紙の本
災害ボランティアのひとつの全体像
2011/11/14 01:36
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投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災後に石巻で確立されたボランティアの組織法について書いている. 「石巻モデル」 と,ひとことであらわしているが,状況に応じて変化させつつ現在にいたっている. 石巻専修大学が中心地になっていることはずっとかわらないが,それが可能だったのは震災前から準備がすすめられていたからだという. 「石巻モデル」 の図解をみると,自分が現地でみてきたものの位置づけがわかるとともに,自分がみていたのはほんの一部だったことがわかる. また,阪神大震災の経験がいかされていることがわかる.
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【東日本大震災関連本 その5】
友人よりこの本の存在を教えてもらい読んでみた。ピースボートの美談が綴られている。
石巻の震災後の半年を知るのに役立つ一冊。
石巻市と石巻専修大学が3月末に結ぶ予定だった「防災協定」の存在があったからこそスムーズにすすんだ部分も大きいと感じた。
しかし、他の立役者を知っているだけに若干違和感を感じる。
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【東日本大震災関連・その32】
(2011.10.31読了)(2011.10.27借入)
本の題名が興味を引いたので、図書館から借りて読んでみました。
「奇跡の災害ボランティア」という題名から、ボランティアの仕組みが非常にうまく働いたということを言いたいのでしょう。読んでみると確かに実に有効にボランティア活動が行われたということがわかります。ボランティア活動を調整した何人かの方が実にいい組み合わせとなり、有効に機能したということがわかります。
このようなことが起こることは、実に稀有なことという意味で、奇跡という言葉が使われたのだと思います。そうだとすると、「石巻モデル」という、言葉の意味がわからなくなります。XXモデルという場合、今後の手本になると意味が込められているのではないかと思うのですが、稀有のことがモデルになり得るのか、と思います。
それはそれとして、今後の参考になる部分は、取り入れていけばいいのかとは思います。
阪神・淡路大震災の時の経験をもとにして、ボランティア・センターという仕組みが作られたということですので、今回の東日本大震災の経験を加味して、さらに進化させることができればいいと思います。
この本は、「AERA」などに執筆しているノンフィクションライターが執筆したものですので、うまくいったポイントがよく分かりません。当事者の手で書かれた本が出ることを期待したいと思います。(僕が知らないだけで既に出ているのかもしれません)
章立ては以下の通りです。
第1章、「水の都」が消えた日
第2章、石巻モデル誕生
第3章、大学が拠点になった
第4章、顔の見えるCSR元年
第5章、行政とボランティアの連携
第6章、災害ボランティアは企画力
第7章、石巻モデルの教訓
●ボランティアの数(4頁)
石巻だけで震災発生から6ヶ月間でのべ10万人を超えるボランティアが組織された。被災県全体で同じ期間に活動したボランティアの総数がのべ68万8千8百人(内閣府発表)であることからしても、石巻が突出していることがわかる。
(石巻と全体の対比で、石巻のすごさを言いたいのでしょうが、これでは伝わりません。2番目の数を挙げるとかしてもらえると、わかるだろうと思います。)
●取材の焦点(8頁)
私はこの本のために、石巻市はどうやってボランティアを受け入れたのか、そして、具体的にどんな成果を上げたのか、その2点に絞って取材を試みた。
いったい誰がどのようにしてボランティアを集約し機能させたのか。その仕組みは一体どうなっているのか。(7頁)
●水の都(18頁)
仙台は「杜の都」、石巻は「水の都」と呼ばれる。
●市役所(25頁)
亀山市長は防災無線を使って、市役所にいる副市長に連絡を試みた。
「そっちの状況を教えてくれ」
「はい、水道、電気、ガスは停止。固定電話、インターネット、携帯電話も不通です」
●1週間(29頁)
被災地への食料・飲料の援助が本格化したのは地震発生から1週間後のことだった。陸の孤島となった僻地や離島ではさらに事態は深刻化した。
●ボランティア受け入れ成功の要因・石巻(38頁)
・ボランティア���受け入れる仕組み
・ボランティアにとって居心地の良い環境作り
・ボランティアを継続的に募集するノウハウ
(社団法人ピースボート災害ボランティアセンター代表理事・山本隆)
●ボラセン(44頁)
現在の災害ボランティアに関するシステムは、明確な受け入れ先が無かった阪神大震災を教訓に整えられた。災害発生時には、被災自治体の「社会福祉協議会」が、「災害ボランティアセンター」を立ち上げ、そこに組み込まれる形で、団体や個人ボランティアが活動するのが一般的だ。
●「社協モデル」と「NGOモデル」(47頁)
・社協モデル(受動型のニーズ集め)
活動の根拠は被災者や行政からの個別の要望。この場合、電話や直接来訪によってそのニーズが明らかになる。
・NGOモデル(能動型のニーズ集め)
被災者のニーズを「直接」、「独自」に調査して集める。つまり、「ニーズは生み出す」が基本。
●炊き出し支援窓口(59頁)
「事前に電話をもらえれば、その規模に応じて石巻市内の炊き出しポイントを紹介する仕組みを作りました。ただし、水は必ず自分で手配すること。食べ残しや余った食材、割り箸や紙皿などのゴミもすべて各団体で持ち帰り、処分することなどを徹底しました」
●分科会(64頁)
石巻災害復興支援協議会
①炊き出し(食糧支援)
②メディカル(医療支援)
③移送(被災者の移動支援)
④心のケア
⑤キッズ(子ども支援)
⑥リラクゼーション
⑦復興マインド
⑧マッドバスターズ(瓦礫撤去・清掃活動)
⑨生活支援
●三者会議(行政・自衛隊・ボランティア)(136頁)
避難者への食糧支援
・行政による食糧支援
・自衛隊による指定避難所などへの炊き出し
・ボランティアによる指定避難所外への炊き出し
●被災者のニーズ(195頁)
本当の意味での被災者の「ニーズ」というのは、「当座の生活費が無い」「高齢者の親を抱えているが入院費用のあてが無い」「生活再建したいが就職先が無い」など、一ボランティアが解決できるようなものではない。
☆関連図書(既読)
「石巻赤十字病院の100日間」由井りょう子著、小学館、2011.10.05
(2011年11月1日・記)
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先日石巻の市街地を歩いた。2011年12月上旬。まだ津波被害の爪あとは感じられたが、ようやく復旧、復興に向け進みだした段階というところ。石巻市外は相当に甚大な被害を受けたところなのだと本書を読んで理解したという程に、街は片付いていて穏やかで、復興に向けてようやくスタートをきったという雰囲気が感じられた。これも行政とボランティアと自衛隊と地域とがうまく連携した「石巻モデル」の賜物なのだろう。また足を運びたい。
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東日本大震災での石巻での災害ボランティア活動に関わった人たちは、何を考え、どう動いたのかを丹念に追ったドキュメント。石巻がモデルだけど、醸し出す現場の臨場感はどの場所で災害ボランティアに関わった人も共感出来るし、今後の活動を考える際にも大変参考になる一冊。結構泣ける。
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今回の大震災は規模が大きかったし、今なお大変。この本の話は成功事例だけど、おそらく多くの地域で、話題にすら上らない、「うまくいかず悶々」な状態が続いていることと思う。でも、「成功事例」というのはすごく勉強になるし重要。東日本大震災に限らず、今後も必ず起きる災害対応で、何が必要なのか、具体的に見せてくれている。明日、自分が対処することになったとしたらどう動くか、という点で非常に参考になる一冊。
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昨年(2011)の東日本大震災で被害を受けた都市の復興に向けて、多くのボランティアが活躍しています。
政府や自治体だけでなく、ボランティアが活躍するのは阪神大震災でもあったようですが、この本の趣旨は、ボランティアが復興に寄与するために、どのような工夫を凝らしたのかが書かれています。
私は会社や近くの商店街での募金箱に少額のお金を寄付することしかできず、自分が現地に行って協力することはできませんでしたが、最近の若い人の中には仕事を辞めてまでボランティアを希望する人もいるそうです。
この本はそのような彼等の気持ちを大切にし、さらには復興を願う住民にも感謝されるような取り組みについて書かれていて、日本の底力を見た気がしました。
以下は気になったポイントです。
・この本を書くために、石巻市はどうやってボランティアを受け入れたのか、どんな成果を上げたのかの2点に絞って取材を試みた(p8)
・当初(伊達政宗が開削したころ)、石巻湾へと通じる河川は「新北上川」と呼ばれていたが、昭和の工事を終えて「旧北上川」という名称となった(p17)
・石巻は河川交通と海運の結節点であり、東北と江戸を結ぶ文明の交差点、1年間に運ばれた米は20万石(3万トン)と言われる(p17)
・首都圏での水や食料の買い占めのために、被災地への援助が本格化したのが地震発生から1週間後であった(p29)
・石巻市のボランティア受け入れ成功の要因は、1)受け入れる仕組み、2)居心地の良い環境つくり、3)継続的に募集するノウハウ、である(p38)
・災害ボランティアの現場では、その地域が特定の宗教、政治思想のある団体が仕切っているとわかった途端に物資が届かなかったりすることがある(p69)
・被災地への負担を減らすという意味で徹底したのが、飲酒禁止以外に、被災者用の食糧を食べない、不要なものといって援助物資を拝借しない、大学のトイレを使用しない、であった(p97)
・三菱商事が1年間送り続けたケースでは、リーダーは話し合いで決めて、会社の上下関係は持ち込まないこと(p117)
・被害状況をグーグルアース等を使って、被災地の様子を可視化できる環境(iPad)が役に立った(p119)
・阪神大震災時と比較して、携帯電話の登場、さらには、SNSやツイッター等のインターネット経由の通信インフラが最後まで生き残って、被災者間の安否確認、初動の人命救助に役立った(p120)
・地震発生当日に、防衛大臣による大規模震災災害派遣命令が発動されて、最大10.7万人の自衛隊員、543機の航空機、戦艦59隻も出動した(p135)
・ボランティアは命令では動かないことを理解し、全てできるかどうか確認し、仕事の詳細を説明しているのが印象的であった(p162)
・ボランティアにとって居心地の良い環境を作った最大の決め手は、宿泊場所とトイレの確保であった(p188)
2012年2月25日作成
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石巻災害復興支援協議会で買うと720円+税の本が1000円になる代わりにその分がそのまま寄付になるとのことで買った。ついでにステッカーも買った。
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図書館で借りた。
東日本大震災により被害を受けた石巻市でボランティアをどのように受け入れ、市や自衛隊がボランティアとどうやって協力していたのか、について地震の発生後から説明されている。
本書の中で、ボランティアの責任、という言葉が多く使われていた。参加して、活動して、終わり、では市からは無責任に見える。かと言って一度参加したら完全に復旧するまで参加し続けろ、と求められる集団ではない。その責任を問えないからボランティアは市などと協力することが難しい存在なんだと思った。
そのボランティアを長期的に継続して行い続ける企画を立てる人がいて、市にもそれを活用しようという人がいて、始めて成立した仕組みであるようだった。
石巻市の災害対策本部にボランティアの席があることを知り、驚いた。自衛隊は炊き出しを数百食という単位で行っており、あと10食追加というような細かい注文には応じられないから、ボランティアがそのような部分を埋めてくれたのはありがたい、という部分でお互いのできないところが補い合えているのだと実感できた。
ボランティアの生活のルールを話し合って決めたのではなく、大学でテント村のような暮らしになったことで、大学でやってはいけないことがそのままルールとして理解されていたから生活上のもめ事が少なく済んだ、というのに納得した。
新しいルールを覚えるより、ここは大学だから、と言えば押しつけではないし、理解も得られやすい。大学が災害時に貢献できることの一つなんじゃないかと思う。
この仕組みは、ボランティアも市も互いのあり方を大きく変えることなく、それぞれを結びつけていたからすごいものなのだと思った。インターフェースの役割を果たした人は本当にしっかりした人なのだと思う。
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先日の一般質問傍聴の際に読了。これが奇跡ではなく、普通にできる仕組みづくりが必要です。石巻専修大の拠点化が書かれていましたが、ちょうど私立高校を避難所にできないかという相談を傍聴者からされたので、先例として紹介できたので助かりました。
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震災時の出来事が、分かりやすくいっきに読めました。つながること、続けていくこと、それらを繋ぎ合わせることがカタチとなって現れた「石巻モデル」。
今、町の主役は「ボランティア」から「被災者自身」へと戻った。これからが「地元」の出番。ボランティアはこれからの町のサポーターである、という考え方はいいな~と思いました。
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石巻モデル。
ボランティアが自治体と協力をして、被災地でその善意と熱意をしっかり機能させた例である。
トータルで見て、色々な良い点が集まったことで、きちんとした機能を保てるモデルが確立できたと思う。
その一つでも欠けていたら、モデルは機能しなかったと思う。
その中で、大きいな。と思ったものの一つに、私立大学の開放がある。
もともと、大学の開放は計画がされていた。だからこそ、当時に即実行にうつせたのだと思う。
今後、南海トラフ地震や、関東直下地震など、多くの地震予想がされている。
それが起こった時に、なんの準備なしで今回のモデルのような体制を確立することは難しい。
まだ起こっていない今の段階での準備が必須であると思う。
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石巻市のお友達ができたので、石巻市関連の本を読んでいます。
震災当時の混乱期にボランティアを統括して活動した方々や行政関連の方たちとの協働・連携がすばらしいです。
災害時と平常時のボランティア活動はまったく質の違うもので、しかも災害時は大人数のボランティアが必要とされますので、災害ボランティアのマネジメントと地元行政などとの協働の方法を、平常時のボランティアとは切り離したものとして、きちんと確立しておくことはとても大切なことだと思いました。
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あーピースボートってそういう…。
自分自身、いつ大きな災害に見舞われるか分からない中、受援の心構えを含めボランティアの功罪の一面を教えてもらった気がします。
ボランティア、興味あったけど色々大変だ。しかも一匹狼気質には絶対無理なのね。相手先に迷惑かけちゃうし。
「AREA」(朝日)目線なので、他の方の書籍で多角的に見ていきたいジャンルでもありました。
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このモデルが標準になってほしいと願う。「奇跡の」と冠したのは意図したことか? ピースボートというボランティアをまとめるスキルを持った民間団体が関わってくれたから、このようなモデルが誕生したということなのだろうか。地元の篤志家と地元に縁のないボランティアとの出会いも、行政がNPOを尊重する姿勢も奇跡と言えるかも。しかし、ピースボートが行政に信頼されるのは必然なのだと感じた。自治体・社協は災害発生時にボランティアを受け入れるスキルを持たねばならない。「自治体・社協の限界を災害救助の限界としてはならない」同感!