても自分なりにそれまでの登場人物の会話などを振り返って「この人が怪しいんじゃないか?」と推測できます。小説の中の探偵がいかに優秀かを引き立てるために事件そのもののみをまず提示している本もありますが。
またこの本は女主人公が2人の男の人の間で揺れ動く恋愛模様も魅力です。
クリスティ、おもしろいですよ。お勧めです。
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ポワロ作品
【ストーリー】
資産家が自宅で空爆を受けて亡くなった。運良く生き残った若い未亡人が莫大な財産を相続するが、資産家を頼って暮らしてきた親族は窮地に追い込まれつつあった。
そんな折、未亡人の前夫が生きているという疑惑が持ち上がる。真実であれば資産家との結婚は無効となり、遺産は親族のものとなる。やがて、遺産を巡って殺人事件が発生するが…。
【感想】
誰に感情移入したかによって随分印象が分かれる作品。最初は嫌味な存在だった未亡人が、後半は哀れに感じる。
偶発的とはいえ罪を犯した人間を許すのは納得いかないけど、それがポワロならではの措置なのかも。
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つらつらとマイペースに読める本だった。
最初の方は中々ポアロが出て来なくてつまらなかったけど、あとあと考えると必要だったなぁと思う。
にしてもリンはあんな奴と結婚して大丈夫なんだろうか。。
他人事ながら心配。。。
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推理小説においてワクワク出来る舞台装置は色々有るけれど、その一つとして挙げられるのは本作が扱う「大富豪の遺産を巡る殺人」だろうね
大富豪ゴードン・クロードの後ろ盾を頼りに生活してきた一族が彼の死と戦後の空気に拠って困窮していく様子はどう捉えても殺人事件の土台が整えられているとしか受け止められないもの
その一方で舞台が整えられ過ぎているとも言えるのが本作の面白いところ
ゴードン・クロードの遺産を横から掠め取るようにして手にしてしまった哀れなロザリーン。誰も彼もが彼女の死や不義を願うのは理解できる流れとして、その感情を後押しするように様々な噂が錯綜するのだから奇妙な話になってくる
事件が起きる2年も前にロザリーンの前夫が現れるとポアロの前で予言する少佐、事件直前にもクロード一族の女性が霊のお告げでロザリーンの前夫が死んでいないとポアロに教える
そして実際にロザリーンの前夫、ロバート・アンダーヘイを思わせる男性が現れるのだから本当に奇妙で面白い
舞台は非情に整っている。だからこそ、整っていない部分が引っ掛かりとなって事件をより意味不明なものとしていくわけだ
本作の特徴をもう一つ上げるなら、事件を起こす動機を持つ者が多すぎる点が挙げられるのだろうね
遺産を巡る心理的動揺がクロード一族やロザリーンの兄、デイヴィッドに巻き起こっているから誰が殺人を犯しても可怪しくないように思える
実際に私も読んでいる最中は「あの人が犯人だろうか?」と思った数分後には「いや、あっちの人が犯人なのでは…?」と迷ってしまうほど
誰も彼もが戦後の苦しさから遺産を自分の手元に呼び寄せたいとロザリーンの不幸を願ってしまう。それが誰が犯人になっても可怪しくない空気感を醸成し、ミステリドラマとして読み応えある内容となっていたよ
どのような事件だろうと、名探偵ポアロが関わるなら犯人は明らかになる。本作も例に漏れず混迷を極めた事件推移だろうと犯人は最終的に明示される
個人的には「そう来るか!」と様々な意味で思えるラストでしたよ
最高に面白いというわけではないけど、人間ドラマに絡めたミステリとしてはかなりの一品として仕上がっているね