紙の本
世の中をさらに見て仲間を広げる宋江の旅
2001/05/28 00:10
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投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
四巻の中心は宋江。梁山泊がいくら強大になろうと、それだけで国をひっくり返すことはできない。点の闘いを広げ、線から面へ広げなければならない。そのために、世の中を広く見て、ほうぼうでいろいろな危険に遭遇しながらも、仲間を広げていく必要がある。そして、結局は素晴らしい男たちを感化させていく。
そんななかからついに李春が立つ。梁山泊と連携せずに立つ初めての『替天行道』の旗。李春は、言う。『俺は自分が生きていると、初めて心の底から思うのだ』。このような想いを持てる男こそ、羨ましい。
梁山泊はついに決心し、外へ打って出て簡単に成功するが、外の町を経営していくことは難しい。敵もすごいがそれ以上に、歯向かうことは容易でも、治めることは自分の逆の立場になることであり、もともと難しいことなのであろう。
そして、敵の青蓮寺はいよいよ頑張ってくる。『国に対する思い。おまえがそれさえ忘れなかったら、何をやってもよい、と私は思う。自分を苛みながらでも、おまえはそれをやりとげるはずだ』。敵の総帥の言葉だ。泣かせる言葉だ。強い敵がいればこそ、梁山泊の者達が生きてくるのだ。この巻のもう一人の主人公はこの言葉を掛けられる李富と言ってよい。深く悩みながらも馬桂を使い、楊志に迫ってくる。そして、宋江も危機である。次巻が待ち遠しい。しかし、次は9月だそうである。哀しい。
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原典「水滸伝」とは全く異質のこの面白さはどこから出てくるのか
2004/07/08 16:54
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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
三巻まで読むとどうしても原典「水滸伝」とどこが違うのかを当たってみたくなるものだ。梁山泊の首領である宋江だが、少年時代に読んだ簡略本では共感できる人物とはとうてい思われなかった記憶しかない。中国文学に詳しい高島俊男著の『水滸伝の世界』(ちくま文庫)を参考にして、なるほどと納得したしだいである。「弱いだけでなく、意気地なしである。腕が立たぬかわりに頭がいいのかというと決してそうではない。短慮で、血のめぐりがわるい男なのである。人格が立派かというと、これはまた決してそうではない。宋江のやることは卑劣で陰険である。見かけぐらいは立派かというと背が低くて色が黒く、さっぱり風采のあがらぬ男なのである」。やはりそうだったのか。絶対に英雄・好漢、大組織のリーダーにはあてはまらない人物なのだ。
北方謙三版の第一の面白さはこの宋江の人格を換骨奪胎し全く別の人物にしたてあげたところにある。
君主独裁を打倒する「替天行道」の志を至高のものとする革命児である。親を敬愛し、兄弟を慈しみ、同士への仁義、誠実を貫き、弱者への思いやりは篤い、男の中の男が宋江なのだ。そこでは今日のわれわれが見失った「人倫」が尊ばれる。ただ彼には「忠義」というあの忌まわしい観念はない。人材登用の妙、識見と大局観による判断力、決定した方針に対する責任感。自らの死を賭した戦さである、人命の重さと大量の死、この背反する過酷な現実に向き合う本物の勇気、カリスマ的吸引力など現代に通じるすぐれたリーダー像がそこにある。一方で彼はいたるところで見えてくる自身の弱さを隠さない。スーパーマンではない俗世界に生きる生身の人間の魅力があって、親近感もあふれる。このあたりの造形がハードボイルド作家の面目躍如たるところだ。
その宋江が第三巻末で妾の閻婆惜を兄宋清に殺害される。宋江の脆さが原因でもある事故である。殺害犯は自分であるとして逃避行が始まった。梁山泊運営を晁蓋に委ね、拳闘の達人、行者・武松を唯一の従者とする、人材発掘と民衆生活の現状把握を目的とした放浪の全国行脚である。
内容は違うものの「閻婆惜事件」は原典でも有数の劇的エピソードなのだ。北方『水滸伝』にはこれら原典のきらびやかなエピソードが形を変えて随所に取り込まれている。原典ではすべての著名なエピソードが梁山泊の帰趨とはかかわりない独立した話として完結しているのに対して北方版ではこれらに梁山泊対青蓮寺の抗争という次のストーリー展開の伏線としての重要な役割を与えている。
このサスペンスフルな仕掛けが第二の面白さである。
閻婆惜の母親・馬圭はもともと梁山泊側の間者であったと設定している。青蓮寺側は周到に殺害は宋江の手によるものとし、殺し方の残忍さを強調する目撃者をでっち上げる。馬圭の梁山泊に対する憎悪をかきたて、セックスをもって篭絡し二重スパイ、梁山泊要人の暗殺者に仕立て上げる。
一方宋江の従者には天衣無縫の恐るべき殺戮者・李逵が加わった。
次の展開がまちどおしいですね。
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北方版水滸伝第4巻。巻頭に、第4巻までの登場人物リストが挿入されるようになった。なんとそれは折り込みページで、紙質もサイズも他のページと違う。これは、これからも増える登場人物に対応できるよう、折り込みになっているんだろうか。すごい。
水滸伝は、反乱軍側と官軍側とがいるけど、どちらが正義でどちらが悪だとは分けられない。お互いに譲れないもの(反乱軍でいう志)があって、それが相容れないものだから対立しているだけで。だから官軍側にも魅力的な人物たちがいる。第4巻でよく描写されているのは、李富(りふ)かな。林沖を投獄したころは、ただの狡猾な役人だった。でも第4巻まで読むと、だいぶ認識が変わるよ。李富もだけど、その上司の袁明(えんめい)が今後どう描かれていくのか楽しみ。
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これまで舞台が中原(華北)だけだったのが、この巻からは江南へ。
朝廷の追及を逃れ、江州を目指す宋江の前に頼もしい男たちが現れる。
掲陽鎮一帯に勢力を持つ二人の好漢、山の没遮攔・穆弘と、河の混江龍・李俊が宋江との出会いにより、「替天行道」に決起。
そしていよいよ黒旋風・李逵が登場!
一方、青蓮寺の追求も鋭くなり、宋江を憎む馬桂は裏切りにのめり込む。
しかし馬桂を操った李富は、彼女への愛と後ろめたさゆえに苦悩する。
今まで名前と活動だけしか出てこなかった飛脚屋の戴宗と、張横・張順兄弟もついに登場。
張順と李逵との水中の喧嘩は原典通りかな?w
ニン、トン♪
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19巻にまとめて記載。
http://booklog.jp/users/osamu0919/archives/4087747824
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馬桂は愛娘を殺され、悲嘆にくれていた。青蓮寺は彼女を騙して梁山泊への密偵に仕立て上げ、ひそかに恐るべき謀略を進めていく。一方、宋江は、民の苦しみと官の汚濁を自らの眼で見るため、命を懸けて過酷な旅を続けていた。その途中で、純真さゆえに人を殺してしまった李逵と出会う。李逵は次第に宋江に惹かれていくが、そこに思わぬ悲劇が待ち受けていた。
北方水滸、波乱の第四巻。
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遂に逃亡者となった宋江。
武松と2人で南の江州の戴宗の元を目指す。
途中で政府に対して不満を持つ穆弘、穆春兄弟や李俊(水滸後伝の主人公)と出会い同志を増やしつつ旅を続ける。
途中ちょっとしたトラブルに巻き込まれて李逵をお供に加える事になる。(李逵にとっては、ちょっとじゃ済まないが)
梁山泊の晁蓋も行動を開始するが思ったような成果が上がらない。
楊志は二竜山と桃花山と併せて4千の兵力を抱えるまでになり
梁山泊との連携を深めて行く。
江州では、宋江を捕縛の命を中央から受けた官僚が派遣されて、朝廷を裏から支える組織が、梁山泊潰しを本格化させて来る。
この巻でも北方節が炸裂して、脇役的な仲間が活き活きと描かれていて物語に深みを与えていると思う。
晁蓋が鍛治工房に籠って、湯隆から刀の打ち方を教わるシーン、安道全からの依頼で武器ではなく、治療用の鍼を打つ湯隆。
鍛治工房のシーン一つ取っても、色々な仲間の人間模様が描かれていて物語に引き込まれる。
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号泣だった。それぞれの生き様に涙が出てきて仕方がない。「水滸伝」は中国でもいじられること無く、ほぼ原形を保った状態で語りそして描かれている。先日読んだものもそんな感じで面白味などまるで感じない。
正直クライマックスは続編に来るような気もするのだが、やはりこの水滸伝はじわじわと近づいてくる禁軍最高の実力者の童貫との最終決戦であろう。
「女を守れない男だといわれたくない」
ような台詞を扈三娘に吐き己の命と引き換えに散った「林沖」やっぱり一番好きですね。6万の軍に包囲された林沖率いる黒騎兵の旗手であった郁保四と共に散る。
この黒騎兵と遊撃隊の中には重要人物である史進、索超、馬麟、扈三娘、徐寧、そして楊令いた。戦の中心はこの騎馬隊になってくるので、それぞれに思い入れは強いが、北方水滸伝が他の作品と違うのはすべての登場人物がタイトルロールであってそれぞれにドラマがある。
例えば軍の人選に当たっても細かな角度からそれぞれを眺め適材適所に振り分けられる。ただ指示がでてるのではなく、なぜかということまで書かれ読者を納得させてくれる。騎馬隊の華やかさに比べ歩兵の地味さはラグビーで言えばFWのように思える。彼らがいるから戦える。そんな思いを誰もが忘れず戦っているシーンはなんともいえない。本当に泣けるのだ、しかも人物に記憶がないと遡ってまた読んだりとそれを流して前に進むことの出来ない名作に感じる。
武人の物語、文人の物語、女性の物語もあれば、凄いのは職人の物語もある。それぞれに命を懸けた壮大な物語です。男なら読め!といった感じです。まさに北方ワールドの集大成のように感じられます!
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第4巻
宋江の逃亡から、李俊、穆弘との出会いとなり同志となっていく。
李逵の活躍も捨てがたかったので、これからの展開が楽しみ。
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時の運が、宋江達の味方につくのか、李富たちの味方につくのか‥いやーな予感漂う巻。李富の人間くささに、親近感を覚えた。
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いよいよ大きな騒乱が巻き起ころうとする中、青蓮寺の李富がその阻止に動く。火がつくかつかないか嵐の前の静けさのような巻。
鄆城から雷横が締め出され、梁山泊を目指して出奔する。宋江は、江州に向かう旅で、保正の息子である穆弘、李俊、李逵と出会い、替天行道の考えを共有する。
梁山泊が国としての体制を整える中、宋江は各地に火をつけるべく旅する。青蓮寺はその動きを察して、南の江州と梁山泊近くの楊志が治める二竜山で賊徒を相当すべく動き出す。
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気になる終わり方したなぁ。ここに来て、梁山泊側、というより宋江に身の危険が一気に漂い始めた。馬桂も勘違いのまま、李富と恋に落ちたし。でも、李富がこのまま青蓮寺としているのか、もはや少しわからない。馬桂の為に梁山泊側にならずとも、危険があれば逃げ出す可能性も僅かながらある。女が原因で大成できない例もある。しかし、まずは江州編がどう決着つくのか楽しみだ。