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紙の本
家計簿の中の昭和 (文春文庫)
著者 澤地 久枝 (著)
何十年もの間、著者は毎日の金銭の出入りを記録し続けてきた。旧満州からの引揚げの決算、戦後初めてかけたパーマ代、安保の年の結婚費用、向田邦子と旅した世界旅行の代金、石油危機...
家計簿の中の昭和 (文春文庫)
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商品説明
何十年もの間、著者は毎日の金銭の出入りを記録し続けてきた。旧満州からの引揚げの決算、戦後初めてかけたパーマ代、安保の年の結婚費用、向田邦子と旅した世界旅行の代金、石油危機の買溜め品、そして終の棲家の建築費—。家計簿の中の数字を通して、昭和という時代を生き生きと描く珠玉のエッセイ集。【「BOOK」データベースの商品解説】
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切実なお金の話
2016/02/23 20:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩漬屋稼業 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が自らの家計簿をもとにして、その来し方を振り返る一冊。
家計簿というリアルなお金の話だけに、人生を暮らしていくことの重さを伝えて、しみじみと打たれるものがある。
著者は四歳の時に一家で満州へ移住。
しかし敗戦、引揚で全てを失う。
帰れといわれても、帰る故郷もない。
国策に翻弄されて棄民。
帰って来た東京は焼け野原。
暮らしは立たず、著者の父は沖縄へ出稼ぎに。そして彼の地で亡くなる。
長女の著者は家計を支えるべく十九歳から働き始める。
つましい遣り繰りの断片が記されている。
その生き方の、なんというか、真率さと、それをどこかはにかむような哀しさが胸にふつふつと迫る。
著者は『滄海よ眠れ』執筆時にスタッフの人件費や調査費用に五千万を費やしたという。
その費用をどう工面したのか。
貧しい家計を支える中で、貯金し、土地を二箇所購入、ファンドや国債も買ったという。
バブルの恩恵もあるが、その土地やファンドの売却資金を費用に充てたという。
また心臓を患って失業すると、実家の二階をアパートに改装し家賃収入を得たのだそうな。
この生活設計力!
ただつましく貯金していただけなのかといえば、さにあらず。
自分の“財布が大きくなる”のに合わせた出費で、上手に大胆に高額な品を買ってもいる。
こういったお金の遣い方はどうやって身につくものなのか?
あまりお金のことばかりいうと、品のない話に思われるかもしれない。
しかし資本制下で生きる身の上にとってはお金は生活とも、人生とも切り離せないものなのだ。
お金をどうするのか、それが人生ですらある。
戦後、難民として焼け野原にあり、病弱でありながら家計を支えなければならなかった著者にとって、お金をどうするかということは真に切迫したものであったに違いない。
そして移住した満州国の消滅という経験は、ペーパーマネーへの根底的な不信を著者にもたらしたのでは、と評者は推測する。
お金を大胆に遣えるのは芯からペーパーマネーに縛られていないからだろう。
お金は価値を入手する手段であって、お金自体には価値がない。
そういうことかもしれない。
だからよく遣い、よく運用すべき、なのだ。