紙の本
才能があったり,コネがあったりすると,いいなぁ
2007/03/22 23:22
9人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一章 ケンブリッジ到着
第二章 ミルフォード通り17番地
第三章 研究開始
第四章 ケンブリッジの十月
第五章 オックスフォードとケンブリッジ
第六章 次男が学校でなぐられる
第七章 レイシズム
第八章 学校に乗り込む
第九章 家族
第十章 クイーンズカレッジと学生達
第十一章 数学教室の紳士達
第十二章 イギリスとイギリス人
著者は1943年(満州国)生まれ。新田次郎(作家)と藤原てい(『流れる星は生きている』)の次男。東大理学部数学科卒後,同大大学院修士課程修了。ミシガン大学研究員(72年,29歳)。理学博士(73年,東大,30歳)。専門は数論。コロラド大学助教授(73年)。お茶の水女子大学理学部数学科教授(88年,45歳)。『若き数学者のアメリカ』で第26回日本エッセイストクラブ賞受賞(78年)。本書は,1987年から1年間のケンブリッジ大学に文部省在外研究員として留学したときのエッセイ。刊行12年間で12刷りだから,出版社としては“よい著者”だ。
数学者としては文章は読ませる。文章は,種類こそ違え,森毅と同じくらい面白い。「遥かなるケンブリッジ」という題名も素人にはイメージ喚起的だ。最初の2章はイギリスの門前で,第三章から第九章まででイギリスに入場しており,最終3章で,溶け込んだイギリスの感想を述べるという構成。
イギリスの大学の様子や数学者たちの人間的な側面などがよくわかるが,私などは業界の人間ではないので,世界規模で有名な人物の人となりもただの登場人物に過ぎない。藤原のイギリス(人)評価は,イギリス人数学者には当てはまるかもしれないが,下層のイギリス人にはまずは当てはまらないだろう。国民性評価なんていい加減なもんだ。言いたい奴らが言いたいように言って,納得したがってる奴が納得しているという構図で,これといって根拠がない。統計的なウラなんかまずはない。そもそも,たとえば“国を理解する”という状態を成り立たせる条件はいったいなんだろうか? もしその国に住むことが条件であったりすれば,殆どの人に国は理解できない。とすれば,評価はまず不能だ。頭が悪くとも,こっちは向こうに住んできたんだ,だから僕のほうが正しい,なんて凄まれれば,周囲がアホなら勝てる見込みはまずない。もっとも,勝つことには意味はないのだが。
藤原さんは有名作家の子弟なので,著作上の才能があったり,出版社との特殊なコネがあったりすると,いいなぁ。
本書は1988年7月刊行の(ってことは帰国と殆ど同時)文庫本化。解説は南木圭士(作家・内科医)(1057字)
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ケンブリッジに家族連れで研究員として滞在することになった数学者のエッセイ。
イギリス社会に流れる様々な日本との文化的、人種的、学術的な差を実感していく様を綴る。実感のこもった体験は読む人の心をくすぐる。イギリスと比較文化するのにも役立つはずだ。
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面白い。藤原氏の他著を読まれたことのある方はもちろんご存知だろうが、「最も変わった人種」というイメージのある数学者が、こんなにもしなやかなエッセイを書くのかと思われるでしょう。若い頃のアメリカ留学をつづったエッセイもかな〜り読ませますが、中年になられてからの在外研究経験をつづられたこちらのエッセイも十分面白いです。時にユーモラス、時におかしいくらいまじめな、かつお茶目な、なおそそっかしい氏の性格が滲み出ている、単なる読み物としてもすごーく面白いエッセイです。もちろん外国の大学の様子を知るためにも役に立つでしょう。ある程度は。
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閉塞感溢れる楽しい学者生活。
この人文章がうまい。自分に酔ってる点が、却って読みやすくなっている。
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「若き数学者のアメリカ」よりこれを先に読んでしまったので、作者の成熟などよりも、数学者の面白さ、大学で学ぶということについて面白く読めた。
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『国家の品格』で有名な藤原氏のイギリスに滞在していた頃についてのエッセイ。これは本当に数学者が書いたんだろうかと思うほど読みやすく、ユーモアに溢れた文章だった。大学や学者たちの話だけでなく、イギリスやイギリス人、そして日本についての考察も含まれていて興味深かった。
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妹がイギリスに行っていた頃に向こうの様子を
何が何でも知りたいと思い手にとったこの本は
著者から見たイギリスが鮮明に描かれています.
ちょっとイギリスって・・・???って
思うところもあれば,さすがと思うところもありますが
実際に私も行って確かめてみたい思いで一杯です.
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「遥かなるケンブリッジ」
藤原さんの本はこれが3冊目。
このあと、「数学者の休憩時間」を読んだ。
今「祖国とは国語」を読んでいる。
「父の威厳 数学者の意地」というのも買った。
はじめの本が面白いと、他の作品も読みたくなる・・・・。
「若き数学者のアメリカ」がよかったので、その他の本も読んでみようと思った。
本屋さんには、「国家の品格」のベストセラーにのっとって、
ちゃっかり藤原さんのコーナーがある。
一挙にたくさんの本を集めていて、
しかも本の帯には(これは、腹巻というのだっけ?)
『いま、話題のベストセラー「国家の品格」の藤原正彦の次男坊が英国でいじめに!どうする、パパ!』
なんて文字が踊っている。
思わず手にとってみたくもなる。
私は藤原さんと本屋の売り上げに貢献(?)したわけだ。
(といっても、文庫本だからたいしたことはないけどね)
はじめは彼を数学者だと思っていたので、
文学的なにおいがなんとも新鮮だった。
アメリカの留学の時は独身だったのだが、
イギリスにわたるときは3児の父となっていて、
数学的視点からだけでなく、父親としての視点からも
イギリス生活が語られ、より厚みをました滞在記となっている。
彼は、当初、イギリス英語にとまどいながらも、難なくこなし
かの地で、家族の個々の問題に悩みつつ、数学の研究に励む。
イギリスというと、落ち着いた、紳士の、くもり空の、ビートルズの、スコーンの
・・・・・・というイメージしかない貧困な発想の私だったが
、
あっ、イギリスって こんなところもあるのだ、と初めて知ることも多かった。
街の美しさ、紳士、ヨーロッパに比べて特異な気質、
風変わりなことを容認する社会、貴族社会、
そして人種差別、などなど・・・・・。
中に入り込まないと、イギリスのよさはわからないようだ。
でも、英国に一度は行ってみたい。
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「遥かなるケンブリッジ」藤原さんの本はこれが3冊目。 このあと、「数学者の休憩時間」を読んだ。今「祖国とは国語」を読んでいる。「父の威厳 数学者の意地」というのも買った。 はじめの本が面白いと、他の作品も読みたくなる・・・・。「若き数学者のアメリカ」がよかったので、その他の本も読んでみようと思った。 本屋さんには、「国家の品格」のベストセラーにのっとって、ちゃっかり藤原さんのコーナーがある。一挙にたくさんの本を集めていて、しかも本の帯には(これは、腹巻というのだっけ?)『いま、話題のベストセラー「国家の品格」の藤原正彦の次男坊が英国でいじめに!どうする、パパ!』なんて文字が踊っている。思わず手にとってみたくもなる。 私は藤原さんと本屋の売り上げに貢献(?)したわけだ。(といっても、文庫本だからたいしたことはないけどね) はじめは彼を数学者だと思っていたので、文学的なにおいがなんとも新鮮だった。 アメリカの留学の時は独身だったのだが、イギリスにわたるときは3児の父となっていて、数学的視点からだけでなく、父親としての視点からもイギリス生活が語られ、より厚みをました滞在記となっている。 彼は、当初、イギリス英語にとまどいながらも、難なくこなしかの地で、家族の個々の問題に悩みつつ、数学の研究に励む。 イギリスというと、落ち着いた、紳士の、くもり空の、ビートルズの、スコーンの・・・・・・というイメージしかない貧困な発想の私だったが、あっ、イギリスって こんなところもあるのだ、と初めて知ることも多かった。街の美しさ、紳士、ヨーロッパに比べて特異な気質、風変わりなことを容認する社会、貴族社会、そして人種差別、などなど・・・・・。 中に入り込まないと、イギリスのよさはわからないようだ。でも、英国に一度は行ってみたい。
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「国家の品格」の元になったアイディアが散見される。
日本を愛するが故の歯がゆさ、在外邦人の複雑な胸中が的確な言葉で述べられている。人により出方の差はあるが、私をはじめ多くの同胞たちが同じ気持ちで頷きながら読んだことだろう。(2007.7.4)
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「国家の品格」の著者である藤原正彦のエッセイ。
著者がケンブリッジへ1年間数学を研究するために家族と一緒にイギリスに渡る。
そこで外国人としてみられる著者や、他の国から来た研究者たちの環境の変化に対するとまどい、レイシズムへの対抗などの体験を綴っている。
海外で「日本人」の自分や家族に対する筆者の考えは「国家の品格」に通じるところがある。
また、実際のイギリス人の考え方や生活なども垣間見ることができる。
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「ケンブリッジもオックスフォードも簡単に入れるんじゃね?みたいな、そんな身近さが素敵デス。数学者が書いておるとは思えない流麗な筆致に圧倒されました。」
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一朝ことあらば真先に戦場に駆けつける」>ノブレス・オブリージュ(高貴な者に伴う義務)
ゆっくり徐々に、というのは怠け心との葛藤に、貴重な精力を費してしまうから良くない。少なくとも私のような怠惰人間にとってはそうである。
自然科学が社交の場になっている
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父が、読めとわざわざエアメールで送ってきた本。(しかも二十歳の誕生日に。)数学者の 藤原正彦さんが1年間のケンブリッジでの研究滞在の記録。同意する点は多々あるし、嫌味を感じさせない文なので好き。
平成3年刊行なので少々古い感じはあるけれど、2007年〜8年をロンドンで過ごした私から見るイギリスと大して変わっていないということから、イギリスという国の変化のなさをうかがいしれるかもしれない。
(もちろんそこがイギリスのいいところでもあるし、また在英歴の長い人はここ2,3年ほどで随分変わったと言う人もいるが。)
ま、これだけ頭の切れる数学者でもキツかったんだし、あたしがキツかったのも当然よね、っていう慰めの材料にもなった。同時に自分の未熟さも痛感した。('08 冬)
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数学者ながら、非常に読みやすく、冴えた文体。
さすが新田次郎の息子。
随所にでてくる英国紳士の描写に憧れた。