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- カテゴリ:一般
- 発売日:2016/02/05
- 出版社: 朝日新聞出版
- サイズ:20cm/248p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-02-251358-8
紙の本
焼野まで
著者 村田 喜代子 (著)
大震災直後、子宮ガンを告知された。火山灰の降り積もる地で、放射線宿酔のなかにガン友達の声、祖母・大叔母が表れる。3・11の災厄と病の狭間で、比類ない感性がとらえた魂の変容...
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商品説明
大震災直後、子宮ガンを告知された。火山灰の降り積もる地で、放射線宿酔のなかにガン友達の声、祖母・大叔母が表れる。3・11の災厄と病の狭間で、比類ない感性がとらえた魂の変容。『小説トリッパー』連載に加筆。【「TRC MARC」の商品解説】
東日本大震災から数日後、作家の村田喜代子さんの体には子宮体ガンが発見された。本作はその後の治療の日々の実体験をもとに、地上の災厄と、我が身に巣くう病がもたらす、数奇な魂の変容を描いた傑作長編小説。
作者の分身的存在である「わたし」は、九州の最南端の地の放射線センターで、子宮体ガン治療のため、1カ月間の特殊なエックス線照射を受けている。一日一回数分間の照射が終わると、「わたし」は借りているウィークリーマンションに戻るだけの日々である。エックス線による体の消耗は少しずつ進み、滞在しているこの町は、火山の度重なる噴火で灰の臭いが充満している。
「わたし」の治療中の慰安は、図書館に勤めていた時の元同僚で、退職後、肺ガンで闘病中の八鳥誠である。脳や骨盤に転移したこのガン友達から、「わたし」は携帯電話で種子島のロケット打ち上げの光景を聞き、体は日増しに消耗しながらも心は虚空の高みへ飛ぶことができた。
滞在型のエックス線治療には、全国からガン患者がやって来る。「わたし」はそんな人々と治療の合間に火山を見に行く。噴煙を吐く火口を背景に、病でこの地に来て出会った患者たちは記念写真を撮る。永遠の一瞬が収められる。やがて八鳥は亡くなり、放射線センターのガン仲間も一人また一人と、照射を終えて去って行く。そんな「わたし」の放射線宿酔の夢にあらわれるのは、祖母や大叔母など今は亡き女性たちである。
見えない光線に焼かれる一カ月の間に織りなす生者と死者たち。人間の体内のガン細胞から広大な宇宙まで、未曽有の3・11の災厄と病の狭間で女性作家の比類無い感性がとらえた前人未到の問題作。
【本の内容】
著者紹介
村田 喜代子
- 略歴
- 〈村田喜代子〉1945年福岡県生まれ。87年「鍋の中」で芥川賞、2010年「故郷のわが家」で野間文芸賞、13年「ゆうじょこう」で読売文学賞受賞。紫綬褒章受章。
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紙の本
死に満ちている
2016/03/15 16:16
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投稿者:黒猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
3.11から数日後「私」は子宮体癌を告知され、手術と抗がん剤を拒否し、変わりに放射線治療で有名なある本州南端のクリニックに治療の為、単身移る。日々治療を受ける中、放射線宿酔からくる体のダメージと、夢に訪れる懐かしい死者との逢瀬。同じ治療を受ける癌患者同士の交流と死。3.11の原発爆発と、放射線治療。日常当たり前に爆発し降り積もる火山灰と、教会の鐘の音。「私」には、いつも鳴り響く近くにある教会の鐘が、世界の火事を告げる半鐘のようだと語る。読んでいて、生と死のモチーフに満ちみちていて、圧倒的に絶望的で救いがない。予定していた放射線治療を終了した所で物語は終わるが、生きながら半分死者の世界を生きているような感覚とはこのようなものかと思う。最初表紙も何ら気にとめなかったが、読み進める内に、嫌に目を引き厭忌を覚えていたが、表紙の絵が「黙示録註解」写本部分の「第五の喇叭の天使」と最後に知って、合点がいった。読む者の波長を選ぶ本だと思う。