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谷中、花と墓地
著者 E.G.サイデンステッカー (著) , 山口徹三 (編)
「どの国においても、墓地は美しい。東京の墓地も例に漏れない。しかし、私の見た限りでは、ほかの国では見られない特色がいくつかある。第一は、花の季節になると町中でもっとも賑や...
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谷中、花と墓地
商品説明
「どの国においても、墓地は美しい。東京の墓地も例に漏れない。しかし、私の見た限りでは、ほかの国では見られない特色がいくつかある。第一は、花の季節になると町中でもっとも賑やかな場所となることである。まるで盛り場。死者と生者が交流して花を楽しんでいるといった感じである。日本人ではないから、これは神道の影響であるといった差し出がましいことは言えないのであるが、なにかそういう関連があるような気がする。アメリカの開拓時代にも、亡くなった者を裏庭に埋葬する習慣があった。幾分似ているような気がする。とにかく桜の花の満開の時は、賑やかな谷中墓地は独り歩きに理想的な場所であった。…………町を散歩するとき、昔から金のたっぷりある界隈よりあまり裕福でない所の方が好きである。谷中の墓地の中でもっとも惨めな墓は、高橋お伝のものであろう。墓地の端っこの公衆便所のそばで今にも滑ってなくなりそうな感じである。私はここが大好きで、側に立ってお伝の顔を想像して、ご苦労さまと言いたくなる」東京は湯島に住みなして、三社祭の見世物化を憂い、四季の桜・藤・朝顔を愛でながら、浮世を眺め暮らす。古今の日本文化を味得したアメリカ生まれの文人による極上の随筆34篇。
著者紹介
E.G.サイデンステッカー (著)
- 略歴
- 1921~2007年。アメリカ生まれ。東京大学にて日本文学を研究する。コロンビア大学等で日本文学を講ずる他、谷崎潤一郎、川端康成らの現代文学を英訳した。著書に「現代日本作家論」等。
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紙の本
よく知る街が、なぜか懐かしい
2020/09/28 16:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のE.G.サイデンステッカー氏は、第二次世界大戦中に米国海軍日本語学校で日本語を学び、戦後、GHQの一員として来日したひと。
それが、いつしか、永井荷風、川端康成、谷崎潤一郎をはじめとした日本文学を英語圏に紹介する翻訳者・研究者となり、源氏物語の英訳までものした。
晩年は、ホノルル→日本を半年ごとに行き来していたのだとあり、晩春から夏まではいつも、東京の湯島で暮らしていたのだそうだ。
本書は、90年代初頭から2006年あたりまで、日本滞在時に書かれた美しいエッセイ集。時に、まっすぐな物言いで苦言を呈し、(きっと)頑固爺さんの人柄と、そこについついにじんだといった風のユーモア。その対比にくすくす笑いながらページを繰って、描かれた街はよく知る場所なので、どこかでお会いしてたりしてなぁと思う。
周囲の人々から敬意と親しみをこめてサイデンさんとよばれていた氏は、2007年夏、転倒したのちこん睡状態に陥って逝ってしまった。
サイデンさんの著作は多数。遅ればせながらこの方のことをもっと知りたいと思った。
紙の本
アメリカ人による日本語の名文を堪能
2017/02/28 12:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:燕石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「源氏物語」、川端康成や谷崎潤一郎の名翻訳を残した日本文学研究家のサイデンステッカー氏のエッセー集。彼が一番好きだったのは永井荷風だったと言われる。なるほど、エッセーのいくつかは、荷風の「偏屈さ」を彷彿とさせる。
もちろん、日本を愛し、最晩年は日本に定住を決意するほどの日本好きだが、決して日本礼賛者ではない。時には、日本人に対して手厳しい批判も加えている。おそらく、古い東京、古い日本の習慣を愛してやまなかったので、現代の日本と日本人に許せない点を見出したのだろう。荷風が好きだった理由も、荷風が近代文明を痛烈に批判したためだろう。
それにしても、いくら日本文学研究家と言っても、これほどの日本語の名文を認めることの出来る日本語能力に驚嘆!