紙の本
中年男女のあやうい恋を背景に越中八尾の風の盆を美しく描く
2002/09/01 18:58
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
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加藤登紀子の解説に『この小説は男と女の恋という形をとっているけれど,実は風の盆を描きたい,という著者の狂おしいほどの情熱によって書かれたものだと思う』とあるが,まさにそのとおりだろう。
祭りと言えば,喜びの表現であるはずのものだが,風の盆は違う。由来などを聞くと,風の盆も本来はそうなのかもしれないのだが,風土のなせる技なのか,じょじょに変わってきたのだろうが,現在の風の盆から感じるものは,静けさであり,優しさであり,そして,『死』なのだ。そこに魅せられた著者が風の盆を描くために,このような男女の物語を書いたのであろう。風の盆の美しさは十分に描かれている。古さも感じさせない。
しかし,男女の物語は,今一つ。
「もう一度,一度きりでいいから,あなたと風の盆に行ってみたい」はいいのだが,
「私は散る前にせめて一度は酔って見たかったのよ」はすれ違いの予感か。
男のセリフは虚しい。
「好きな女と好きなように暮らせるのなら,今投げ出して惜しいものは一つもない」
ラストはひどい。ロミオとジュリエットの真似などしなくても,最後も美しく終わらせてほしかった。
この本の最初の出版は昭和60年(17年前)で,そのときから,風の盆はメジャーになっていったのだが,この本によれば,このとき,すでに,人気が出始めていたらしい。今の人気は,それとは比較にならないはずだが,風の盆の良さは,続いている。でも,100年後はどうなっているか。今日から風の盆である。
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胡弓の音と水の流れる音・・・
これを想像するだけで、八尾だけではなく、なぜか古風で閉ざされた感のある富山を懐かしく思い出す。
それぞれの人生を歩みながらも学生時代からの20年間ひたすら想い続けていた2人の気持ち、古風でひたむきな女性、無口で実直な男・・・
逢えるのは1年に1度。
風の盆を舞台に、本当にきれいな小説であった。
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序・風・歌・舞・盆の五章から成る小説。内容の是非はともかくとして、儚いものはやっぱり綺麗でそれを描く表現がまた美しい。
寄贈。
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一冊をとおして、美しい歌を聴いているような、絵画を見ているような物語だった。
不倫だけど、古風で知識があり、周囲からも親しまれていた二人だから美しく儚い。
結末に涙。でも綺麗すぎてなんかズルイ。いつか風の盆を見てみたいと思う。
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病床で読み、号泣。櫻井よしこさんの著書の中で、カッコイイ男と女的にコメントされていたので読んでみました。
すぐに「おわら」に行きたくなり、調べたら、海外旅行並の費用になることを知り愕然・・・。熟年カップルの聖地!とも言えよう。八尾に行きたい〜〜〜
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序章は非常に好きなのだけれど、
徐々に結末ありきなのが透けて見えてきて、伏線が、伏線として読めてしまう辺りがなんとも。。。
単に好き嫌いの問題ですが、
こういう結末は嫌いです。
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友だちに薦められて。
不倫否定派なのにめずらしいじゃん、とたずねたら、
「でもこれは美しい話だよ」だそうです。
「おわらといえば、この間テレビでやった
愛ルケを見ちゃったよ・・・」とも言ったところ、
「あれはおわらを汚したね」とのこと。
私は岸谷五朗は嫌いではありませんが、
ラヴシーンを見たい類の俳優さんではないのだなということが、
よぅぅぅーーーっくわかりました。・・・話がそれた。
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胡弓に“スィッと”と声をかけていた中年の男が囃子を歌い出した。
恋だけは別だよ
思案の他だよ
嵐の行く先きァ
誰だって知るまい
粋に歌い終わって、本歌を笠の若い女がもう一度歌い出した。
燃えた昨夜に
顔あからめて
忍び出る身に
オワラ
夜が白む
:::::::::::::::::::::::::
東の空がわずかに動き出す頃
三晩と続いた
祭りは終わる
耳に残るは
胡弓の調べ
女の声
夜が白む
腕の中から
ふぅと女は消えていた
肌を打った際の掌の痛み
背に幾条かの紅い爪痕
柔らかであたたかな
記憶を残し
祭りの後
彼の地で
女はまたうまれる
祭りの日
その女をもとめ
きっと彼の地を
訪れるのだろう
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おわら風の盆の情景と、大人の恋愛と、人物ひとりひとりの人生が
きれいにひとつになって、一気によめました。
風の盆をゆったりと見る地元の人的視点が入っているようで
ただロマンチックなだけではない厚みがある。
恋愛以外の、地元でのふるまいの良識なんかから、
ふたりのリアルな大人っぽさが感じられるのも好きです。
そして「八尾の家を管理するスゴイおばあさん」とめさんが、
一番印象に残りました。
結末はちょっと、物語になりすぎていていやだな。
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水の音、風の音、音もなく動く幻想の踊り
文章には表しにくい音が実に見事に掛かれ、景色が自分の頭に描かれる、まさに現地に行ってこの目でこの2人や2人関わった偽善的ではない心優しい街の人々にふれあってみたいと思わずに居られなくなる作品
言ってみれば不倫の作品ではあるが、織姫と彦星の如く、自分達の若き頃の一番の思い出の地でその年に1回行われる祭りに再会し過去を想い、今を見つめ、そして未来を描く。
物語そのものや、その土地、背景全てが幻想に思える“素敵”な話。
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10年ほど前に読んだときは、すごく共感して、夢中で読みましたが、年齢を重ねて今読むとヒロインがあまりに残念な女性で、当時を恥ずかしく思いました。自分も似たような感情を持っていたので。
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再読本。
30代の頃毎年九月に、風の盆から帰ると読み返していた本。
気がついたら主人公とたいして違わない年齢になっていた。
30代の頃は妙子や杏里の目線で読むことに抵抗がなかったのに。
越中八尾の風の盆に託して、常に死を意識しながら30年の歳月を取り戻すべく、後戻りの出来ないトンネルを駆け抜けた二人の物語。
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以前から気になっていて、いつか訪ねてみたい祭りが二つあります・一つは、徳島の阿波踊り、リズミカルなお囃子と、足先から上に掲げられた指先まで、一本筋の通った美しさが女踊りには感じられます。
もうひとつは、富山県八尾の、おわら風の盆祭りです。川の流れの音と、三味線に胡弓が加わり越中おわら節が歌われます。徳島のものが ”動” とするなら、こちらはまさに ”静” そのもの。男踊りも女踊りも静謐(せいひつ)であり、キリリとした潔さがあり、観光客が引いた後でも、夜通し町のあちこちから少人数の夜流しの胡弓の切ない謡いが聞こえてくるそうです。9月1日から3日は、町は彼岸と此岸(しがん)の境がなくなり、あの世から戻ってきた懐かしい顔が、そこここに見られるとも言われています・・・
著者の橋本治氏は、この祭りの持つ風合いを作品にしたかったようで、その目論見は、見事に果たせていると思いました。悲恋ですが、大人の純愛です。オススメはしませんが最後の10ページは、文字が霞んで読むのがたいへんでした。
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富山県八尾のおわら風の盆祭りは、毎年9月1日から3日間行なわれるお祭りだそう。そのお祭りを舞台に描かれる不倫のお話。互いに心をかよわせつつ、違う20年を過ごした末の不倫愛。おわらブームの火付け役となった小説らしい。結末はどこかで読んだなって感じだけど。
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今年、おわらに行く予定です。ある方の勧めで読みました。衝撃が強すぎてしばらく呆然として、私の読書が止まってしまいした。
蝶の行く末の低さや今朝の秋
人生の秋に、こんな情熱の焰の燃え盛る事があるものでしょうか?風の盆の音、水の音を確かめに行って見ます。