電子書籍
結婚あれこれ、詐欺師あれこれ
2017/04/12 10:33
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みやすい荒野さんだったな。結婚詐欺師、騙す方も騙される方もくせのある人物ばかり。鳩子、あそこまで執着できるのはすごい。その執念で仕事すれば騙された50万なんてすぐに取り戻せるんじゃないと思ったけれど、これは無粋だな。だってそうじゃないんだもんね、なにか手応えを感じたいんだもんね、きっと。詐欺師の本妻の初音。一番どっしりしてるわ。いろいろ分かってる妻ってほんとうに怖い。詐欺師は騙せてると思ってる(だろう)ってとこがリアルぞくぞく。初音は強い女性だ。どの章もはっきりとした結末なく含みだらけ。それがまたいい!
紙の本
イミテーションの輝き
2021/03/29 14:53
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
イカサマの宝石と巧みな弁舌を使いこなす、古海健児の手練手管に圧倒されます。他人を欺き続けた古海が、妻の嘘だけは見破れなかったのは自業自得ですね。
紙の本
「結婚」というタイトルだが
2017/02/05 05:20
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投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
結婚詐欺にあう女性たち、彼女たちに関わりのある人物、そして詐欺師本人ととその共犯者の女。様々な立場の人たちの視点から次々に描かれていくのが面白い。多角的、俯瞰的に眺めることができるので、単に騙される側に同情するだけではなく、詐欺師側にも少し肩入れしたくなってしまったりした。
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タイトルはシンプルに「結婚」。結婚詐欺師の男、騙される女たち、その近辺にいる男女たちが順に語り手となって話が進む。
私も昔はこんな男に騙されるわけがないと思っていた。でも今は、いいや気づかぬうちに騙されてしまうことがある、と分かるようになってしまった。スマートで母性本能をくすぐるのが上手で何せ女を喜ばせるのが上手い男の、ちょっとした人間臭さや至らなさ。そうしたところが彼の計算外のタイミングでふと漏れる瞬間。その瞬間に、それまでいくらかあった半信半疑な気持ちに目を瞑ってしまうようになるんだよなぁ。あと、自分が騙されたという事実を認めること、それを他人に知られることで自尊心が傷つけられるのが怖い気持ちが、もはや必死に彼へとのめり込ませるのだと思う。
説明しすぎない描写により想像力を掻き立てられるがゆえにそっと背筋が寒くなるところもあり、余韻の残る作品だった。
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結婚詐欺師古海健児が騙した女たち、共謀した女とその元夫、そして古海の妻・・・それぞれの立場から語られる古海とはどんな男だったのか。騙された女は、騙されている時は確かに幸せなのね~。騙されたと分かった後でも、自分だけはほかの女と違うと思い続けたいものなのかな。読み終わっても、古海に対する嫌悪感は不思議と湧いてこなかった。ラストシーンはむしろ寂しい気持ちになった。
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なんだか詐欺師の古海まで心にさみしさを抱えた人に感じてしまう。
相手の本当の顔は自分が見たいように見えればいいんだろうか…
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結婚詐欺師とだまされた女たちの物語。
結婚詐欺師はひとり、女はそれぞれ詐欺師に夢を与えられ、その夢を叶えるために男を援助する。
そして、いつか、おとこはいなくなる。
その繰り返しではあるが、騙した詐欺師にも、騙された女たちにも、その後の生活が続いている。
そして物語も、そのまま続いている。
女たちの共通点はひとつ、同じ男に騙されたということだけ。
その一点をキーに物語は続いていくが、だれがどんな風に騙されて、いま彼女はどんな生活をしているのか?
そして、騙された女の後にも、新しく騙される女の生活が続いていく。
読み進めていくにしたがって、いま誰の話を読んでいるのか、よくわからなくなっていってしまった。
しかし、それが現実に起きることなんだろうな。
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ディーンフジオカ主演で映画公開中。観るかどうか迷って先に原作を。
目次に並ぶ10名の女性の名前と職業と地名に、すべて結婚詐欺に遭った女性視点で描かれているのかと思えば、視点はさまざま。詐欺師本人やその片棒を担ぐ女性、詐欺師の妻まで登場します。
被害者は揃いも揃って騙されたことを認めたくない。逃げられたと思えずに執拗に探したり、そうでない人はなかったことにしようとしたり。
「男と不動産は似ている」。直感で最善の物件を選んだつもりでも、失敗するときには失敗する。いや、これって男に限らないでしょう(笑)。悪いのは女か男か。
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詐欺師をめぐる人間模様。
最後まで詐欺師に騙された女性が出てくるのかと思ってたら、そんなことはなく、途中で詐欺師のパートナーが出てきたりして、少し話の流れが変わっていきます。
ただ、それほどドラマチックになるわけでもなく、粘着性が高いわけでもなく、普通な感じで普通に終わりました。もう少し何か引き込まれるものが欲しいかも。
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結婚詐欺している男全員には言えないけれど、
この男はこの男で消耗しているのかな、と感じた。
あとは、若さを失った女の人たちの孤独。
現状を今以上のものに変えたいと思っていて、なんなら誰かに変えて欲しいと思っていて、その脆さ。
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題材は結婚詐欺だけれど、井上さんらしい苦さのある作品です。騙している方があぶく銭を稼いで楽しくやっていて、騙された被害者だけが悲しいとかそういう単純な話ではないです。
登場人物全員が決して幸せには見えない、つまりは生きるとはこういう事だと感じる。
結婚詐欺師である古海の章や相棒の千石るり子の章で作品に深みがわく。
本当はどうしたいのかわからないままに流されてしまうのが人間なのかもしれない。
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最近、選んでいる作品の流れからして明らかに「結婚とは幸せなのか」ということに苛まれている。そしてこの作品は結婚詐欺の話であって、このタイミングで手に取ったということは「結婚てさ、みんな幸せだと思っているけどこういう危ない目にも遭ったりするんだぜ!」と、世界の既婚者に訴えかけて、自分が未婚であることを正当化したいだけなのかもしれない。自分の根深さというか闇深さというか、それにほとほとうんざりする。
井上荒野さんが、作家であった父・井上光晴さんの同名小説にむけたオマージュ作品だという。光晴さんの「結婚」は未読。井上荒野さんの作品は、直木賞を受賞した「切羽へ」以来。mixiレビューをふり返って当時の感想を読んでみた。今は申し訳ないことに、「切羽へ」の内容は全く覚えていなくて、ただ、好きだった箇所についてはしっかりと覚えている。それは「その日帰るときまで帽子に触れることはなかったが、帽子がそこにあることは、ずっと心の中にあった」という部分だ。当時のわたしはそれを「しぐさと存在によって、夫とは別の男性をしずかに愛する気持ちを表現している」と感じたらしい。
そして山田詠美さんの解説を読んだ際、「切羽へ」という作品に対して「書かないことの大切さ」を感じ取ったらしい。「書くことでうさん臭くなりがちな感情の描写がより繊細で美しく感じたのは初めてのことでした」と書いてある。
ほおお、なるほど。
この作品でも「書かないことによる切実さ」が感じられて、それはそこここにちりばめられている。
女性の名前/職業/場所
のタイトルで、10の目線(重複あり)で描かれる一人の男、古海健児。結婚詐欺師。
なので全部騙された女性側の目線ですすんでいくのかなと、少し気持ちがだれてきた頃、古海本人や彼の相棒、さらには妻の目線からも描かれたりする。物語が進むにつれ、どんどん彼に近づいていく。だからだろうか。だんだんと熱っぽくなる感覚がある。微熱のまま物語がすすんで、終結する感じ。一つ前の章で終わっていれば、あるいは最後の章が妻ではなかったら、物語はおそらく高熱となりえただろう。しかし、最後に妻の章が置かれたことにより、物語は微熱のまま終わるのだ。そして、最後に明らかに発生したと思われる事件については、具体的に描かれることはない。
たぶん、今のわたしは。言葉にしたいのだ。言葉にしてほしいのだ。言葉にしないことで美しくなることもあるけれど、言葉にしたからこそうさん臭くなってしまうこともあるけれど、それでもやはり、言葉にしたいのだ。だからこそ、各章の短さに物足りなさを感じてもっと続きを語ってほしいと思ったし、全体的に分かったような分からんような感覚が、鈍く残ってしまっている。
解説は西加奈子さん。西さんは結婚詐欺にひっかかる女を最初他人事としてとらえ「結婚詐欺師」「結婚詐欺にだまされる人」とカギカッコでくくっていたらしい。けれど、「古海の人間らしさに触れた時、そんなカギカッコから大きくはみ出す瞬間がある」と書かれている。
わたしは最後まで、ここに出てくる女性たちに感情移入できなかった。古海に対しても不信感丸出しで、最後まで彼は���欺師だった。わたしが彼に恋をする瞬間は一度もなかった。それはただ、古海が詐欺師であるという偏見が抜けなかっただけなのか、心と金をむしり取られるほど熱烈に誰かを愛するという気持ちに白けてしまっているだけなのか。自分でもどちらなのか分からない。
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なんの予備知識もなく読み始めたので、次の章でもまた次の章でも被害者の話っていうのに笑ってしまった。(連作であることにそこではじめて気づいた。)
でも最後はどうなるのかわからず、古海が最後に出かけた先は、やっぱり「客」のもとなのだろうか。
脳内キャストは玉木宏だったけど、ディーンフジオカで映画化されたんだね。
原作よりかっこいい(っていうか、原作では小柄という設定だけど、小柄な結婚詐欺師ってピンとこない)。
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東京、長崎、仙台と縁のある土地の名前に惹かれて。というか長崎弁、すっかりすらすら読めるようになってるな。
綻びが出るのはしくじったり間違ったりしたときじゃない、綻びてもいいと思っているときなんだ
関心を失った人間に対して、ひとはどれほどでも冷たくなれる。
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うーん、一気に読んだけど、率直な感想は思わせぶりで語り足りなくて物足りない、かな。まるで「潤一」の姉妹編みたいな作品で、井上荒野の追いかけるテーマは男女の機微のこの辺にあるんだろうな、とは感じつつ、不完全燃焼。と言うか、このテーマに関して深く考えるのが嫌なのかも知れない。結局自分自信を掘り下げる事になるからなあ。