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真夏のオリオン(小学館文庫)
【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。64年の時を越えてアメリカから届け...
真夏のオリオン(小学館文庫)
真夏のオリオン(小学館文庫)
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真夏のオリオン (小学館文庫)
商品説明
【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。
64年の時を越えてアメリカから届けられた1枚の楽譜「真夏のオリオン」。過酷な時代の秘められたドラマがいま甦る。第二次世界大戦末期。米軍の本土上陸を防ぐため出撃した潜水艦イ‐77号の若き艦長・倉本孝行。それを追いつめる駆逐艦パーシバルのスチュワート艦長。甚大な損傷を受けたイ‐77号に残された酸素はあと1時間。「俺たちは死ぬために戦ってるんじゃない。生きるために戦ってるんだ」。倉本と乗組員の知力の限りを尽くした作戦が開始された。『終戦のローレライ』『亡国のイージス』の福井晴敏が4年ぶりにおくるエンターテインメント映画を完全ノベライズ。
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紙の本
色んなテーマが見事に結実した傑作!
2009/06/30 08:17
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初のほんの数ページ、プロローグを読んだだけで胸振るえ確信する。ああこれは名作に違いない、と。
純朴な青年達の青春譚は、いつ読んでも目が細まり胸熱くなる。いいものだ。しかし64年前、夢も希望も酸いも甘いもこれからの二十歳かそこらの少年達は、圧倒的かつ絶望的な負の力に凌駕されてしまっていた。― 戦争。この手の作品は何度読んでも、最初に思うことは一緒。戦争起こす奴らは大馬鹿野郎だって。どうしてたかだか二十歳やそこらの青年達が、死んでいかなきゃいかなかったんだって。 こんなに純朴で気持ちの良い青年達が、何故。どんだけ素晴らしい生きる財産を、世界は失ったんだって。そう痛感させられる。
物語の舞台は第二次世界大戦末期。既に敗戦色濃くなっていた日本だったが、三十歳の艦長倉本は95人の部下を従え、他四艦の潜水艦と共に、回天四機を携えて潜水艦イ-77潜で出撃した。その胸にはお守りとして、愛しい人がくれたオリジナル曲の楽譜『真夏のオリオン』を秘めていたのだった。倉沢達の目的は、アメリカの補給船を攻撃しその進路を断つ事であった。しかし敵の護衛艦パーシバル艦長スチュワートは、天才的な戦略を持って、イ-77潜以外の四艦を沈めてしまう。そしてイ-77潜も甚大な被害を受け、海底に身を隠す事になる。しかし刻一刻と艦内の空気は減っていき、隊員達は半ば死を覚悟する。その時倉沢が放った、意外な一言。その一言が隊員達の士気を高め、イ-77潜の運命を変えてしまう。そしてあの楽譜『真夏のオリオン』が、信じられない奇跡を、巻き起こす。
潜水艦モノと言えば、福井晴敏の傑作「終戦のローレライ」を思い出す。さらに回天が登場するとなると、これまた傑作横沢秀夫の「出口のない海」が思い出されるのだが。本作はどちらにも似ているようで似ていない。いや双方の良い所を取って煮詰めた感じだろうか。有り得な過ぎず、エンタメ的な部分も多く残し、一つの作品が多面的に完成している感。300ページという決して長くは無いボリュームで、ここまで纏め上げてるのは見事だと思う。
戦略小説としても十分面白い。それぞれの国側の状況をスイッチしながら場面を繋ぎ、それぞれの視界からその作戦と戦局を描き出している。それぞれが何を考え、どう裏をかきあっているのか。そして潜水艦物特有の息苦しさ、時間との戦い。こちらまで息が苦しくなるような、はらはら感がたまらない。
そして戦争という絶望的なテーマにあって、音楽を絡めたのも素晴らしい。
国を違え言葉も思想も違う。さらには生と死の狭間ぎりぎりのその瞬間にあって。それでも、そこにいるもの達の心を一瞬にして心を繋げてしまう― 音楽。それはさらに時空をも超えて、大事な人たちの心と心を繋ぐのだ。時を超えて、その子孫達が。遠い過去の記憶を、想いめぐらす。一体あの戦争で、あの場所で。祖父たちは何の為に戦ったのか。そして得たものがあったとしたら、それは・・・。
この手の戦争物を読むと、どうしても「この青年たちが現代を生きてたら」という思いに駆られてしまう。きっと素晴らしい青春を謳歌したであろうにと、本当に本当に胸が痛くて涙が出る。一体あの戦争にどんな意味があったのか無かったのか。夏のあの日が来るまでに近しい人たちと話し合ってみるのも非常に良い事だと思う。それまでにぜひ本作を読まれてみてはいかがだろうか。文体も非常に読みやすく、入り込み易いストーリー展開。本が少し苦手だという人でも、十分楽しめる作品だと思います。老若男女誰でも万人に読んで欲しい、超オススメの一冊です。