電子書籍
イタリア旅行の前に必読
2020/01/11 10:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あろは - この投稿者のレビュー一覧を見る
ローマ、フィレンツェ、ミラノ旅行の前に読んだ。イタリア旅行において、ルネッサンスアートについて知っているのと知っていないのとでは実際に現地に行った時の楽しさが全然違う。大学の美術研究家などが書いた本は読みにくいが、ヤマザキマリさんの本は記述が正確でありながら、読みやすく、イタリアへ向かう飛行機の中でもすらすら読めた。もしこれを読んでいなかったら、素通りしていたかもしれない作品もあると思う。ミケランジェロやラファエロなど名前を知ってはいても、誰がどんな人でなにを描いたか、顔と名前が一致してなかったのだが、読了後はその人生について少しだけ理解が深まった。ヤマザキマリさんのエッセーは何冊も読んでいるが、その中でもこの本は屈指の出来。もっと多くの人に読んで欲しいです。
紙の本
フィレンツェにはこの本を読んでから行くべき!
2019/04/22 20:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雲絶間姫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読んでからボッティチェリ展に行きました。本人が「偏愛」とされているように記述はかなり自分好みに偏ってはいますが、ボッティチェリの師弟関係なども解説されているので、展覧会に行く前に読んだ方が楽しめます。
後日、フィレンツェに行く前に、改めて読み直してから渡航し、ウフィツィ美術館に行きました。おかげでフィリッポ・リッピの描く女性が妙にきれいで生々しい理由なとも分かった上で見られたので、ちょうど良い参考書でした。
紙の本
ルネサンス美術鑑賞の指南書
2016/02/06 10:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
『誰もがやりたいことをやった結果、自由でのびのびした気風が培われていった時代が、のちに「ルネサンス」と呼ばれるようになったのです(103ページ)。』
本書は、そんなやりたいことをやった芸術家たちの中から、ヤマザキ氏の独断(「変人」という視点)で主として16名の人物を取り上げ、その作品の鑑賞ポイント等を指南した本です。一人につき10~20頁程度の小気味の良い平易な解説ですので、スラスラ読め、通勤のお供としても最適でした。
第1章は3大巨匠以前、第2章は3大巨匠、第3章はフィレンチェとローマ以外の都市や北方諸地域で活躍した画家、第4章は絵画以外(学問・文芸・建築)、第5章は総括という構成です。
具体的には、例えば、フィリッポ・リッピは「恋する坊さん」、ボッティチェリは「影響されやすい人柄」、ラファエロは「フレキシブル」、ミケランジェロは「真面目」、ダビンチは「人間嫌い」と各人に変人レッテルを張った上で、その作品を論評しています。この「変人レッテル」は、特に初心者には有効な取っ掛かりになると思いました。
内容も難しい美術論ではなく、私のような美術鑑賞のツボを知らない門外漢にとっては格好の入門書でした。また、3大巨匠以外でも興味を惹かれる芸術家がたくさんいて、特に第3章のフィレンチェとローマ以外の都市や北方諸地域で活躍した画家たちは要チェックです。
ただ第5章で、宗教観や鎖国等について奇妙かつ的外れな日本批判を展開しているのですが、結果としてヤマザキ氏の稚拙な歴史知識の披歴となっていて、お粗末かつ興醒めでした。
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映画「テルマエ・ロマエ」は飛行機の中で観た事があり、なかなか面白かった。ただ、漫画を読むというところまではいかなかった。
ヤマザキマリさんについても、「テルマエ・ロマエ」の作者であるという知識しかなかったが、曲がりなりにも「ルネサンス美術論」とあるので、購入してみる。
ヤマザキマリさんは、なんと14歳で留学しているのですね。少し読むだけで、「テルマエ・ロマエ」のヒットが必然であったことに気付く。彼女のもつ深い知識・洞察・経験・デッサン力・感受性等々がそれを可能にしたという事を。
たまたま時を同じく購入した「ヘンタイ美術館」では「ヘンタイ」と表現されているルネサンスの重鎮が、この本では「変人」として。それは「既成概念にとらわれず、型にはまることもなく、自在に自らの感性と技巧を操る、果てしなく自由な思想を持った人々」として。
早速「テルマエ・ロマエ」全6巻注文しました。
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好きでたまらないのが伝わる美術論です。
抑鬱された空気が漂う昨今なので、「変人列伝」は読んでて楽しくなりました。
新書なので図版に限りがあるのはしかたないんで、取り上げられた作品はネットで探して見ながらどうぞ。そのくらいの手間かけてでも読んで面白かったです。
第5章は少し毛色が違うのですが、「今」ぜひ読んで欲しい1章だな、とおもいます。
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偏愛というだけあって、日本では知られていない人物についても作者の好きが伝わる。
読みやすいのでルネサンス入門書としてもいける。
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わたしは10代のころからずっと、ルネサンス時期の絵が好きだった。今年はイタリアとの国交樹立150周年ということで豪華な展示会が開かれており、今月はボッティチェリ展とレオナルドダヴィンチ展に行った。
わたしは特に聖母の絵が好きなのだが、第5章の中でヤマザキさんが書いておられることに、目から鱗が落ちるようであった。
ルネサンス以前のキリスト教信仰の象徴であるイコン画は、宗教というものを深く考えるな、マリアとはキリストとはこういうものだ、とにかく崇拝すればいいのだ、という考え方のものであり、フィリッポリッピが聖母像をブロマイド化して描くことにより、硬直した宗教感に対して疑問を投げかけた・・
それがまさしく”ルネサンス”ということ。
別にいいや、考えないほうが楽だと思っていたことと向き合い、自分で教養や知識を活性化して硬い殻を脱ぎ捨てる。そして新しい芽生え、再生がまさしくルネサンスだと。
ルネサンスを生んだ、懐疑的な精神・・本質的な思考。
美術史や歴史を深く学びイタリアの精神に触れるヤマザキさんは、教養や知性が欠如した状態のままで放置されると人はいかに堕落し劣化してしまうかとうことに触れている。
愛しき変人たちの話も面白かった。
できればもう一度、イタリアに行きたい。北から南まで行ってみたいな。
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私が大学の先生で、教え子がこんなレポート書いてきたら、震える。愛に満ちているからこそ、最終章が胸に響く。ヤマザキ先生、なんて魅力的な人でしょう。素敵な「変人」です。
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ヤマザキさんのルネサンス論を読んでいると、“文芸復興”という邦訳ではちょっと本質をつかみ損ねそうですね。また、イコンが面白くない理由もわかりました。記号ですか。ボッティチェリ展で見たリッピはエピソードを知って身近な人に感じます。遠近法と格闘する画家たちの物語は、これだけで本になりますね。なかなか示唆に富んだ一冊でした。
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読みやすいし思い入れも伝わるのだが、ヤマザキマリであればこそ、芸術家1人に1ページくらいの偏愛・薀蓄漫画でも欲しいところ。
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借りたもの。
ヤマザキマリ女史が愛するルネサンス画家たちは、知性と好奇心き満ち、(当時の)一般的価値観から逸脱している「変人』をキーワードに選ばれている。
それは『男性論』の延長
古代ローマとルネサンスに共通する思想、自由と寛容さによって培われたこと、
懐古趣味に留まらない。
ルネサンスを通して、世界の中で現代社会の問題点、日本に対しても指摘する。
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ヤマザキマリさんが実際にイタリアで美術を学び、触れた体験からの考察です。芸術家列伝のヴァザーリが自身も画家であったことを知りました。
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ルネサンス美術に興味を持ち、ヤマザキさんの美術論とのことで読んでみた。
当時の芸術家を「変人」と呼ぶ、ヤマザキさんならではの視点がとても楽しく、ますますルネサンス美術や当時の芸術家たちに愛着がわいた。
フィリッポ・リッピの聖母子の絵が好きなのだけど、あの絵はブロマイド的という表現は「まさに!」という感じ。
巻頭のカラーページの「アテナイの学堂」の写真は左右が逆では?
本文では「右側にラファエロの自画像が描かれている」とあったので、ヤマザキさんのミスではないと思うのだけど、ちょっと残念。
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「創造的な活動は(中略)生命を維持するうえで不可欠な営みです。自由な精神がいつでも駆動できるようにしておかないと、すぐに動物的・原始的な状態に逆戻りしてしまいます」
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ルネサンスの変人エピソードはどれも面白かったけど、この本の真髄は最終章。いかに人間にとって文化や創造活動が人間たらしめるものか、不可欠なものだがしかし自由な精神や寛容さ、知性をアクティブにしておかないとすぐに動物的、稚拙に戻ってしまうと説き、さらに今の日本にこそルネサンスの精神が必要だと主張する。まさに平田オリザの本で感じた、文化や教養の重要さと、懐疑的な思考力を育む必要性を再認識した。