紙の本
日本で一人の“名探偵”
2001/08/30 16:38
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投稿者:はな - この投稿者のレビュー一覧を見る
名探偵の出てくる小説は、その名探偵の行動と推理に面白さを感じる私なのですが、この話はちょっとはぐらかされてしまった気分です。
何せこの探偵さん、名探偵ではあるけれど、それで生計を立てようという気が全然感じられないのです。そして平日はお金のためだけにアルバイトをしている、なんだか名探偵によぐわない感じ…いえ、現実として「名探偵」で食べて行けるかと問われたら、私だって食べられないのでは、と思うわけですが。
でもこの探偵さん、とても頭のいい人なだけに、そこが悲しくなってしまいます。ああ、現実って大変なんだな、と。
しかし、もしかしたら、読者にそう思わせるように作者・北村薫さんは書いておられるのかもしれません。それなら、私はまんまとその策にはめられてしまったことになりますね。
紙の本
北村作品としてはもう一息!?
2001/02/12 06:51
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投稿者:ごろんちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
北村薫の作品は、トリックの妙というよりも、もっと地味な部分。物語の中にひっそりと紛れ込んでいる人々の存在や、ほんの何げない場面の心に染みるような描写にこそ真価を発揮していると思います。変な表現の仕方かもしれませんが「純文学とエンターテイメントの融合!」なんて感じてしまうこともしばしばです。
で、この作品なんですが。
北村薫の作品としては、やや面白味に欠けているというのが正直なところです。最初の短編2編はあっさりと終わってしまいますし、最後の表題にもなっている中編は、トリックもどうかな?というところですし、加害者の心理の揺れも、あまり上手く描けていないように思いました。
また、作品中に登場する探偵コンビですが、名探偵である巫弓彦の存在感が非常に薄く、とって付けたように事件を解決するあたり、ちょっと拍子抜けの感がなきにしもあらず……。
なんて、けなしてしまいましたが、実はこの作品、同じ作者による「円紫シリーズ」と設定が似すぎているんですね。こちらも中年の落語家円紫師匠(探偵役)と女子大生の<わたし>というコンビで、事件が起こるたびに、円紫師匠か難問題をさらりと解決する。で、いいんですねぇ、この円紫師匠が。言葉のひとつひとつに含蓄があって、<わたし>が信頼を寄せている理由もよくわかる。
私自身がこちらのシリーズを大好きなものですから、「冬のオペラ」を読むとなんだか肩すかしをくらったような気になってしまうのです。あるいは、読む順番が逆だったら、もっと違った感想を持ったかも知れません。
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北村薫ミステリのマイベスト…かな?盤上の敵や街の灯も好きですが、身近な世界観での作品ならばこれが最高。
人力検索にてお薦めしました。
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なんか、どの事件も後味がすっきりしない事件ばかり。寛永寺から見た国立博物館は近かったので見に行きました。
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名探偵巫弓彦とあゆみが出会った3つの事件。
「三角の水」
「蘭と韋駄天」
「冬のオペラ」
どれも面白い。
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自ら「名探偵」を名乗る探偵と、同じビルで仕事をしていたのが縁で知り合った主人公。ホームズとワトソンのような2人が出会う哀しい事件。3つの事件が登場する連作短編です。
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名探偵さんの事件が3つ。ちょっと新しいキャラクターかも。他の本でも北村薫さんの文章は易しいけれど詩的、知的。そして主人公の女性に透明感があります。時にこちらの知性がついていけなくなるけれど、この世界は好きです。
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8月22日読了。「このミステリーがすごい!」1994年度の第6位の作品。自ら「名探偵」を名乗りバイトで生活費を稼ぐ奇妙なビル同居人に興味を持ち、ワトソン係を買って出た不動産事務員の女子/主人公。2本の短編と、表題作の中篇を含む。短編は著者得意の「日常の謎」、表題作にて殺人事件を解決するが序盤で名探偵が現代に生きる意義/その不自由さ、彼の手腕を印象付けた上で本題の「事件」に入る、という構成は面白い。名探偵と同じかそれ以上に、「女性」というのも現代では生きにくいものなのか・・・。京都の旅の繊細な描写など、著者が男性とは信じられないな〜
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北村薫氏の第1作目となる作品。この当時、北村氏は覆面作家であり、性別・生年月日・その他の情報は一切どの雑誌にも掲載される事はなかった作家であった。そんな北村氏が書いた冬のオペラは、やはりどこか柔らかく、でも哀愁の漂う作風の物語である。以前に読んだ3冊の覆面作家シリーズも同じような感じをうけたが、こちらは哀愁という部分において一歩上をいく作品だと思う。北村作品はこの不思議なバランスのうえに成り立つ作品。他のも読んでみたいと思っている。
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名探偵とは「なる」ものではなく、存在であり意思である。
榎木津とかマルタ・サギーみたいな感じか。
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北村薫は『時と人 三部作』が好きなんですが、これは読むのちょっとタルかったです。登場人物に魅力がないため、3話目の中編で50ページ読み進めるまで事件が起きないのはツラかった。ミステリ部分もあまり興味をひかれなかった。
書かれた時期も1993年と大分前だ。小説からは、まだ日本は現代のような閉塞感がなくノンビリしていた空気が感じられる。その空気と相まって語り口が古臭く感じてしまったのだ。
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探偵と主人公の女の人は好きだった。
推理も楽しかった。
読みやすかったのも意外だった。
面白かった。かな。
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名探偵・巫(かんなぎ)弓彦と姫宮あゆみ、この二人のキャラクターをベースに展開する謎解き。スマートな展開。
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名探偵にしてフリーターとして生計を立てている巫弓彦と、記録係を勤める私が遭遇した3つの事件について。
産業スパイについての『三角の水』、盗まれた蘭を取り返す『蘭と韋駄天』は日常の謎に近い身近な事件。
表題作『冬のオペラ』は殺人現場に残されたダイイングメッセージの謎を解く。
イメージする北村薫の世界。
二十年近く前の作品だけど文章も綺麗だし流れるよう。
ただ最初の二作が、最終話の前座としても、事件・犯人共に卑俗で情緒がない。
『冬のオペラ』も重みが足りず、全体として薄い感じがした。
最後の数ページのためだけに存在している作品というのも悪くないけれど、謎の部分以外がいいというのもミステリとしてどうだろう。
塩気が足りない感じ。
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ミステリーらしくないミステリーと言ってしまっては作者に失礼であろうか?それでも、この柔らかな文体といい全編を通して流れてくる優しさは非常に心地よい読了感がある。
主人公の姫宮あゆみは、可愛らしい女性である。未成年なのに飲酒!は今なら許されない風潮ではあるが、当時は寛大であったのだろう。はにかみながらビールを飲んでいる姿を想像できてしまう。
そんな彼女が就職先の不動産事務所の上に引っ越してきた名探偵、巫弓彦と二人三脚で事件を解決していく様は非常に愉しげである。
神秘のベールに包まれた名探偵――難事件を解決したから名探偵ではない。名探偵と自己申告しているから名探偵なのである。まさに、一部の自己申告αブロガーとかそんな胡散臭さを髣髴させる彼は、事件が発生するたびに頭脳プレーで事件を解決していく。
形式としては安楽椅子パターンだが、巫の神秘性とワトスン役を買って出たあゆみのキャラクター性がマッチして痛快劇になっている。ラストの椿姫は悲しく、せつなくもあるが、それでも何処かしら救いが残されている。そんな風に感じられるのである。