格 さんのレビュー一覧
投稿者:格
![長恨歌](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02494070_1.jpg)
長恨歌
2005/01/23 22:23
新宿を舞台にした不夜城三部作の完結編.組織のなくなった新宿で力を持つものは
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新宿を舞台にして,中国人マフィア達の動きを中心に描く96年の「不夜城」,00年の「鎮魂歌」に続く不夜城完結編.新宿は変わった.劉健一が牛耳り,混沌のなかにも組織的に統制のできた時代から,福建人,東北人が入り乱れ,まったく組織の力が働かない時代になってしまった.
主人公は李基,1970年黒竜江省生まれの中国人だが,在留邦人二世になりすまし日本に入国,武基裕の日本名で日本人としてのパスポートを持っている.まともな暮らしをしていたが,勤めていた会社が倒産,以後,結局黒社会に暮らすようになってしまった.
そして,武のボスが突然殺される.その復讐に仲間と動きだした武は,劉健一と接触するようになる.劉健一は,今では,新宿で小さな飲み屋を経営しているだけだが,PCを駆使し,多数の情報屋を操り,新宿黒社会の情報を一手に握っていた.以前とは別の力を持っていたのだ.
極端に走った馳の著作は読まなくなってしまっていたのだが,本作を久しぶりに手に取ってみると,パワーがだいぶ落ちて,淡々と書かれている印象である.劉健一は力ではなく,情報を操って暗黒社会を牛耳っている.今風と言えば言えるが,それは恐ろしい力でもある.また,主人公が臆病者でかつ,主人公の思う女性の感情がいま一つ見えないという面もあり,不思議な感覚で読み進んでいける.ちょっと馳も変わったのだろうか.
![東京居酒屋はしご酒 今夜の一軒が見つかる・厳選166軒](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02495905_1.jpg)
東京居酒屋はしご酒 今夜の一軒が見つかる・厳選166軒
2004/12/13 01:58
東京周辺居酒屋166軒,怒濤のはしご酒
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わずか220ページあまりのところに,166軒もの居酒屋の紹介.1軒を固定的な形式で紹介するのではなく,日記の中に自然に登場するという雰囲気.1軒の店の紹介は量からしてていねいなものではないが,著者の独特な調子がなかなな読ませる.巻末に住所と電話番号の一覧があるので,地図はなくても,なんとか行く気なら調べることはできる.番号別の一覧と地区毎の一覧の二つがあるのは無駄.
ほんとうにそのように行動しているとはとても思えないが,1日3軒も4軒もハシゴをして,朝方まで飲む,という著者の体力は驚異的.いかにも旨そうな,そして,気持ちが良さそうな店がこれだけ東京にもあるのか,と驚かされる.とくに,モツ焼きの店が著者は好きなようで,いろいろ紹介されるが,なかなかいい.早速訪れてみたい.しばらく行っていない田園調布のあの焼きとり屋にも行きたい.
ところどころ,まずいものをだす店など,ケンカをする話がでてくるが,そういう店は必ず,イニシャルのみの紹介.そういう店は一度しか訪れていないはずなので,無理もないとは思うが,ここはちゃんとだしてもらいたい.それを信じて絶対に行かない,というわけではないのだから.
![犯人に告ぐ 1](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02462514_1.jpg)
犯人に告ぐ 1
2004/09/20 01:23
連続児童殺人事件に対するテレビ公開捜査はいかにして行われていくか.
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神奈川県警,警視巻島史彦が主人公.45歳にして警視に昇格し,しばらくして捜査一課特殊犯係二班を束ねる管理官となった.そこで起きた誘拐事件で,犯人に振り回されたあげく,偶然も手伝い,犯人を逃してしまう.そして,誘拐された子供は殺害される.その記者会見の当日,巻島の娘が死線をさまよう状態に重なったこともあり,記者の執拗な追究に切れてしまい,左遷.ここまでが前置きである.
数年後,巻島は足柄署の特別捜査官となり,県下検挙率no.1を実現していた.その頃,県下で発生する連続児童殺人事件がおきていたが,当時,直属の部長だった曽根が県の本部長として戻ってきて,巻島を復活させる.そして,指示したのは劇場型の事件解決である.すなわち,テレビを活用した公開の捜査である.あるニュースショーのキャスターにも同じ犯人からと思われる脅迫状がきていたことのだ….
巻島の優秀な刑事でありながらうまくいかない悩める姿が魅力ある人物としてうつる.巻島と同じ年齢でありながらキャリアとして本部長の曽根.非人間的で冷徹であることが当然であるところ,巻島をうまく使いこなすずるさがすさまじい.足柄署で巻島を支え,巻島の信頼から捜査本部に抜擢される津田の枯れた人間味.さらには曽根の甥でキュリア,巻島の直接の上司になる植草とその昔の恋人でライバル番組のニュースキャスターを勤める女性との関係も面白い.
劇的な展開があるわけでもなく,むしろ淡々と物語は進んでいくのだが,テレビでの犯人に対する呼びかけとその反応の関係が面白く,一気に読まされてしまう.解決は唐突な感もあるが,それなりに論理は通っている.
![龍時 03−04](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02458215_1.jpg)
龍時 03−04
2004/08/01 17:22
リュウジを入れた日本代表のアテネオリンピックでの戦い
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スペインに単身で渡った日本人少年,リュウジを主人公にしたサッカー小説,今回は最初から最後までオリンピック本戦の試合である.目次を書くと以下のとおりであり,日本が決勝まで進出することがわかる.
1.グループリーグ/vs.ギリシャ
2.クォーターファイナル/vs.スペイン
3.セミファイナル/vs.韓国
4.ファイナル/vs.ブラジル
試合の描写がリアル.一つ一つのボールの動きまで,実際の試合を見ているかのよう.むろんそれだけでなく,リュウジにはまたしても,監督の平義との葛藤が待ち構えている.この平義は,ドイツで組織サッカーを徹底的に学び,実績を上げてきた人物という設定で,ではなぜリュウジのような奔放なプレーをする選手を呼ぶのか,というところから疑問なのであるが,そこからクライマックスへとつながっていく.
平行して,リュウジの父親であるジャーナリストは,精神的におかしくなっているという監督の妻を追いかけていく.これもまた,監督の不思議へとつながっている.
オーバエイジの選出は明神,曽ケ端,田中で,明神がキャプテンの設定.これはこれで絶妙な選択といえる.実際の選択は,小野が守りと攻撃の両方をかねるのかもしれないが,どちらかというと守りが不安にならないでもない.
曽ケ端の「お前のプレーをもっと見たかったから」,ロベカルの「これから楽しく遊んでやる」など実在の人物達の気の利いたセリフが泣かせる.それにしてもロベカル,ロナウドにカカーときたブラジル代表がオリンピックにでてきたら,ちょっと怖い.
日本代表のユニフォームはなぜ青いのか,についてほんの少し,考察が入っているが,書かれているように納得出来るものではない,もう少し追及してほしかった.
しかし,続きを読むことはできない.リュウジが入った日本代表,創造力あふれるプレーとサッカーの魅力あふれる小説を読みたかった.
![基本死活事典 増補改訂版 上巻 基本死活](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/01368287_1.jpg)
基本死活事典 増補改訂版 上巻 基本死活
2003/09/07 22:33
基本死活の分類された型,全252型の説明.
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事典など頭から読むものではない,と決めつけて,購入してはあったものの,何かあったときに参照するくらいしかしていなかったのだが,先生の薦め,というよりは,毎月の会で頭から順番にテストをしていく,ということで,否応なく,最初から読まざるを得なくなった.
これが面白い.趙治勲の語り口の軽快さに載せられて,どんどん読めてしまう.実戦によくでてきそうな形ばかり,というのもいいし,また,丁寧に細部まで説明されて,疑問の余地がほとんどないのもいい.白先か,黒先か,型によって片方しか書いてないのが,整理のしやすさ,という意味で多少残念だが,ほとんどは自分で考えて,すぐわかる.したがって,それを含めて,自分で整理してみればいい.
ただ,これを一度読んだくらいでただちに強くなる,ということにはならないだろう.これを覚えて,そして,実戦で使えるようにならなければならない.何度も何度も読む必要がある.ただし,何度も同じパターンが表れてくることもあり,多少は殺し方,生き方のパターンのようなものが,身についてきたような気もしないではない.
全体の構成は以下で,全252型.一つの型で1ページ図4つ,または,2ページ図8つで多くの変化を説明している.万年コウ,隅の曲がり四目などの特殊な型は,コラムで説明がある.
第1部 隅の死活 (1)二線型 25型
162型 (2)六目型 31型
(3)八目型 40型
(4)クシ型 34型
(5)一合マス型 32型
第2部 辺の死活 (1)二線型 26型
68型 (2)三線型 26型
(3)四線型 16型
第3部 応用死活 (1)星と三々 10型
22型 (2)荒らし方のいろいろ 12型
![ネットワークはなぜつながるのか 知っておきたいTCP/IP、LAN、ADSLの基礎知識](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02227749_1.jpg)
ネットワークはなぜつながるのか 知っておきたいTCP/IP、LAN、ADSLの基礎知識
2003/09/07 22:31
ブラウザで入力したURLがWebサーバにとどき,そのデータが返ってくるまで
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この本,まるごと一冊で,ブラウザで入力したURLがWebサーバにとどき,そのデータが返ってくるまでを解説している.以下の構成である.表題と解説される機器,ソフトを示す.
第1章 ブラウザがメッセージを作る ブラウザ
第2章 TCP/IPのデータを電気信号にして送る TCP/IPソフト,LANアダプタ
第3章 ケーブルの先はLAN機器だった ハブ,スイッチ,ルータ
第4章 プロバイダからインターネット内へ アクセス回線,プロバイダ
第5章 Webサーバーに遂にたどり着く ファイアウォール,プロキシ
第6章 通信データが完成し,Webブラウザに戻る Webサーバー
ネットワーク関連で,いくつか分からないことがでてきたため,細かいことを調べる前に,全体を再確認してみようかと思って,読み始めた本であり,おぼろげだった部分が,だいたい理解としてあったことを確認するためにには,有効であったといえる.しかしながら,もともと知らないし,かつ,興味もない,電波信号の部分は,よく分からず,ほとんど読みとばしてしまった.また,本来,調べたかった問題は,結局,別の詳細の本を読むしかない.ちょっと,中途半端であるが,この本の目的はもともと,そういうもの.
まったくの初心者にとっては,難しすぎるような気もするが,部分的には少し分かっている人が,ネットワーク全体の知識を同レベルに引き上げるためにはいいのではないか.
![安政五年の大脱走](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02315729_1.jpg)
安政五年の大脱走
2003/05/25 23:35
津和野藩士たちと姫.深雪の脱出不可能と思われる山頂からの脱出劇
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井伊直弼が津和野藩の姫・深雪を見初めるが,側室に迎えたい,との要求を拒絶される.直弼とその懐刀長野主膳は,津和野藩士と深雪を幕府への謀叛の疑いありとして,とらえ,三浦半島の突端の峻険な山に幽閉する.一カ月後に,受け入れる返事がなければ,藩士達を全員殺す,という.四方が絶壁という山の頂上で,大勢の彦根兵に囲まれて絶対に脱出不可能と思われる場所からの脱出方法は,…
まったく無茶苦茶な設定であるが,井伊直弼と長野主膳なら,ありうるかもしれない,と思わせる.
進む工作と迫ってくる時間,ひねり出される数々のアイデア.面白い.また,緊迫とユーモアのバランスがいい.主人公は桜庭敬吾というところか.頭脳明晰,冷静沈着,でもどこか抜けているところがある感じで頼もしい人物.そして,こわもての鮫島宗十郎と家老の憎めない塩入清乃進.そして,必死に工作をする黒鍬の者たち.敵方は井伊直弼の存在感が今一つであるが,長野主膳の切れぶりとそれとは対照的な犬塚外記の暖かさがいい.
姫の気持ちがわからないのだが,最後にそれは明かされる.なるほど,というところ.もっともそのために死んだ何人かはあまりに,ということも言えるが.
![遠き雪嶺 Nanda Kot](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02229981_1.jpg)
遠き雪嶺 Nanda Kot
2002/12/01 21:47
昭和11年の立教大学山岳部による日本初のヒマラヤ遠征を詳細に描く
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日本初のヒマラヤ遠征は昭和11年に,立教大学山岳部によって行われた。対象はナンダ・コート。標高6,680mである。6,000m代とは言っても,この時期,8,000m峰はまだ一つも登られていない。技術的にも困難を究めた登山であったはずである。その登山を,計画の前段階から克明に追った記録である。もちろん,著者はあとがきでフィクションであると断っているが,それはあくまで,事実として記録されていない部分を著者の想像によって補ったという意味であると解釈したい。それほどまでに,事実としての重みを感じさせる,詳細なまじめな小説となっている。逆に言えば,ドラマと言える部分が少なく淡々と物語は進んでいくとも言えるのだが,なんとしても事実の重みは大きい。
物語は,立教大学山岳部が大正11年にできてから,日本の山をどのように登ってきたかの説明から入っている。立教大学の場合,後発で,人数が少ないことから,効率的に登るためにガイドを雇ったり,あるいは,初登頂を目指すためには,アプローチの長い後立山を狙うしかないため,途中でキャンプをしていく方式を,ヒマラヤを意識したわけではなく,自然に採用した。これが,後のヒマラヤを登る際のトレーニングになったということが言えるようだ。そして,ほどなく,日本の初登頂ルートは登りつくされ,ヒマラヤを狙うようになる。
そして,狙う山の選定から,資金集め。結果的にちょうどいい難しさの山を選択したことになる。資金集めの困難さは通常でも大変なものだろうと思われるが,昭和11年という時期はいかにも,時代が許す,すれすれという線で,困難を極めたのだろう。このあたりの記述も詳細である。
次に荷造りから,船での移動,そして,キャラバン。ベースキャンプ設営まででこの本の約2/3になる。実際の遠征活動そのものの大変さも,このボリュームに比例するのであろうか。以後の登山活動そのものは,わりと順調に推移したようであるが,もちろん,一回のアタックで簡単に登れるものでもない。天候という運にも大きく左右されるのだ。
繰り返しになるが,多少の人間ドラマを含んではいるが,むしろ,克明で,かつ大部な登山記録と言った方が近い。それでも,その事実の重みが一気に読ませるだけの面白さを与えている。
![天空への回廊](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02148525_1.jpg)
天空への回廊
2002/04/07 22:37
真冬のエベレスト山頂付近,日本人登山者の闘い
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日本人の超一流登山家,真木郷司(まきさとし)が主人公。その郷司がエベレストの冬季・単独・無酸素登頂を達成した頂上から物語は始まる。そして,降り始めてしばらくたつと,頂上付近でのものすごい轟音。そして雪崩。なにものかの衝突である。それは何か。冷戦時代の異物というにはあまりにもすさまじい代物。同じ頃,頂上付近を登っていたアメリカ隊の救出もかねて,郷司たちは,この落下したなにものかの回収作戦を始める。絶望的な状況の中で,アメリカ隊に参加していた郷司の友人のフランス人はどうなったか(このあたり設定に多少疑問)。
その友人の妹と郷司は互いに思う存在である。このあたりはまだ全体の1/100程度の話。
落下物の意味などの現実性には多少無理があるという感もあるが,そのあたりの無理は吹き飛ばしてしまうパワーがあり,すさまじい物語である。極限状況の中,壮絶な苦闘を強いられながら,それに打ち勝っていく郷司。
二転,三転していくドラマも息をつかせぬ面白さ。最後もまたすさまじい。すごい,と思ったら,どんでん返し。と思ったら,またまた…と何度も楽しめる。
多くの登場人物たちも皆魅力的。アメリカ隊の隊長クリフ,不思議な医師シャヒーン,悪役のウィルフォードもどこか憎めないところがある。飛行機操縦の達人タルコフスキーも面白い。アメリカ合衆国大統領の描き方も人間的で好感がもてる。
![愚か者死すべし](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02488182_1.jpg)
愚か者死すべし
2004/12/13 01:56
ハードボイルドとはこれだ.複雑に絡み合った事件を探偵,沢崎が解決していく
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10年ぶりに帰ってきた沢崎.探偵としての守るべき倫理や,ハードボイルドの調子は変わらないが,鋭さを増した.複雑な問題をつぎつぎと解きほぐしていく.感に頼るのではなく,論理にしたがってである.
きっかけは,ある男が新宿署に自首し,その娘が,探偵事務所に訪ねてきたこと.自首はあきからに,身代わりだったが,沢崎が新宿署に行くと,その身代わりが撃たれる事件が発生.一方,真犯人は潜ったままでてこない.3つの事件が複雑に絡み合って紛らわせるが,沢崎はそれを一つ一つ解決していく.
以前のシリーズよりスケールが大きくなり,かつ,非常に読みやすくなった.老人の歴史のストーリもなにかありそうなもので面白い.もっとも,真の問題の在り処はちょっと,実際にはありそうもないものと思えるが,結局,うまく隠される,ということか.
![基本死活虎の巻](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02468608_1.jpg)
基本死活虎の巻
2004/11/21 23:34
隅と辺の基本死活パターン145.
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隅と辺の基本パターンの死活,145パターンを問題と回答の形で集めている.表ページに基本型1図,裏ページに回答の各種変化図4つというスタイル.
問題数と約1級の私の回答数を章毎に示すと以下のとおり.
正解 誤り 全体
第1章 隅の死活 41 66 107
第2章 辺の死活 23 15 38
64 81 145
基本死活辞典を何度も読んでいるわりには回答率が低く情けない.まだまだ身についていないようである.同じような問題が連続してでてくるのはいいのだけれど,全体が体系的に提示されているわけではないので,とりとめのない感じを受け,かつ,これをそのまま覚えていくのは無理な感じ.基本死活辞典で覚える努力をして,この本でテストをする,という使い方が推奨か.
![三億を護れ!](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02432849_1.jpg)
三億を護れ!
2004/04/25 17:15
ばかなセールスマンが3億円の宝くじに当たったら
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主人公は河内雄三,42歳.教材販売会社のセールスマン.妻と娘が一人いるが,ダメセールスマンで生活は苦しい.そんな河内が年末ジャンボを当てて,3億円を得る.そこから,親戚やら近所の人々から金を貸してくれという依頼の殺到,さらに,保険,銀行,寄付といろいろな勧誘,… それだけでなく,詐欺師集団の狙いが….ノータリンの主人公を見かねて,詐欺師から護ろうとする,会社の後輩とその友人の記者たちによる壮絶なバトルが始まる.まさに,記者の目指す記事,『三億に群がるハイエナ達.ジャパニーズドリームの天国と地獄』だ.
ありそうで,なさそうな宝くじ3億円当たり後という状況設定.誰もがなんとなく想像していながらまったく縁のない世界.まさにそんな絶妙な状況を極端なまでに追及して,描いている.ただし,期待するハードボイルド的な状況ではなく,むしろ喜劇.笑うに笑えない情けない主人公と状況であるが,まさに,そこにこの物語に惹きつけられていく面白さがある.あほ,そんなわけないだろ,とついつい肩入れしながら,読んでいくのである.
もし当たったら,何に使おうか,などとは誰もが考えると思うが,誰に教えていいか,については,たしかに難しい.私など,もし,そんなことになったら,家族も含めて,絶対に秘密にしておく,ということを考えてしまうが,きっとそんなことは許されないのだろう.銀行の内部から洩れることはおそらく間違いない.宝くじに当たった後っていうのもけっこう難しいことなのだ.
![卑劣 ドキュメントノベル生保](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02408545_1.jpg)
卑劣 ドキュメントノベル生保
2004/03/14 23:16
生保の企画課長代理,生保の秘密との闘い
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経済に関連する小説は期待を裏切られることがほとんどだが,これはまったく逆の意味で期待を裏切られた.面白い.経済の秘密についても,小説としても一級.
日本一の生保が舞台.主人公の木村がロンドンから本社の企画部企画課の課長代理として転勤してきたところから始まるが,事件はその2年前.前任者でかつ,社宅の同じ部屋に住んでいた中田が不審な死をとげ,また,家族もまた,行方不明になっていたのだ.社宅の監視体制が不気味である.
そして,生保の秘密がズバリ明かされていく.うすうす感じられていることとは言え,ここまでハッキリ書かれるとショック.ズバリ「談合」である.要するに,死亡率,予定率,事業費率の3つをすべて最大手が計算し,各社はそれにしたがっているという.その手口が詳細に説明される.死亡率を実際より高く設定し,運用の予定利率を低めに設定し,それだけで益がでるはずであるが,自分たちの事業費率まで談合しているとは.無茶苦茶である.小説仕立てで書かれているが,おそらくほとんど事実であろう.著者に対する圧力はないのだろうか.
さらに,CMを繰り返している外資系生保だが,あれだけCM費用を使っているのだから,簡単に考えて,それほど安いはずがないのであるが,これもズバリ「国内系生保」と同じく,ぼったくりの類と断じている.それもまたきっと正しいのだろう.
妻までが精神をおかしくして,追い詰められたエリート主人公がどういう行動を取るかが見物だが,期待通り.地球は>という昔の先生からの教えを思い出して,….
誤植:P.79/殺人→役人
![幻夜](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02404045_1.jpg)
幻夜
2004/02/15 17:33
美と知を武器とした悪の女性がのし上がっていく物語
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1905年,阪神大震災の前夜から物語は始まる.自殺した父親の通夜を終えた雅也に,生命保険金を目当てに,借金の返却を求める叔父がいる.そして,地震.崩れさった工場の中に叔父が死んだと思った雅也だが,その叔父が動きだしたのを見て,瞬間的に,近くにあった瓦を振りおろし,殺してしまう.そして,それを見ていた女性がいた.その女性,美冬は雅也を攻めることなく,雅也とともに生きていくことを選択する.美冬もまた,この震災で,両親を失ったのだ.
以後,二人は東京へでてきて,新しい生活を始める.そして,美冬は,雅也の金属加工の腕などを使い,雅也を影の存在として自由に使いながら,のし上がっていく.雅也には,工場の近くの定食屋の娘というぴったりした女性が現れるにもかかわらず,美冬との夜を信じて,彼女のために,事をなしていく.
一途なまでの雅也の思いは,愛というようなものとは違う.自分の秘密を握られていることの弱みでも無論違う.決めたことは守る,という男のロマンとしか考えられないのだが,…
そして美冬は,自分の美しさと知恵を駆使しつつ,のし上がるり,そして,自分の過去に近づこうとする者を排除していく.雅也に見られる多少のゆらぎもまったくない.ただひたすらである.本来なら,破綻しかない物語のはずだが,著者は,またしても,衝撃のラストを用意している.この二人の主人公ならば,このラストも納得するしかないところか.本作の前作とされる『白夜行』も,その主人公の女性も好きになれなかったが,本作自身も,この主人公もどこか,超越したところが感じられる.
![楊家将 下](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02390709_1.jpg)
楊家将 下
2004/01/18 21:33
宋の始めを支える楊一族の熱き闘い
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時は900年代末,宋代の始め.先帝から引き継いだ燕雲十六州(今の北京など)の遼からの奪還の夢を悲願とする宋の皇帝.その夢の実現はかなり無理なことだと知りながら,軍人であることに徹し,その尖兵として生きようとする楊一族の闘いを描く.
皇帝も先帝の息子(甥)も優秀でありながら,武官と文官のせめぎあいを必然とみて,放置し,このことが,敗戦への一つの原因につながる.国をどう富ませるべきかの理想を知りながら,男のロマン,先帝の夢を実現しなければ,国の基本が成り立たないとの思いはわかる.理想よりも夢を追うという,帝が真の男であったことに悲劇の真の原因があるのか.その夢に殉じる楊一族が雄々しく,悲しい.
ただ一人,違う思いを抱き,また,敵の女性にほのかな思いを抱く四郎が面白い.その四郎はいったいどうなったのか,興味深い.