紙の本
理解というより共感
2020/06/29 22:38
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投稿者:こぼうず - この投稿者のレビュー一覧を見る
絲山秋子さんご自身の双極性障害I型と向き合うエッセイ。躁状態に対して「睡眠も食事もとれないのに、普段以上に動き回ったり大きな声を出していることは不健康きわまりない行為であり、健康な状態での爽快感とはまったく違う」と、世間一般の誤解や本人の苦しみを如実に述べている。
また、絲山さん自身がそうであったことから「周囲や後輩のぶんまで仕事をしてあげるのは一見、優しいようにも見えるが、人を信用できていない場合もある。後輩などに引き継いでも、ミスが目について「結局自分でやったほうが早い」などと思ってしまい、余計な手を出してしまう。引き継がれたほうも、それではモチベーションを保てない。結果として人が育たない」という辛辣な意見は、現在の自分自身がまさにその状況であり、後輩に申し訳なく思うと共に、黙って見守ることの難しさを痛感。
紙の本
思い当たることが…
2023/11/16 07:57
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞作家の絲山秋子さんか、自身の双極性障害を冷静に分析し、作家らしい言葉で文章にした一冊。お仕事柄、双極性障害にあるときの心理状況や、その結果、何が起きているかなどなど、比喩もとてもわかりやすい。
心が弱っているときに、ぜひ読みたい本だ。
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絲山さんの作品に出てくる女性はとても潔くて魅力的な人が多いのだけど、絲山さんご自身がそんな方なんだと感じました。
障害に対する向き合い方はとても潔く、生き方も潔い。
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職場に双極性障害の人がいて怠けていると言い切って理解を示さない人に読んで欲しくて買ったのに全く読もうとしない。私の周りでもよく聞く話になってきて、聞けば聞くほど怖くなって気持ちがざわざわしていたのですが、この本を読んである程度当事者がコントロールできることを知って少し安心しました。絲山さんが特別に賢いからかもしれません。当事者やその家族はとても大変だと思いますが、私の周りの人たちも時間をかけてゆっくり快方に向かっているようです。知らない、理解ができない部外者に何ができるのか、何をしてはいけないのかをもっと深く知りたくなりました。
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“ 踊るというのは、私という存在が面白くて心地よいと表現することだ。
自分を嫌ったり、責めているときは踊れない。過剰な自意識や恥ずかしさ、自分を嫌う癖を手放し、こころの扉を開けて一歩外に出なければ踊れない。”(p.97)
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以前読んだ小説の鬱発症時の描写にとてもリアリティを感じたのが、同じ著書のこの本を読むきっかけだった。
著者は双極性障害患い発達障害の気もあるが、とても理路整然としていて感心した。別の著書もまた読みたくなった。
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生きるとは歪みを抱え込むことだ。
個性とは美しい歪みのことだ。
戦わずしてやり過ごすのが大事。
心身相関。
勝ったり負けたりの精神。
バイオリズムってのは意外とある。
書き残すことが大事。
以上のメモは不肖私のもの。
パニックアタック以来11年ほど神経との付き合い方を体験的に学んできたが、似た体験を本にしてくれている、しかも絲山秋子が!
11年前に読んでも判らなかったかもしれない、それだけ視野が狭まっていたから。
読むべきときに読むべくして出会えた嬉しい本だ。
「あけぼのソックス」安永知澄との出会いもありがたかった。
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心の病について冷静にかつ冷たくならず訥々とした筆致で描かれる有り様は、心療内科に通う人間として悲観的にも過度に膝打つ内容に成らずただ落ち着いて読めた。これは小説家だからこそ書ける抑えてかつ血の温かみを感じさせる表現力の妙とも言える内容。絲山さん自身が病を経験し、どうして?を考えながらの体験となっており、小説家としての女史の書作を感じさせる人間味とも相待って、エッセイとも学術書とも、ましてやこの類だとなりがちなよくある啓発書の類とも違うのは、独りよがりにならない視点と見事な筆致ゆえ。
#絲山秋子
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躁鬱病のこと、鬱状態、躁状態、発達障害、定型発達、依存について、ここまでわかりやすい本はこれまでなかったと思う。
発達障害で鬱の息子と暮らしているので、外から見た状態はわかっているつもりだったが、内側からの説明を受けた感じで説得力がある。
精神病は「気の持ちよう」で治るのか、に対し
『人間は自分の意志では虫歯一つ治せません』
は名言だと思う。
病気の人への接し方で、まずは
『「どうして病気になったのか」と質問するな』
それよりもこの病気に対する理解をしてほしい、も重い。
発達障害については、ADS(自閉スペクトラム)の特徴を強く持っているといわれるこの人ならではの切り口ですっぱり語られている。
定型発達者の書いた「発達障害の解説」は主語が「ふつう、みんな」なので読めない、には「定型発達者」の驕りを感じた。
発達障害者同士で、相性がいい場合のコミュニケーションは面白かった。感覚的に通じるという例は、家族ほとんどが発達障害である『うちの火星人』平岡禎之著での家庭内会話に近いものがあると思った。
依存症について、『自立的な人』の方が一つの物質や行動に依存的になる傾向がある、というのもなるほど、と思った。
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躁うつ病のことをメインに、精神疾患や発達障害、生活の中の違和感などについて、自分でも普段感じているけど言語化できないモヤモヤが詰まっていた。
読んでいて納得できる部分が多く、私には丁度いい本でした。
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対象の読者が何を必要としているかを的確に捉え、それに基づいて自分が提供できる経験や情報をきっちり整理し、尚且つ、それを読者が受け入れやすいように気を配りながら、わかりやすく面白い喩えを交えて淡々と示してみせる。さぞかし優秀な営業社員だったんだろうなと思う。もともと絲山秋子の小説もエッセイも好きだったが、彼女のまた別の凄さというか魅力に触れた気がした。
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絲山秋子さん、本当に誠実な方と思います。ご自分の病気とその治療、考えていること、気をつけていることを紹介したエッセイ「絲的ココロエ」(2019.3)を読んで、益々ファンになりました。メーカーの営業職として群馬県に赴任して1年、定年まで会社勤務のつもだったそうです。31歳、1998年に双極性障害を発症、休職、復職・転勤、1999年自殺未遂・・・。18年間服薬した薬はやめたけど、今も通院だそうです。二匹の犬との散歩では、ストレッチ、後ろ歩き、腹式呼吸などをされてるとか。30年喫煙も、風邪で吸えなくなり禁煙と
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筆者の考え方や行動の癖とそれへの対処法などが書かれていた。悪く悪く考えてしまうのは、自分の感情をゆさぶってそれが解決した時の大きな愉悦に浸りたいのかもとか、深い洞察が多くて、なるほどと思った。
うまく言葉にできないが、わたしはあまりほかに読んだことがない冷静なエッセイで、好きだった。
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小説家であり双極性障害(Ⅰ型)を患っている(現在は投薬はなく、通院のみ)絲山秋子によるエッセイ。
双極性障害、社会のこと、発達障害のことなどを分析、言語化し、淡々とした語り口で書いている。
淡々としているからこそ、躁状態やうつ状態の極端な状態ではなく、安定した状態で書かれていることが分かり、内容は信頼でき、さらには安心感を与えてくれる。
読むとしたら、うつのどん底から上り、回復期に入ったときだろうか。
”「気の持ちよう」で治るならば、それは病気ではない。”(p.19)
この言葉に気持ちが救われた。
気持ちの持ち方で治らないからこそ、医療や医者、薬に頼るのである。精神疾患への偏見に対するカウンターの言葉だ。
今現在は投薬を必要としないほどに回復した筆者が言うからこそ説得力が増す。
その他印象に残った言葉。
「人間は自分の意思では虫歯ひとつ治せません」 (p.19)
かつて後輩から「うつ病に関する本を買って読み始めました」と手紙をもらったときには、お見舞いよりも感激したものだ。当事者が欲しいものは、アドバイスや共感ではなく理解なのだと思った。逆に家族や友人に本をすすめて、まったく興味を示されなかったときは、ひどく失望した。(p.29)
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絲山さん自身が当事者。
当事者の人、ご家族、医療関係者、そして多くの人に読んでいただきたい。病気への理解が広がりますように。