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現代日本の司法 「司法制度改革」以降の人と制度
著者 市川 正人 (編著),大久保 史郎 (編著),斎藤 浩 (編著),渡辺 千原 (編著)
司法制度改革以降、日本の司法はどう変化したのか。各法分野における分析と新しい法曹の活動を通じて現代司法の全体像を考察する。韓国、台湾、中国など変わりつつある東アジアの司法...
現代日本の司法 「司法制度改革」以降の人と制度
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商品説明
司法制度改革以降、日本の司法はどう変化したのか。各法分野における分析と新しい法曹の活動を通じて現代司法の全体像を考察する。韓国、台湾、中国など変わりつつある東アジアの司法についても取り上げる。【「TRC MARC」の商品解説】
司法制度改革後、日本の司法はどう変化したのか、各法分野における分析と新しい法曹の活動を通じて現代司法の全体像を考察する。【商品解説】
目次
- 第1編 総論
- 第1章 「司法の立ち位置」論と日本型司法審査制 大久保史郎
- 第2章 最高裁の正統性(legitimacy) 坂田隆介
- 第2編 各法分野と司法
- 第1章 最高裁憲法判例の動向——2015年以降 市川正人
- 第2章 行政事件訴訟法改正の実証的研究——執行停止を中心に 北村和生
- 第3章 司法改革期以降の家族法判例の展開——立法府との対話の観点から 渡辺千原
- 第4章 知的財産分野における高裁判決及び最高裁判決の規範の形式 宮脇正晴
- 第5章 刑法分野の展開 松宮孝明
収録作品一覧
最高裁の憲法判例と「司法の立ち位置」論 | 大久保史郎 著 | 3−28 |
---|---|---|
「政策形成訴訟」の意義と限界 | 吉村良一 著 | 171−187 |
政策形成型訴訟における分析と根拠 | 秋葉丈志 著 | 188−207 |
著者紹介
市川 正人
- 略歴
- 〈市川正人〉立命館大学教授。
〈大久保史郎〉立命館大学名誉教授。
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最高裁判所がその先に見ている世界は何なのか?
2020/07/21 08:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「日本の最高裁判所 判決と人・制度の考察」(2015年)の続編である。前著は当時憲法裁判で注目すべき判決を出していた最高裁判所について総合的に論じた、本格的な「最高裁判所論」であった。これに対し、本著は、2001年の司法制度改革以後の法曹三者の動向を評価したもので、最高裁判所論の続編、ということではなかった。以下最高裁の動向に関連する論考を中心に読んだ。
「第1篇第1章:最高裁憲法判例の動向—2015年以降」 は前著の続編。最近の憲法裁判ではプレゼンスはやや消極的に見える。現在の最高裁判事は、7年にわたる安倍長期政権の結果として全員安倍内閣指名となった。その影響(一票較差訴訟対応?)を考え、最高裁判所裁判官の選任は重要な政治課題としたのだろうか。「第4編第4章:裁判官の選任と司法の国民的基盤」はトランプ政権による連邦最高裁判事選任を政治過程として検討したもの。2名の保守派判事を送り込んだが、当初の目論見通りとはいっていないようだ。2019年開廷期終盤、中絶する権利を認めた判例が覆されるのではされた訴訟(June Medical Services L. L. C. Et Al. v. Russo, Interim Secretary, Louisiana Department of Health and Hospitals, June 29)では、保守派ロバーツ長官の一票が判例変更を食い止めることとなった。
また、ニューヨーク連邦地検の納税記録開示請求について、大統領は在任している限り刑事捜査を受けない絶対的な特権があると主張したが、大統領には刑事捜査を絶対に受けない特権などないと判断した(Trump v. Vance, District Attorney of The County of New York, July 9)。トランプ大統領指名の2名の判事は多数意見であった。
その他性的マイノリティに対する訴訟(Bostock v. Clayton County, Georgia June 15)でも保守派判事が積極的な判断を示すなど、必ずしも保守派の思惑通りではない。選任過程が国民の目に触れることを意識し、分断された国民意識の統合という役割を果たそうとしているように思われる。
「第1編第3章:司法改革期以降の家族法判例の展開-立法府との対話の観点から」は前著「第1部第5章:第5章家族法に関する司法積極主義の意義と限界」の続編。下級審まで含めて概観すると、離婚後の単独親権と平等保護・夫のみ嫡出否認訴えの合憲性・嫡出否認訴えの出訴期間制限と幸福追求権・戸籍法の夫婦別姓と平等保護等等々家族法をめぐる憲法裁判が多く、「家族法の憲法化」という状況である。
嫡出否認違憲訴訟は、夫にしか嫡出否認が認められていないので、妻子が訴えを起こせず、無戸籍になったことを争うものであったが、原審は嫡出否認の権利を夫のみと規定することに合理性があると判断し、一方で、妻子に嫡出否認の権利を認めるかは「国会の立法裁量」に委ねられるとした。最高裁は憲法判断を示さず形式的理由で令和2年2月5日上告を棄却し合憲が確定したが、おりしも法制審議会で議論されており、議論を促すため消極的判断をすることで「立法府との対話」をしたとも考えることができる。
「第1編第5章刑法分野の展開」も前著「第1部第7章事実審査・刑法解釈と最高裁」の続編。前著では、特殊詐欺対策や暴力団排除の「反社目的」で詐欺罪が拡大活用される傾向にあることが指摘されていた。本著では、財産犯である詐欺罪が財産犯の本来の役割を離れて、「公安目的」で用いられる傾向、また、特殊詐欺事件での処罰範囲の拡張(「受け子」)・実行の着手の早期化(「だまされた振り作戦」)と拡大傾向は続いており、最高裁もその流れを追認するばかりで財産罪としての歯止めを忘れているのではないかと警鐘を鳴らしている。