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大聖堂−果てしなき世界 下 (SB文庫)
大聖堂―果てしなき世界(下)
05/09まで通常1,045円
税込 523 円 4ptこのセットに含まれる商品
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紙の本
教会が絶対ではなくなった世界で、大聖堂の意味を問う
2009/08/19 20:20
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
スパイ小説の重鎮、ケン・フォレットの歴史小説。
「大聖堂」より、200年後の世界を舞台に、大聖堂建築をめぐる人間模様が鮮やかに描かれている。
「大聖堂」が12世紀当時の土木技術への挑戦と宗教を描いていたのに対して、この「大聖堂 果てしなき世界」では、台頭してくる商人や吸引力を失っていく教会が描かれている。
<絶対>を失った世界で、イングランドで一番高い塔を建てることを、どう意味つけるのか。
信じていたものに裏切られ、身を守るために意にそわぬ選択をせざる得ず、またそれも砂上の楼閣のようにもろく崩れていくヒロイン。
反対に、不幸な生い立ちながら、愛する男のためという一念を貫いていくもう一人のヒロイン。
2人の対極のヒロインと、没落した貴族の子供として生まれ、建築家と騎士と正反対の生き方をする兄弟が、物語を極上のエンターテイメントに導いてくれている。
フォレットの小説は、人物造詣がいつも素敵だが、これではそれが最大限に生かされてるように感じた。
そう、前作のような建築技術の発展的な部分を求めると肩透かしをくらうし、前作で物足りなかった人が物語を作りあげていくという部分は、この上もなく満足させてくれる。
これほど、最後のページを閉じるのが残念でならなかった物語はない。
紙の本
素晴らしき中世の世界
2022/01/15 07:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ついに読み終わりました。登場人物のやりようにムカつく場面は多々ありますが、それを含めて4人の主人公と共に、中世の時代にドップリと浸って、面白く読め、しばらくは『大聖堂ロス』です。引き続くペストの猛威に関しては一旦収まっては、またぶり返す様は、まるで今のコロナとシンクロし、興味深く読めました。最後はカチリカチリと収まるべきところに収めてしまうこのストーリー構成は、素晴らしいの一言。読み終えていい余韻に浸ることができました。
紙の本
物語にも果てはないのでは
2009/06/21 16:11
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は正編『大聖堂』から時代をおよそ200年下った14世紀のイングランド。あのレディ・アリエナとジャック・ビルダーの血を引く末裔たちが、再び暴力と理知とがせめぎ合う中世で、波乱の人生を送る三十有余年の物語です。
文庫とはいえ、上巻671頁、中巻671頁、下巻670頁と、三巻合計で2000頁を超える大長編歴史大河小説ですが、決して臆する必要はありません。有為転変の物語に読者は倦(う)むことなく頁を繰り続けること間違いないでしょう。
正編『大聖堂』同様、物語を彩るのは激しく仮借なき暴力、領主や聖職者の理不尽で恣意的な意思、時に放埓ともいえる男女の性的関係といった、中世物語です。しかしその一方、私はこれを、世の中を駆動するのは経済的な欲求・欲望であるということを強く意識させる小説として読みました。
羊毛市の開催をめぐるごたごた。土地にかかわる税金・相続・借用権の問題。新しい農産物の生産とその加工商品の流通。橋というインフラの整備とその建設資金の捻出。
こうした経済活動が物語の登場人物たちの人生を豊かにはぐくむこともあれば、大きく狂わせることもあるのです。緒についたばかりともいえる資本主義経済社会の様相は、大変興味深く読むことができます。
さらに、14世紀に猖獗(しょうけつ)を極めたペストのくだりは、新インフルエンザに際して現代の人々がきたした恐慌(パニック)と、治療と予防への飽くなき取り組みとを想起させるにあまりあります。
500~600年も以前のヨーロッパ人の行動が、より身近に感じられる群像劇を見るにつけ、ケン・フォレットという稀代のストーリー・テラーの腕の確かさを強く感じることができます。
さて、物語はこれで終わるのでしょうか。それとも『大聖堂』には三つ目の物語が生まれるのでしょうか。注目していたいと思います。
紙の本
長い物語もついに終わりに
2023/03/20 16:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペストの度重なる襲来、百年戦争に従来の農業・商業活動の変化ともりだくさんな時代背景のなか、主人公たちの生き方をダイナミックに描いたシリーズもいよいよ終焉となった。
この物語は終わりを迎えたが、社会情勢はまだ変遷途上だ。
とかく宗教に縛られ因習に満ちた時代と思われがちな中世だが、様々な要因が絡まり合って次の時代へと移り変わってゆくうねりのようなものが確かに感じ取れる展開だった。それを静かに見守る大聖堂が新しい塔を加えて立ち続けるさまは、まだキリスト教が人々に大きな影響を与えている証拠だと思う。
ただ大聖堂を運営する人間が、自分たちの権益を守ることに軸足を移し、肝心なときに町の人々を見捨て逃げ出してしまうのが悲しい。建物や儀式はまだ存在するが、それらが表す心はすでに失われ聖職者の権威化が図られる。なんだか仏教の像法の時代を思わせる展開だ。やがて末法の世が訪れるのか?暗い予感を感じさせながらも、エンディングは帆に爽やかな風を一杯受けたような気分にさせてくれた。
やはり、これはこの物語に終わりはないということなのだろう。この後の宗教改革の大混乱の時代までをぜひ見てみたいと思わない読者はいないはずだから。
さらに、長年にわたって理不尽な領主に翻弄されてきたグウェンダとその家族がやっと解放されたのはほっとしたが、それが暴力的解決だったというのが物語に暗い影を落としている。農民や土地を持たない労働者が正当な権利を手にする日はいつなのか。個人の暴力などに頼らないしっかりした体系的な法律の芽はどこにあるのか。
21世紀の今日もまだ完全な答えは出ていない問題だ。
これを書いて入る現在、16世紀と10世紀にまで広がりを見せているこのシリーズ、まだまだ目が離せない。