電子書籍
春、バーニーズで
著者 吉田修一 (著)
妻と幼い息子を連れた筒井は、むかし一緒に暮らしていた男と、新宿バーニーズのスーツ売り場でばったり再会する。懐かしいその人は、花柄の派手なシャツを着て、指には大きなエメラル...
春、バーニーズで
春、バーニーズで (文春文庫)
商品説明
妻と幼い息子を連れた筒井は、むかし一緒に暮らしていた男と、新宿バーニーズのスーツ売り場でばったり再会する。懐かしいその人は、花柄の派手なシャツを着て、指には大きなエメラルドの指輪、相変わらずの女言葉で、まだ学生らしき若い男の服を選んでいた。当惑した若い男の姿は、まるで10年前の自分だ。日常のふとしたときに流れ出す、選ばなかったもうひとつの時間。デビュー作「最後の息子」のその後が語られる表題作にはじまる、磨きぬかれた連作短篇集。
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紙の本
モノクロ写真との相性が素晴らしい
2022/02/06 16:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
妻と息子を連れているときに偶然バーニーズで、昔一緒に暮らしていた年上の男と再会する―そんな場面から始まる連作短編集。言葉数は少ないけど、経過した時間と価値観の変化を想像させる奥行きがある作品。ページの合間にふいに差し挟まれるモノクロ写真がまた良い。
たっぷりとした行間の取り方と、見開きいっぱいのモノクロ写真(のために紙質も変えてる)。2007年の文庫本とは思えないくらい凝った造本で、一周回ってかなり現代的。表紙もシックなデザインで結構好み。一瞬で読めるけど、「ああ、人生…」って感じの余韻を残す。そして明日にはその余韻もすっと忘れる。
紙の本
読んでいるうちにリアルさが増す。吉田修一の小説の力。
2008/07/05 17:54
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:悠々楽園 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もともと「春、バーニーズで」という、アーバンでおしゃれな雰囲気のタイトルに魅かれ、パラパラとめくってみたら最後の短編のタイトルが「楽園」だったので(「楽園」という言葉に弱いもので)、買ってみることにしたにすぎなかった。
だいたいタイトルから連想される通りのイメージというようなことは、この手の作家ではありえない、ということにもう気づいているはずなのだが、時々忘れて、まんまと作者の術中にはまるということが今でも時々ある。魔が差す、とはそういうことだろう。
冒頭の「春、バーニーズで」を読み始め、学生時代おかまバーのママの愛人をやっていて、今は子連れの女と結婚して小田急線で都内に通勤する30代の会社員、という設定が、ありえないような、妙にリアルなような、つまりはどちらかと言えば嘘っぽい気がして、落胆し、読むのをやめようと2度ほど思ったが、「もう少し読んでみようか」と思わせる力が、吉田修一にはある。読んでいるうちに、むしろリアルさが増す、そういう作家というのが吉田修一へのわたしの評価である。
続く「パパが電車をおりるころ」「夫婦の悪戯」「パーキングエリア」は登場人物が共通する連作になっている。
この本では小説における「風俗性」ということについて考えさせられた。「ドモホルンリンクル」「仮面ライダーアギト」「パジェロミニ」こうした小道具を登場させるのは、極めて狭い範囲の同時代の読者には共時的な感覚を強める効果があるけれど、時間というのはあっという間に過ぎて、出版4年後の今読むとすでにとても古臭い気がしてしまう。はたして吉田修一にとってそれは目論んだ通りの効果を発揮したといってよいのかどうか聞いてみたい気になった。「その時書きたいことを書いた」というだけのことかもしれないけど。
もうひとつ吉田修一の良い点を挙げるなら、読みやすいということに尽きる。これは作家にとってとても重要で難しい美質である。ふっと息を抜くと、たちまち陳腐さの海に向かって転がり落ちかねない。吉田修一は今のところ崖の上に踏みとどまっている。
装丁も作品同様に微妙にオシャレで、それも思わず手にとってしまった一因かもしれない。食虫花のように寄ってくるのを待っている。
紙の本
これだけでも楽しめる
2016/05/11 19:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉田氏のデビュー作である「最後の息子」
の主人公の後日譚ですが、
この作品だけ読んでも楽しめると思います。
5つの短編で構成されていますが、
最初の1編以外はどこか自分の過去にもあったなぁと
誰もが思えるような出来事が描かれているのではないでしょうか。
私自身は4編目のパーキングエリアの設定が
最も共感・共鳴できる話でした。
読むのが早い人ならコーヒー1杯を飲み終える間に
読み終えてしまうだろう作品ですが
コーヒーと共に良い残り香が味わえると思います。