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アフリカ・レポート 壊れる国、生きる人々 (岩波新書 新赤版)
著者 松本 仁一 (著)
豊かなジンバブエの農業を10年で壊滅させ、南ア共和国を犯罪の多発に悩む国にしたのは誰か? 中国の進出、国を脱出するアフリカ人の増加などの新たな動きを追い、腐敗した権力に頼...
アフリカ・レポート 壊れる国、生きる人々 (岩波新書 新赤版)
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商品説明
豊かなジンバブエの農業を10年で壊滅させ、南ア共和国を犯罪の多発に悩む国にしたのは誰か? 中国の進出、国を脱出するアフリカ人の増加などの新たな動きを追い、腐敗した権力に頼らずに自立の道に向かう人々の姿を伝える。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
松本 仁一
- 略歴
- 〈松本仁一〉1942年長野県生まれ。東京大学法学部卒業。ジャーナリスト。朝日新聞社社会部員、中東アフリカ総局長、編集委員などを歴任。ボーン・上田国際記者賞、日本記者クラブ賞等を受賞。
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紙の本
希望の光の灯る章があるのが救い
2009/11/05 07:36
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、2008年に出版された新書の中でも指折りの好著とされる。アフリカはなぜ貧しいままなのか、どうして紛争が絶えないのか、遠く離れた日本人に対して、そうした疑問点を明らかにしてくれる。
簡単に言ってしまえば、アフリカ各国は、国家としての体をなしていない。アフリカの多くの人たちは、国民国家の一員というよりは、部族の一員という意識の方が強い。だから部族間の対立が日常的にあり、外国からの支援も有力部族の長が自分のものにしてしまって、庶民にまで届かない。
欧州列強の植民地時代には、部族意識をわきに置いておいて、独立闘争のために団結して立ち向かえた。問題は独立後だ。
共通の敵が目の前からいなくなると、部族意識が高まり、反目し合う。このあたりは多くの日本人には納得しづらい。少し前、ルワンダのツチ族とフツ族のあいだで凄惨な虐殺が繰り広げられた。これなど、いくら新聞記事を読んでも腑に落ちなかった。
世界地図では、国境線が引かれ、国名が記されているが、これは仮のものだと思った方がよいらしい。国ではなく、部族という単位が基本だから。
アフリカには独裁的な大統領が何十年も君臨していることがある。抑圧されてさんざんな目にあっているのだが、こうした独裁者たちはなかなか追い払われない。多数派の部族がほかの部族に権力が移るのをおそれて、自分たちの部族の長をその立場につかせ続けるせいだ。
本書では、年率16万%というハイパーインフレに陥り、国家が破綻状態にあるジンバブウエが描かれる。わずか4,500の白人農家による大規模農場があった時代には豊かな農産国であり、輸出さえしていた。黒人も農場に雇われながら、安定した生活を享受していた。
それが1980年に問題の多い独裁者が国家の運営にあたるようになってから、転落していく。白人の土地は祖先の土地であるという論理で、白人の土地が占拠される。農場に押し入った強権的な黒人には農場経営のノウハウがないので、畑は荒れ果て、雇われていた黒人の生活も暗転する。こうした行為も、圧制からの不満をそらすために政権がし向けたものだ。
南アフリカも、アパルトヘイト撤廃に立ち向かっていたときにはすばらしい働きをしていたANC(アフリカ民族会議)が、政権を奪取したとたんに腐敗する。白人による黒人に対する差別から、黒人同士の差別に転じたのだ。富はANCの幹部がかすめ取る。治安は最悪で、今や世界有数の凶悪犯罪の国になり果てた。
こうした事例には多少辟易するかもしれない。しかし、これが現実なのだ。この点をおさえずに資金援助だけをしていても、必要なところまで届かずにむなしい結果に終わる。資金の出し手となる日本という国もよほどわきまえておかなくてはならない。
本書に光明を見出すとすれば、人々が自分たちの力で生活改善の取り組みを始めている事例の紹介だろう。南アフリカのかつての黒人居留区に、ツアー客を招いて繁盛するレストラン。危なくて外からの訪問者など考えられなかったところで、意外においしい料理を提供するレストランとあって、いいビジネスになる。そして、自分たちの地区は変わったのだといって自信をつける人たちが生まれる。
ジンバブエでも、地元の農業NGOが自分たちの手で農業を再生させる取り組みを始めている。簡単な潅漑システムの導入を図り、自立する農民を次々と生みだしていく。こうしたところで、初期的な投資に海外の援助資金が入るのは意味のあることだ。お金だけの「ただの援助」は要らないとある。
暗澹たるアフリカの実情の描写あとにくる、この章は読者にとっても希望の光が射すようだ。今では日本国内でも格差社会という認識が広がっているが、アフリカのそれは想像を絶するものがある。たまたまそういう社会階層に生まれついたからといって貧しい人がいつまでも貧しいままであっていいはずがない。意味のある支援の仕組み作りが今、求められている。
紙の本
政権の腐敗で貧しいままの国民。これがアフリカ諸国の現実だ。
2008/10/27 08:04
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
60年代にアフリカ各地の植民地が独立を果たすと、60年代はアフリカの時代と言われたものだった。一方で、その前途を見越してそれ以前から暗黒大陸と呼ぶ向きもあった。いずれにしても、それから半世紀近くが経過した。
独立とは自活・自立できることであるから、単なるナショナリズムの盛り上がりで遮二無二独立したわけではなかろう。植民地時代に基盤が出来、それに乗っていけば自活できるという道が開けていたのだろう。ところが、現実には全く違う道を歩んでしまったのが、現在のアフリカであるという。
著者、松本氏は元朝日新聞の記者で、ナイロビ支局長や中東アフリカ局長を歴任したアフリカ・ウォッチャーである。
つい先日のサミットでも非難決議が行われたジンバブエの政権に対して、松本氏は鋭い舌鋒を剥き出しにしている。上に述べた旧宗主国の英国植民地時代の遺産を台無しにして、失政を通り越した悪政を施し、国民が隣国へ逃げ出す国家にしてしまったのだと主張する。
本書によると、こういう国家はジンバブエだけではなく、ほとんどの国家がこうなってしまっているという。とくに、国家元首、政府官僚の腐敗振りはひどいという。国民の暮らしや安全、経済などには無頓着で、彼ら為政者は自分の利権を増やすことにしか関心がないのだそうだ。こういう国に生まれた国民は運が悪かったではすまない。
これらは最近の現象ではない。著名な作家であるフォーサイスは、アフリカの独立間もない国の独裁者の政治があまりにもひどいので、作家としての原稿料をその国のクーデター支援につぎ込んだと言われている。
南アフリカでアパルトヘイトに対して長年の闘争を行ってきた解放組織ANC(アフリカ民族会議)であったが、いざ、政権の座についてみると、その闘争の理念はどこへやら。たちまちに腐敗して自己の利益追求のみに終始し、治安維持を忘れてしまった。お陰で今の南アフリカの治安は最低レベルに落ち、経済活動も停滞するという悪循環に陥ってしまった。
そういえば、ソマリアもしばらく無政府状態が続いているし、スーダンもテロ組織の巣になってしまった。石油の産出は良いニュースとして伝えられており、ナイジェリア、アンゴラなどは産油国として大きく躍進している。しかし、その原油代は独裁者の懐に消えるだけで、国民には回って来ず、相変わらず貧しいままだという。
悪い指摘だけではなかった。NGOが地味ではあるが、着実な活動を続けているという。一方で、松本氏は現地にいる日本人が起業して、貴重な外貨を稼ぐまでに成長させて、国民の支持を得ている実態も報告している。
具体的なエピソードが読者にその実感を与えている。ただし、これは記者が書いたレポートなので、実際のエピソードの紹介だけに終わっているという印象も免れない。アフリカ全体がすべて同じ傾向にあるとまでは言えないであろう。それぞれの事情を抱えているはずである。学術論文ほどの精緻さは不要だが、せっかくならば、政府、外務省への政策提言で最後を締めくくって欲しかったし、わが国はアフリカに対してどうすればよいのかをもっと丁寧に教示して欲しかった。
紙の本
わるい話が中心だが…
2011/11/01 01:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
アフリカ各国がかかえるさまざまな問題についてのべている. ジンバブエのムガベ大統領らによるデタラメな政策によってハイパーインフレをはじめとする破壊的な状況がおこったこと,勝手放題にふるまう中国人たち,アフリカからにげだして歌舞伎町などでぼったくりの商売をするひとびとなど. この本の最後にはいくつか,よい話もかかれているのだが,基本的には 「崩壊するアフリカ」 という印象をあたえる. アフリカはだめだとおもいたいひとたちの格好の材料になるのではないだろうか.