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不器用な赤 みんなのレビュー

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みんなのレビュー7件

みんなの評価3.5

評価内訳

7 件中 1 件~ 7 件を表示

紙の本

好きです。若い人をヒキタがこういう描き方をするとは思ってもいませんでした。でも、妙な自主規制がリアリティを失わせています。勿体無い・・・

2008/07/01 19:53

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

まずカバーが秀逸です。背のデザインはフツーですが、表がいいです。ま表から裏まで一体化したデザインなので部分を採りあげることに意味があるかどうかは意見が分かれるでしょうが、このポップ感はなかなかあるものではありません。色がモノトーンというか白地に黒とシルバーの線が主ですから派手さは感じませんが、このまま色をつけたら1960~70年代のアートそのもの。

そんなカバー担当は

ART DIRECTION & DRAWING
KEIJI ITO( Unidentified Flying Graphics )
DESIGN
TAKAMITSU HATTA( Unidentified Flying Graphics )

でも、このデザインは角背という造本あってのもの。装幀は 伊藤桂司。内容は一種の戦闘少女ものです。出版社のWebの宣伝文句がいいので、そのままコピペそておきます。
       *
日本でもっとも危険な女子高生の物語 利沙は高校2年生。

父親は広告代理店を経営しており、離婚した利沙の母親に多額の慰謝料と養育費を振り込んでくる。母親は通っているジムのインストラクターに夢中だ。
窒息しそうな毎日、利沙はチェ・ゲバラの著書に出会った。

自分の閉塞感を感じさせているものは何か、敵をはっきりと見つけたい、
周りを取り囲み息苦しくさせている敵の姿を露わにしたい。

ピスト・レーサーに乗り、破壊活動を繰り返す彼女が行き着く先は――。

ベストセラーとなった『凶気の桜』から七年――
鬼才が新たな人間を描き出した!
       *
情報量は多くないのですが、読む気にさせる、そういう紹介です。二人の少女について、もう少し書いておきましょう。

順序を変えて、まず伊原知恵から始めます。都立麻布西高校二年生で、17歳。本名は伊 知恵(イ・ジヘ)といい、在日です。父の大紀は在日のパワーでともかく金儲けに邁進し、一応成功者の部類に入ります。兄の英一も父親のあとを猛進中。ただし、知恵は在日と周囲に言えないことで苦しんでいます。そんな娘の悩みを家族は全く理解していません。ま、理解はしても気にしていない、というほうが正しい。で、それを除けば知恵は化学大好きの、運動が得意ではないフツーの女子高生です。

そして中澤利沙です。彼女も同じ高校2年生で、商業主義を憎み、チェ・ゲバラに心酔しています。信条はヒットエンドラン。具体的に言えば、カツアゲや商業主義的な施設に破壊活動終了後、速やかに現場からピスト・レーサーに乗り、退散することをいいます。利沙の行動の背景には、離婚した夫から潤沢な手当てをもらい、男遊びにくれる43歳の母・里佳子の存在もありますが、広告代理店に勤務するという父・良隆の職業もありそうです。ちなみに現在の母親のお相手は、里佳子が通うスポーツジムのインストラクターで女たちに貢がせるのが趣味という直樹。

で、このお話、二人の武闘派少女(一人は補助ですが)とバカ母・里佳子、チャラチャラ直樹の存在が大きいのですが、もう一人、燻し銀のような存在がいます。それが伊勢爺こと伊勢新造、昭和16年生まれの元左翼で、現在は、伊勢屋質店の60代の親爺をやっています。利沙がアベックなどから暴力的に巻き上げたブランド品を、盗品と承知で買上げ、彼女を陰日なたから支えている硬派の老人ですが、返還前の沖縄で障害致死事件を起こした過去があります。

利沙の社会に対する怒りが大きくなり、行動がエスカレートしていく。それにまき込まれる形で知恵は自分の生きがいを見つけていきます。社会を敵に回した二人。家族は彼女たちの苛立ちや苦悩に気付こうともしません。彼女たちを優しく見守るのは伊勢爺ただ一人。彼女たちが最後のターゲットにしたのは・・・

かなり楽しく読むことができます。少女を性的にいたぶる警察官の姿など、読んでいるだけではらわたが煮え繰り返ります。そういえば最近他でもこういう文章にぶつかりました。そう島田荘司のClassical Fantasy Within の第三話『火を噴く龍』です。あそこでも、美人の人妻を裸に剥いて弄ぶのは、警察官であり天皇の威を借りた元軍人でした。政治家、官憲、軍人といったクズどもが女性をどうみているか、腹立たしいといった生易しい言葉では言い表せない怒りを感じます。

そういう登場人物たちのストレートな怒りに対し、作者ヒキタの良識が滑稽に思えるのは、後半の爆弾製造の場面です。よいこたちが迂闊にマネをしないように、という気持ちが「備長炭の粉一××グラムと、硫黄の粉一××グラム。硝酸カリウムを×七×グラム」といった伏字の自主規制表現になったのでしょうが、自作に対する気に食わないweb書評を読んで「友人の手を借りて相手のHPをぶち壊してやる」、とエッセイ集で公言してはばからないヒキタらしくもありません。

苛める相手をまちがってるんじゃない?といいたくなります。でも、それはそれ、このお話は悲劇を交えながら、それでも痛快に驀進していきます。もし、伏字がなかったらもっとリアルなお話になったんじゃないか、それが残念でなりませんが、「鳶」シリーズがホームドラマ化して少しも面白くなくなった今、単発のこういった作品にこそ本当のヒキタがいる、そういっていいと思います。思わぬ拾い物でした。ちなみに目次ですが

第一章 親友
第二章 赤く塗りつぶせ
第三章 My name is 伊 知恵
第四章 発泡スチロール・ディナー
第五章 立体交差
第六章 完黙
第七章 ビニールチューブ
第八章 バカ女
第九章 横恋慕
第十章 赤く焼きつくせ
第十一章 不器用な赤

となっています。

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2008/01/25 23:46

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2008/05/06 16:18

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2009/04/15 08:06

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2009/09/17 03:15

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2010/10/06 15:14

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2007/10/17 22:26

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