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王城夕紀氏のファンタジー小説で、一度読み出すと読者を釘付けにしてしまいます!
2020/08/01 10:16
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『マレ・サカチのたったひとつの贈物』や『青の数学』などの話題作を発表されている王城夕紀の作品です。同書も同氏の傑作の一つです。同書の内容は、蓋の国を動かすのは、盤戯「天盆」を制した者といわれる世界を描いたファンタージ小説です。人々は立身を目指し研鑽に励むのですが、長い間、平民から征陣者は出ていません。そんな中、貧しい13人兄弟の末子・凡天が激戦を勝ち進みます。この少年が歴史に挑むとき、この国の運命もまた動き始めます。同書は、圧倒的疾走感で描き出された放熱ファンタジーで、読者を釘付けにしてしまいます。
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天盆に魅せられた少年と家族の繋がりに関する物語
2017/11/13 12:11
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投稿者:ねこすき旅人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
とある小さな国において盛んな天盆という駒を使った架空の遊戯に関するお話です。将棋や囲碁に近いものがありますが、定石にとらわれない一つの世界観を持つ天盆に魅せられた多数の人たちが勝負に笑い涙し、成長し挫折を繰返しながら、最終的に一人の少年の対局に固唾を呑んで見守るようになります。小さな盤の勝負に魅了される国の人たちの心のゆがみや葛藤、そして天盆に愛された天賦の才を持つ少年とその家族の絆を手に取るように感じることが出来ます。物語にあっという間に引き込まれた本に出合えたのは久々でした。
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“すべての駒に、意味がある”
2019/07/26 00:38
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投稿者:Ryohei - この投稿者のレビュー一覧を見る
王城夕紀さんは、人物の心情の機微を描くのが非常に上手いと改めて思う。天盆という架空の盤上遊戯をモチーフにした本作において、その才能豊かな主人公の凡天よりも兄の二秀と十偉の2人が強く印象に残った。二秀は才能があるものの、頂点には届かない、非常に我々に近い人間らしさを持ち合わせて、その中で「勝つとは何か」に苦悩し、自らの向かう道を見つけていく。十偉は兄妹に比べて劣っていることに苛立ち反発を見せるも、家族の意味を知り、衆駒としての役割を自覚する。若く今を生きる若者の成長だけでなく、家族の愛をも描いた作品である。
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王城夕紀の読後感
2017/11/09 01:36
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
こちらがデビュー作らしいけれど、
文庫化の速度の関係で、
「青の数学」が既読。
こちらも「青の数学」と構成はほぼ同じ。
ただスケール感が全く違う。
デビュー作にして、
1つの完成系。
それが「天盆」。
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『青の数学』シリーズの王城夕紀さんの作品である。文庫化を機に手に取ったが、この熱量は『青の数学』に匹敵するだろう。設定上の共通点は多い。数学に打ち込む栢山。本作の主人公が打ち込むのは、「天盆」という盤上遊戯。ゲームである。
架空のゲーム「天盆」とは、将棋に近いイメージだろうか。具体的なルール説明や図は、一切出てこない。それなのに、これほどまでに対局の熱気が伝わってくるのは、なぜなのか。具体的数式をほとんど出さずに、数学の熱気を演出した著者ならではの手腕である。『青の数学』シリーズのファンなら、はまるだろう。
テーマが架空のゲームなら、時代や舞台も架空。三国志時代の中国を連想する。本作はいわばファンタジーなのだが、侮るなかれ。本作はファンタジーでなければならないことが、読めばわかる。この国「蓋」において、天盆はただのゲームにあらず。国家の命運さえ左右する。生きるか死ぬかの真剣勝負なのだ。
10人兄弟の家に拾われた主人公の凡天には、天盆の才能があった。あっという間に兄弟たちを追い越し、大人の名人級も次々と破る。平民の身分だけに、それを快く思わない権力者がいる。現代社会にも通じる、権力者の汚さ。しかし、凡天は妨害に屈しない。家族の力強い応援がある。何より、凡天は純粋に天盆が好きだ。
哀しいかな、親が子を殺し、子が親を殺すニュースが珍しくない昨今。実の子ではない凡天に注ぐ、父と母の愛を見るがいい。立派な親の条件とは何だろう。社会的地位が高いことか。そうではない。本作は、凡天が駆け上がる物語であると同時に、家族の物語でもある。信頼関係があるから、決して諦めない。
真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐな物語の結末は、予想外だった。ファンタジーならではの結末と言えるが、この結末は、凡天を、ライバルを、天盆に挑む者たちを、微塵も否定していない。だからきっと、これでよかったのだ。そう思いたい。
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「青の数学」が面白かったので手にとってみた。
天盆とは日本でいう将棋みたいなもの。
物語の終盤まで天盆にのめり込み、子供ながら無類の強さへ成長していく末子の凡天の向かうところと、家族の絆(とくにあのだらしなく見える父がね)に感動。
凡天が天盆を制覇した後のドラマチックな展開を期待し過ぎたのかもしれない。
ただ、純粋で美しい物語だった。
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架空の中国史風の物語だと『後宮小説』あたりがざっと浮かびますが、それに近しく、かつてきっとこの物語の舞台である蓋という国はあり、天盆というゲームは実在したのだろう、と思える作品でした。
家族の在り方、信じること、なにかを好きでいること、そういった不確かなものにひとつの答えが提示されるようで好きでした。
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「『天盆』という将棋に似たゲームの天才少年が、並み居る敵をちぎっては投げちぎっては投げの大活躍する話」かと思っていたら、確かにそういう部分はあるものの、主人公の兄の目を通した『天盆』に関わる者の苦悩と、主人公たちの家族愛、圧制からの解放という部分が主だった。その後の主人公たちの様子が描かれていないのが残念だけれど面白かった。
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「青の数学」愛読者としては
手に取らないわけにはいかない。
驚いた。これが…デビュー作???
数ページ読み進めただけで、この国の人々や
時代背景の設定、ここの登場人物の名前と
キャラクターが、びしびし頭に入ってくる。
ファンタジーは登場人物がやたらに多く、
国名なども架空だから、設定そのものを
消化するだけに一度通読しなくてはならない
場合だってあるのに。
それだけじゃない。映像が脳裏に浮かんでくる。
いきいきと街が周りに浮かび上がってくる。
凄すぎるよ…この筆力。圧巻だ。
天盆の対局を経て、凡天の対戦相手たちが
精神的な成長を遂げてゆくさまは
どこか「蜜蜂と遠雷」に似て清々しい。
ラストは少しやるせないけど…佳作です!
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なんじゃこりゃおもしれええええええ。この家族全員が愛おしすぎて貧乳が破裂するところだよ。父上が格好悪いのに格好良過ぎてなんかもうどうしたらいいのこれ。とにかくこの一言に尽きる。
「誰かのために戦う奴に勝てるわけがない」
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なんだこれ!Σ( ̄□ ̄;)話にグイグイ引き込まれた!(^o^;)天盆(将棋っぽい盤戯)に夢中になり、家族愛に心が震える(;゜∇゜)あぁ誰かにオススメしたいけれど、近くにファンタジー好きがいない(T-T)
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天盆はその国、背景、舞台となるゲームすべてが架空のものなのに、なぜか光景が浮かんでくる物語です。
白黒はっきりの世界観がここちよく、大好きなものに一生懸命打ち込む気持ち、大きな権力にも負けない気持ち、家族が信じあう気持ちがストレートに描かれているので、スポーツの試合を見終わったあとのようなさわやかな読後感もあり。
真夏の暑さや疲れを忘れて楽しみたい方におすすめです。 (将棋はニガテ)
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初夕紀。将棋を模した盤戯“天盆”。初めにパッと浮かんだのが、H×Hの“軍儀”。最期の凡天vs白斗は、王vsコムギのようであり、vsネテロのようでもあった。大変楽しゅうございました^^
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架空の盤戯と、架空の国と、色々1冊に入れ込んでいるからお腹いっぱい。試合展開は集中してもなかなか想像が追いつかず…
でも、少勇はダメおやじなんだけど芯はかっこいいなぁと思った。凡天に対しては天盆ラブしか特徴がなく、なんの感情移入もできなかった。
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王城夕紀さん、デビュー作「天盆」読了。蓋を舞台にした天盆(将棋のようなもの)による熱い戦いを描いた物語。小国がゆえに他国からの侵略を防ぐ人材を育て、国政に引き上げる手段として天盆は重要な役割を担う。小さな食堂の主である少勇は賭け天盆に明け暮れ、妻の静は大家族と食堂の切り盛りに奔走していた。そんなある日、少勇は河原で赤子を見つけるのだが。。久しぶりに一気読みしました!物語で出てくる考え方は、今ブームの将棋にも通じるものがあるように思います。13人の家族、それぞれに特徴があって、日常を楽しく読ませ、天盆の戦いでは、対戦者ごとに戦い方が違っていたり面白かったです。ただ、最後「もう少し続きが読みたかったな」というのが正直な感想です。蓋の新しい歴史がどのように繋がれていくか、少勇の家族はどんな生活を送るのか、読んでみたかったなー。ちょっと変わった物語ですが、オススメです♪とても、良かった。