紙の本
「古本屋的人生」とでも云うべきものへの憧憬
2022/05/07 02:24
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投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
古本屋(人、店)を描いた本を読むのが好きです。もちろん現実には甘っちょろい営みではないでしょうが、小商いの面白さ、自由人的生活、人と人との連帯感などなど、自分ができなかったもうひとつの人生をそこに感じるからなんだろうなという感慨をおぼえつつ一気に読了。久し振りに別時間(別次元)に入り込めた一書でした。
「古本徳を積むためには、ちゃんとした硬い本も買っておかないと、チャンスが回ってこないような気がするんですよ。変なのばっか買ってたら、古本の神さまが当たりをまわしてくれない気がします。だから、今日も市場でいっぱい人文書を買いました」(62頁、同旨69頁)
「ある時期、古本の持つ意味って何だろうなと考えたときがあったんですよ。それは、永井荷風の『墨東綺譚』(使用不可文字がありサンズイ省略)を昭和12年版で読んだとき、タイムスリップをするような感じであの世界に入っていけたんです。テキストを読むということは、元の版で読むのと、文庫で読むのと、電子書籍で読むのとでは全然違う経験なんじゃないかと思ったときに、古本屋ってのはなくならないなと思ったんですね」(196頁)
「古本の世界というのは、専門書になればなるほど、骨董品の世界に近づく。つまり、真贋を見抜く知識と目が必要になる。」(217頁)
「綺麗な装丁であることによって捨てられずに済んで、生きながらえてきた本がある。その本がもう一度日の目を見るように繋いでいくのが、私の役目なんだと思います」(228~9頁)
「今はもう、市場で買いたいから仕事してるみたいになってきてますね。そのためには本を売らないと」(303頁)
読んでみて、面白かったのは岡島書店の章で、考えさせられたのは北澤書店の章、行きたい(買いたい)と思ったのは古書みすみの章ですね。なお、巻頭のカラー写真は、価格の上乗せ要因かとは思われるが、内容の理解とイメージ形成に大いに役立ってよかった。にしても、ビジュアル的に映える古書みすみの店主 深澤実咲さんが写っているカットが多い(全部で6葉あり)というのは単なる偶然なのか(笑)。なお、著者の文章のクセなのか、日本語として脈絡がよく理解できなかった(すんなり頭に入ってこなかった)箇所が結構あったことを付言しておきます。
紙の本
自然体な取材スタイル!
2022/02/27 19:31
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し前に「ドライブイン探訪」を読んで、自然体な取材スタイルや文体が好きなライターです。本作はそれぞれの古本屋に3日間滞在した記録ですが、本の深い話でもなく、人生を語り尽くすわけでもなく、ランチの風景等も描きながら、読み手も気軽に同じ体験をしているような気持ちになれます。個人的には古本屋を利用する習慣がなかつたので、足を運んでみようと思います(毎日新聞「今週の本棚」220115)。
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東京の古本屋の仕事と営む店主たちの姿を記録したルポルタージュ。
古書 往来座 盛林堂書房 丸三文庫 BOOKS青いカバ
休業中の古書 往来座 古書ビビビ 岡島書店
コクテイル書房 北澤書店 古書みすみ
休業中の古書みすみ 古本トロワ 休業中に再度取材した店も。
カラー写真口絵16ページ。本文中にモノクロ写真。登場一覧有り。
東京都内の各地の10の古本屋の姿と店主たちの仕事、生活を
一店舗に3日間取材、日記のように記録した、内容です。
古本屋といっても、形態は様々。
店内での販売だけという店は希少なのかもしれない。
ネット販売にネットオークション。新刊書も扱う店もある。
古書の組合に未加入や店内に居酒屋併設の店も。
2,3代目も居れば、若手が頑張る店もある。
2019年の年末から始まったルポは、読んだ著者の2作同様に、
相手の都合を鑑みての丁寧なインタビューと取材で、語られる。
戦前戦後、昨今の古本屋の有り様、加えて、街や人の変化に
ついても語られることもある。スーパーマーケットで古本を
売ってたのはこの店主さんだったか~という、発見も。
「古本」の市場への同行取材、共に食事や呑み等で見え、
語られる仕事は多彩で、思っていた以上に多忙です。
さり気なく、お客の動向に注意を払い、こまめに本の入れ替え。
いや~大変な仕事だなぁと読み進めていたら・・・。
2020年、新型コロナウイルス感染症の流行で、急転!
緊急事態宣言、行動自粛、営業の制限と休業。
都が休止を要請する施設に「古本屋」が含まれていたから。
延長にあたっての混迷も・・・営業再開か?休業継続か?
最後は2021年7月23日東京オリンピック開会式の日の、ルポ。
読んでいる自分にも感じられた、今までの日常とは違う毎日。
それでも、古本で繋がる、古本屋の人々、客。近所の人々。
それらが店を、人を成長させていく様子がよくわかりました。
『街のあそこには古本屋がある』・・・ありがたいことに、
うちの近所にも古本屋があります。
・・・あ、店主さんが本文にちょっと登場~(^^♪
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開発、オリンピック、感染症──揺れ動く東京で、商いを続ける10軒に3日ずつ密着取材を敢行した。古本屋に流れる時間から、東京の姿が立ち上がる。
立ち寄ったことがあるのは一軒のみだが、それぞれの店主さんの生活が垣間見られるのが貴重な一冊であった。
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今の自分の生活とは全然違うディープな古本の世界が垣間見れて面白かった。それぞれの古本屋店主の個性も際立っており、魅力的。
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街の普通の本屋でさえ大変な現代では、古本屋
はさらに厳しい経営状況なのではないかと思っ
てしまいます。
しかしそんな悲壮感もなく「本のプロ」として
の日常を追ったノンフィクションです。
今やブックオフのような新古書店とは完全に市
場を棲み分けているのが伺えます。
知る人ぞ知る古書を扱う姿には、日本の文化を
支えていると言ってもいいです。
古書店の店主たちが生き生きと描かれています。
「本への愛」に満ちた一冊です。
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日常の中にあったコロナの記録としても読める。でも、当たり前の人たちの生き方が並ぶ。ほっとする。立ち止まって自分を振り返る。
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神田神保町界隈で10年くらい勤務していたので、書店・古本屋は日常見かける身近なものだった。が、新刊書店にはよく行ったが、神保町界隈の古本屋に足を運ぶことはほとんどなかった。
今でも、古本屋を利用しないわけではない。
ひとつはブックオフ。たまった書籍を売る(というよりは引き取ってもらう)ために、何か月かに1回行き、そこで古本や中古のCDを買ったりすることもある。私の自宅の近くのブックオフは2F建てになっている。CDやゲームやDVD等も置いているが、それでも蔵書数は相当のものがある。
もうひとつは、もう少し利用頻度が高い。古本のネット販売だ。読みたい本をみつけるのは、このブグログだったり、新聞の書評だったり、新刊書店の店頭だったり色々だ。それを書店の店頭で買ったり、図書館で借りたりもするが、ネット販売、特にアマゾンを利用することが多い。実際、とても便利だし、新刊を買うのに比べて安いし、よほど珍しい本でなければ複数の出品者があり、状態の良い本を選んだりすることもできる。
言っていることは、リアルな昔ながらの古本屋に足を運ぶ機会はまれになったが、ブックオフやネット通販で古本屋を利用する機会は実際には割合とある、ということだ。
本書は、著者が東京都内のリアルの昔ながらの古本屋を1カ所につき3日間居ついて、古本屋の様子を記録したものである。2019年の暮れから始まり、2021年の7月までで終わっている。ちょうど新型コロナ感染症拡大の直前から始まり、感染の渦中から東京オリンピック近くまでの記録になっている。
私の古本屋体験を上記したが、本書を読む前に興味を感じていたのは、リアルの昔ながらの古本屋の経営がどのように成り立っているのだろうか、ということだった。書名が分かっている古本であればアマゾンで簡単に買える。近くのブックオフにいけば、専門書は別にして、多くの蔵書を抱えていてその中から古本を選ぶことが出来る。そういった中で、古本屋の工夫はどこにあるのだろうか、ということが興味だった。
本書を読んで、それは分かったような分からなかったような、そんな感じだ。
古書店ごとに、あるいは、古書店主ごとに工夫を重ねている、ある考え方を持って、古本屋を経営している、ということは分かった。が、それがどの程度成功しているのか、等については、3日間の観察では分からないということなのだろう。
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東京の古本屋10軒のレポート。2019年からの2年間、ちょうどコロナの嵐に突入した頃。休業要請の出た緊急事態宣言を受け止める店主たち。2だいめ、3代目の店あり、そこで修行して開店した者あり、実店舗を持たない者あり。この困難な時をリアルに伝えている。
皆、本が好きなんだなぁ。緊急事態宣言では、古書店は新刊本書店より趣味的なものなので、休業要請の対象だったよなぁ。なんで古書店の方が趣味的なのか理解できなかったけど。
はからずも、コロナ禍の貴重な記録になっている。
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コロナ禍・緊急事態宣言(TOKYO2020)の東京の古本屋さん10軒の風景。
それぞれに異なる時間が流れ、拘りと楽しく(?)生きる古書店主さん達。
読んでる自分も良い時間を過ごすことが出来ました。1軒1軒を訪れてみたい。
・古書往来座
・盛林堂書房
・丸三文庫
・BOOKS青いカバ
・古書ビビビ
・岡島書店
・コクテイル書房
・北澤書店
・古書みすみ
・古本トロワ
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これを読んだから何がどうというわけでもないのだけれどこういう本をたまには読んでおきたいよね
必要に迫れれてとか興味に駆られて以外でも漢方のようなじんわり効くような本を
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図書館で見つけてすぐ借りて読んだ本。東京の各所で古本屋を営む人たちのドキュメンタリー的な構成だったのだが、普段、古本はほとんどブックオフばっかりで、この本に出てくるようなところはあまり行ったことがなかったから、つまるところ、生活って?とか商売は成り立っているのかなというより儲かるのかな?という部分で言うと、なるほど楽しそうだし、やりようによっては儲からないまでもきちんと食べて行くことはできそうなんだなと思えた。
自分なんかは、まぁ、やっぱりブックオフに行った時と比べて新刊書店に行った時の方がワクワクするし、楽しいのだが、毎日が本に囲まれた生活で、それこそ売り物を読んでいられる(まぁ、どこまで時間が取れるのか、そう言う意味ではあまり取れないようにも見えるのだが)日常を送れるなら是非そうしたいと思う部分があるから、もちろん生活との天秤だけど、古本屋をやるという選択肢は、アリだなと思わせてくれる本だった
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珍しく内容がよくわからないまま読みはじめた本
本屋に関する本を漁っていてたどりついた気がする
古本屋のコロナ戦記みたいな趣きもある
他所が安く値段つけててもうちは高くつけるとか
面白い仕事だなと思う
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コロナウイルス感染拡大以前から厳しい状況だった古本屋。コロナ禍の間、どう過ごしてきたのか。東京の10軒の古本屋を対象とした本だが、興味がわいたので読んでみた。
2019年から2021年にかけて、WEB雑誌の連載で取り上げたことがきっかけだ。著者は「これは古本屋に流れる時間の記録であり、2020年の東京の風景の記録でもある」とまえがきで書いている。
最初に古本屋と店主の写真が載っている。読み進んでいくと、それぞれの古本屋の歴史、店主の人生が見えてくる。古本屋ならではの事情も書かれている。
書籍離れが進んでいて、若い人の中には月に1冊も読まない人がいる時代。その上、コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言の影響で、古本まつりが中止になったこともある。神保町の古本まつりは残念ながら、今年も中止になってしまった。古本屋はこれからどうなっていくのか、本好きとしては非常に気になる。
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古着を〈ユーズド〉〈ヴィンテージ〉という呼称もすっかり定着し、今やオシャレ感さえ放つ。山本夏彦氏のコラムにあった『タイトルだけが人生だ』という言葉を思い出す。人に何かを売りつけるのに大事なのは〈タイトル〉。家具の丸井(現マルイ)はその代表格。『クレジット』と称して大成功を収めた。それまでは『月賦屋』と蔑まれていたのに、それがどうだクレジットと名乗ったばかりに月賦屋からデパートにまで間違えられるようになった。
はたして古本屋が古着屋やマルイのように、はたまたおっさんの溜まり場サウナが〈サ道〉〈整う〉のフレーズをまとうや突如として若い人がこぞって足を運ぶ…。そんなふうにはならないものか、いや、やりようによってはなるんではと思い巡らしながらページを繰った。
昨今、街場から書店が姿を消す中で、個性的な新刊書店が誕生している。アートブックや写真集に専門書を集めた独創的な棚づくり。この兆しが古本屋にも及ばないかなぁ…と思う。僕の周辺には、いまだ古色蒼然たる佇まいを放つ古本屋が多いだけに。
本書は、古本屋好き・古本好きの買い手側からではなく、古本屋経営及び経営者に視線を向ける。そう、『職業として選んだ古本屋』にフォーカスする。
そこで、著者は店主の元に3日間通い、雑用も買って出て、日記形式で〈古本屋の今〉を綴る。例えば、コクテイル書房店主が『古本の仕事って地味に面白いんです。もう、触ってるだけで面白いんですよ』と語る言葉を導き出す。さながらNHK〈ドキュメント72時間〉を観てるようで、著者は古本屋のリアルな世界を丹念に描き、こちらにもその『地味な面白さ』さがやんわりと伝わってくる。
著者は密着3日間にもうひとつテーマを潜ませる。
それは56年ぶりに開催されるオリンピックに浮き立つ東京の風景。ただ、その目論みは早々に打ち砕かれる。新型コロナウイルスによるパンデミック。古本屋も緊急事態宣言の休業要請の対象となり、著者は嘆息する。『東京の古本屋』と銘打つもわずか取材できたのが10店では…。
僕自身、これまで古書の世界に触れたのはわずか。『下鴨納涼古本市』や『さんちか古書大即売会』をのぞくぐらいで、ブックオフを除きリアル古書店に足を踏み入れたのは数える程度。
本書を読み、これまで抱いていた敷居の高さや居心地の悪さが和らぎ、古本屋が身近に感じたことは言うまでもなく、その一方でますますネット購入や電子書籍との距離ができたなぁ…と実感とともに、ふふふと苦笑いが漏れた一冊。