電子書籍
かなり深い考察がされています!
2021/02/24 19:35
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投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
監視社会というとなんだか恐ろしいイメージしかなかったのですが、中国の現在の状況を知り、それは一面的な見方なのだなあと思いました。監視社会の正の面と負の面、色々ありますが、民衆はその便利さを享受する反面、知らないうちに情報統制の渦に巻き込まれている。国家による監視だけでなく、社会の中の相互監視も。中国はなかなかうまいシステムを考えたものだと思います。日本はまだまだですが、AIやコンピュータですべてを管理する社会になれば同様の未来が待っているのでしょか?このまま科学が進めば、間違いなく監視システムのブラックボックス化が進む以上、私たちはただその流れに身を任せるしかないのかなあと感じました。本書の中盤以降はかなり難解な話でしたが、それぐらい監視社会というのは奥深いテーマなのだなと思いました。
紙の本
着眼点がおもしろい
2019/12/21 21:49
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国社会のすさまじいIT化。スマホ決済、ネットワークの監視。そこで集められたビッグデータをどこが管理しているのか、実際にどんな運用をされているのか?日本とどこが違うのか?中国社会の特徴を歴史的に見て、日本やヨーロッパ社会と冷静に比較。中国に興味ある人やIT社会の未来に興味がある人は必読。
紙の本
皮肉か、近未来の実現か
2019/10/21 15:42
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
最大多数の最大幸福のための手段は道具的合理性の暴走を許さないか。急速な技術の進歩による独裁化の可能性と生活の向上に潜む画一化の危機を監視社会化を肯定する功利主義で割り切ることができるのか。情報提供のメリットと監視社会化を通して中国の監視社会を如何に捉えるかを考えさせられる書。
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中国における技術の発展とプライバシーについては、「独裁」「社会主義」がもたらしたものだという見方で語られることが多い。
本書ではそういった視点からは距離を置き、今日の発展は決して独裁による強制的なものではないことを示す。
一方で独裁政権による歪についても語られ、あくまでフラットに物事を捉えようというポリシーを感じる。
ジョージ・オーウェルやハクスリーの著作を引用した比喩はイメージをつかむのに一役買ってくれた。
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世界で最もデジタルテクノロジーのトライ&エラーを高速で繰り返し、それを経済成長の根底に据えることに成功している中国。昨今の”中国イノベーション論”に代表されるように、日本を始めとする先進国は中国に学ぶべき、という一面的な論説も多々見かけるようになってきた。
一方で視線を大都市からウイグルに向ければ、そこには中国共産党による政治弾圧が行われ、デジタルテクノロジーが弾圧を容易にしているという暗部があるのも事実である。そしてその暗部は徐々に香港へと向けられようとしている。
こうした二面性のある中国をどのように理解すればよいのか。本書では中国を長年研究してきた経済学者と、中国で今起こっているデジタルテクノロジーの動向に精通したジャーナリストの共著という形で、極めてバランス感に溢れた中国の実態を描き出すことに成功している。
本書では、中国における民主主義の意味合いとして、西欧社会で主に用いられる”政治的権利の平等”よりも、”経済的平等”の二種類が存在することが提示される。その上で、後者においては儒教的価値観から、強く正しい権力者に対してパターナリスティックな庇護を民衆が要請することが常であり、現在の中国の監視カメラやパーソナルデータの流通は、そうした観点から民衆にとって合理的なものとして映っているとされる。タイトルの「幸福な監視社会」とは、まさにそうした姿を明示している。
政治・経済の歴史を踏まえて、現代の中国のデジタルテクノロジーの実態を理解できる一冊として、非常に面白く有益。
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「こういう本は今の日本では売れないだろうなぁ・・」と「こういう本が出版される間はまだ大丈夫かなぁ・・・」というのが、本書を読み進める時に感じた最初の感想だった。
世の中に数多ある中国すげー本でもなければ、中国はもうすぐ破滅する的な本とも違う、中国で現在進行形の事象と、その現象を進めることが可能になる(ルールや主体ではない)原理を読み解こうという本書は決して多くのターゲットに刺さるものではないだろう。著者の一人である高口さんが担当されている部分では中国の最新事例を楽しむ読む人間はそれなりにいるだろうが、そういった人たちが梶谷先生の部分を噛み締めて読むというのは、あまり想像が出来ない。
難しいし、目の前のビジネスにはあまり関係がないからだ。
しかしながら、中国の為政者・・・というか、法的な対応を検討したり、政策を立案したりする国家と党のエリート層は、必ずこういった思想的な議論を行なっているであろうと、僕は確信している。権力という意味においてエリートである彼らは、同時に知的なエリートであり、どのようにして中国という国家を舵取りすべきかということに対して、常に高度な論理性と世界中の過去から学んだエッセンスを適用しているはずなのだ。こんな難しいこと考えているわけないよ・・・ともし感じるのであれば、あるいは日本の政治を見てそう思うのであれば、それは自らの劣った基準で物事を理解しようとしているからに他ならない。
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キャッシュレスが進んでいるとか、監視カメラがすごいとか、アネクドータルにはいろいろ聞く中国で進行する「監視国家」化の実像(もともとギグエコノミー的な働き方の人が多かったとか、意外とソフトな形をとる検閲とか)をわかりやすく伝える。それだけではなく、その動きをマクロな歴史や社会観の中に位置づけようとするなかなか野心的な新書。功利主義だなんて言葉、高校生の頃に倫理の授業で勉強して以来かも。中国で起きていることが他の国々とも無縁ではないことを語る一方で、中国の独自性も整理してくれる。
あとウイグルのケースは正真正銘のディストピアで、その危険性は無視できない。
ふとした思いつき。。。。
見ようによっては、現代の都市における非常に匿名性の高い生活のほうが逆に歴史的には例外の時期であって、「監視国家」は規模こそ違えムラ社会のころの生活の先祖返り的な側面もあるのでは?
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引用で興味を惹かれた本:
「1984」オーウェル・ジョージ
「すばらしい新世界」ハクスリー・オルダス
「ホモデウス」 ユヴァル・ノア・ハラリ
「セレモニー」王力雄
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中国出張を前に、存在を知り購入。
前半の様々なサービスに関する話が、個人的にかなり興味をそそられた。中国の方も、プライバシーは保護されて欲しいと思っている、その上で利便性を享受したいという考えを持っているという点は、とかくプライバシーが無いといった言われ方をする中国に関して新たな視点を得られたと思う。
後半は少々難しく感じたのが正直なところ。
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「監視社会」をめぐる対立
・「現時点における気持ちの悪さ」⇔「将来における気持ち悪さの消滅(=慣れ)」
・後者にしても、一定の時間や手続きといったものが必要だという事実と矛盾はしない
・「幸福な監視国家(社会)」の本質は、「最大多数の最大幸福」の実現のため、その手段として人々の監視を行う国家(社会)、ということになる。
・伝統中国:「公論としての法」、「徳」による社会秩序の形成
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以前、中国に行ったとき、空港からホテルに向かったタクシーの中に財布を忘れてしまったことがあった。ホテルの人に伝えたところ、すぐにビデオをチェックすると言って確認をしてもらった。結局夜なのでナンバーが見えなかったということだったのだけれども。その後、警察に行ったとき、当たり前のようにテレビのモニタで空港の様子を見て探そうとしていた。結局、見つからなかったが、ビデオで見られているということが全く当然のことと認知されていることに少し驚いた。
この本で書かれているように、現実世界では監視カメラやWeChat payやAlipayなどのスーパーアプリを通して行動を把握され、もちろんインターネットでもその行動が監視されている中国社会において、中国人はそのことに不満を抱いていないということなのである。国際的なアンケートによると、自国の進んでいる方向が正しい方向に向かっているかという質問に対して中国は94%がYESと答え、平均の58%を大きく上回り、またテクノロジーを信用するかどうかという質問に対して91%が信頼する(日本は66%)と答えている。「幸福な監視社国家」においては、人による監視社会よりもAIなどのテクノロジーによる管理社会の方が公平で望ましいと考えているのかもしれない。典型的な例を挙げると、芝麻信用の個人信用スコアが広く使われるようになることで、結果的に自発的に行儀のよい行動をするようになっているという。そして、それは情報を取られてはいるが、悪いことではないと考えつつあるのだ。
ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー『ホモ・デウス』において、「人間至上主義」の世界が終わり、「データ至上主義」の世界が始まるのかもしれないと告げた。今の中国が進む道は奇妙にそのイメージに沿っている。ユヴァル・ノア・ハラリも、「データ至上主義」を語るときに、米国よりも中国をこそ想定していたとしても、それほどおかしい話ではない。これまでは情報を管理する上で分散機構が優位に働き、共産主義圏に対して自由主義圏が経済上圧倒的な勝利を収めることになったのだが、IT技術の進展によって情報の集中管理が分散管理に対して優位に立つことになり、独裁的集権国家(独裁者は人ではなく、AIによる判断であってもよい)に分がよくなりつつあるのかもしれない。
「「監視社会」をめぐる対立は、じつは「現時点における気持ちの悪さ」を強調する立場と、将来における気持ちの悪さの消滅(=慣れ)」の蓋然性の高さを強調する立場との対立として理解できるのかもしれません」
と著者は言う。そして、日本では後者が勝利をしてきた、とも。果たしてそうだろうか。日本という国において、人は流されやすいが、変化することにも及び腰であるように思う。
中国と日本の違いとして、特に上海や北京などの都市部では、いまやどこでも現金は必要なく、WeChatなどのスーパーアプリだけですべて用が足りるようになっている。食事もアプリで頼んで配達してもらうことがとても当たり前になっている。それはとても便利な体験なのだ。そして、そのときわたしのデータはすべて取られているのだ。そして、さらに次の体験は向上する。
中国が将来を先取りする超先進国家な���か、自由に逆行する国家なのか、その答えはそんなに遠くない将来に出るのかもしれない。
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儒教国という特殊な環境があるとしても、功利主義を進めていけば自然に行き着く社会と思う
テロという少人数による大量殺人が容易になった社会においては、疑わしきは罰せずという原則はすでに崩れつつある
さらに功利主義者にいわせれば、殺人が疑われる人間が次の殺人を犯すリスクと、無実の人間を罰するリスクの天秤で今の法があったわけで、一人が大量に殺せるならせめて釈放はリスクが高いということになると思う
監視が進んで犯罪が減少することで逆に犯罪予備軍の人の人権が守られるとかかなり奥深い話だと思う
今後急激なテクノロジーの進化で直面する功利主義を根拠とする管理社会にどう対応していくかが大きなか課題と感じた
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中国の現状(もう、少し遅れているかもしれないが)を知るだけでなく、社会の中で、「監視」、「テクノロジー」をどう使うのか、それが、市民社会の中にどう位置づけるべきか。考えさせられる本。功利主義のための監視社会。日本には、スゴイ馴染んでしまいそうで、怖いなぁ。
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梶谷懐(1970年~/現代中国経済論を専門とする経済学者/神戸大学大学院経済学研究科教授)と、高口康太(1976年~/中国の社会、ネット事情などに精通するライター、翻訳者、リサーチャー)による共著。
私は仕事柄、何人かの中国人の友人を持っているが、彼らとの連絡にはLINEは使えず、Wechatを使用しているし、中国に出張した際に(専用のアプリがなければ)GoogleもFacebookも使えないことは経験しており、中国の情報・通信統制には以前より関心を持っていたが、今般の新型コロナウイルス感染が中国・武漢で確認された当初、街頭でTVのインタビューを受けた若い中国人女性が「中国では、人びとの行動を監視してくれているから安心だ」とコメントしていたことに改めて衝撃を受け、本書を手に取った。
本書では、冒頭で、中国においては、現実世界でもインターネット上でもすべてが政府に筒抜けであるにもかかわらず、ほとんどの中国人がそれに不満を抱いていないどころか、現状を肯定的に見ていると書かれているのだが、実は、それは必ずしも、共産党独裁によって洗脳されているという理由だけではないとして、実際に中国で起こっている監視社会の実態が明らかにされ、更に、その監視社会は、今後日本を含む民主主義の国々でも直面する問題であると警鐘を鳴らしている。
主旨は概ね以下である。
◆中国の人びとは、企業や政府に個人情報を提供し、それと引き換えに便利なサービスを得てきた。
◆統治のための様々なテクノロジー(監視カメラなど)や、社会的に望ましい行いに対する動機付けを提供する「信用スコア」システムなどの浸透により、近年の中国社会は「お行儀がよくて予測可能な社会」なりつつある。
◆現在中国では、政府や企業がビッグデータに基づいて、「このように振る舞えば幸福になりますよ」というナッジやアーキテクチャ(人間の行為を制約したりある方向へ誘導したりするようなウェブなどの構造)を提供し、その言論統制は不可視化され、多くの人びとはそれに気付かなくなり、また、一般市民が自発的に反政府的な発言を控えるような形のものに進化しつつある。
◆監視社会を受容する背景が、利便性・安全性と個人のプライバシーとのトレードオフにおいて、前者を後者より優先させるという姿勢にあるとすれば、それは「功利主義」にほかならず、中国と西欧諸国の間に明確に線を引くことはできない。
◆今後、功利主義に基づいて道徳的判断の根拠が人間によるものからAIによるものに置き換わっていくとすると、アルゴリズムによる統治(人間の支配)が進む可能性があり極めて危険である。人間による「市民社会」が、それらを監視・チェックしなくてはならない。
◆現代の監視社会について考えることは、進化を止めることなないAIなどの新しいテクノロジーを、私たちの社会においてどう使いこなすかを考えることにほかならない。テクノロジーに意味を与えるのは人間であり、社会なのである。
中国の監視社会の現状分析を通して、進化するテクノロジーに対して我々はどう向き合うべきなのかを示唆する力作と思う。
(2020年3月了)
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面白かった。
監視され、政府から抑圧される中国人は不幸に違いないというある種の思い込みに対し一石を投ずる本。
功利主義的には監視国家化は政府のためではなく、国民の幸福を求めた結果とも言える。
これを読むと、中国政府のほうが、政権維持のために公文書改ざんや定義変更を行う日本より、よっぽど国民のための政治をしているんじゃないかと感じざるを得ない。
少なくとも一貫性を持った合理的な政治をしており、今後ますます中国は巨大化していくであろうと想像できる。
中国において国内ECが隆盛したのは政府の規制によるものかと思っていたが、中国市場にマッチしたものを作り上げられたからだと考えを改められた。
中国において「モノ」より「誰から」が重要であり、モノに対する評価より「売り手」に対する評価の重要視されるとのことだった。
日本人は売り手を無条件に信用しがちだが、Amazonレビューや食べログへの不信が募ってる現状を見るに、今後はそちらに進んでいくかもしれない。
一方で、西洋的な価値観がやはり正しいのではと思う自分も捨てきれない。
損得勘定を基にした道徳観では、あらゆることをルール化しなければならなくなる。
逆説的に「ルールの範囲内なら何しても良い」こととなり、変化の早い社会に対応していけるのか疑問である。
ただ日本社会の方向性として、今後どんどん監視国家化していくと推測する。
あとを追うものとして、今後の中国の思想史・社会問題に注目し、同じ地雷を踏まないようにしていきたい。