紙の本
映画より面白い
2015/08/31 07:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽんぽこ仮面 - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画「ことの終わり」ではピンとこなかった登場人物の心理がみっちり描き込まれててとても読み応えがあります。もう主人公にどっぷり感情移入してしまって胸をかきむしる想いです。
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過去にある人妻と関係を持った経験のある小説家が主人公。
ミステリ的なプロットを利用しており、『謎』に当たる部分も勿論あるのだが、それよりも主人公を中心とした人間関係と信仰についてに惹かれた。
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カトリックの価値観を十分に把握できていないと読みにくいんじゃなかろうか、という危惧があったんだけど、いや、むしろ、「神」の問題が前景化した後半の方がぐいぐいと入り込めた。
特に、ヒロインの聖性が繰り返し主人公に突きつけられていく後半の展開は、実に小説らしいダイナミズムに満ちていたと思う。
語る自己の語られる自己の対象化のあり方、もうちょっと具体的に言うと、語られる自己における「罪」(もしくは自己における「神」の意味)をどのように対象化しているのか、というのは十分に読み取れなかった。
作家が、「語る自己/語られる自己」の間の距離を十分に方法化していないという気がしたけど、これはこちらの読解力の不足のせいか、どうか。
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信仰心・過ち・嫉妬・妬み カトリックへの理解が浅い部分で、一部難解な処もあったのだが、嫉妬と執着心から来る機微・行動は、読んでいても十分に『痛み』を感じた。 “懺悔”という行為を、深く考えさせられた事は未だ無かったかも。
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本当の愛について、とても深く書かれている本。女の人が読んだら、最初からサラが主人公であるベンドリックスを思い続けてた事に気付ける気がする。男の人はどうしてこうニブチンなの?思いながら読んだ。
あとこの話は、くっつくとかくっつかないとか、不倫は駄目だ、みたいな低俗な話ではないのですよ。と「不倫する女性は駄目ってこと?」とセロハンテープより薄っぺらい感想を言ってくれた友人に伝えておきます。
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江國香織『東京タワー』の中で、登場人物が読む前と読んだ後で何もかも違ってしまったと言っていたので、興味が湧き読むことにした。が、キリスト教関連の知識が無さ過ぎて、よく分からなかった。文章は読みやすかったんだけど。
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ちょうど自分が信仰に興味を持ち始めていたところだったので、不信仰と信仰の間で揺れ動くサラの心情には強く関心を引かれたし、深く胸に響くものがあった。恋愛小説というよりは信仰についての小説として読んだ。海外の小説にもかかわらず物語が不信仰の状態からスタートというのは意外だったが、日本人としては信仰ありきで始まるよりも馴染みやすかった。
サラの言葉として、
〈親愛なる神様、と私は言った――どうして「親愛なる」なのだ、どうして?――〉(180P)
とあるが、これは欺瞞をえぐるなかなか鋭い問いだという気がした。小説の中で愛と憎しみは繰り返し対比され、強い執着という点で同根の表/裏の現象であると強調されるが、実際には神を愛することの方だけが正しい信仰として認められる。信仰には初めからそういう排斥があるし、それによって原理的にもたらされる不幸もある。そういうことが示されているのかなと思った。
そういった信仰における不条理の表現もさることながら、何よりこの小説のすごいところは、神や信仰に対する心情の微妙な変化を非常に敏感に描き出しているところだと思う。特にサラの不安定に揺れ動く心理描写は素晴らしく、何度も胸を打たれた。また、ベンドリックスやスマイスを含めることで、信仰に対する気持ちのあり方の主な形式が数パターン示されているのも素晴らしい。どの心情のあり方も、経緯を思えば納得できる。この小説は、人と信仰の関係を考えるうえでとても参考になるのではないかと感じた。現時点でも強く胸を打つものがあったが、描かれていることの半分も意味や感情を汲めていない気がするので、いつかもう一度読み直したい。
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20世紀文学最大の恋愛小説
らしいですね!最初はミステリぽかったのが段々哲学的な話に。
私は信仰を持たないので、宗教の話は哲学に変換されてしまうのですが。
どうしようもなく好きなら、他のことは全部二の次でよければ楽なのに。信仰は人が社会的規範に沿うための枷にすぎないのかもなぁとも思う。
他では得られない読後感(カタルシス?)は訳の手柄もあると思います。
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前半はサスペンス要素もありつつ、ドロドロの不倫ドラマかと思いきや、メインテーマは信仰と宗教。信仰によって人生が豊かになることもあれば、信仰が足枷となって自由な生き方を阻まれることもある。それでも最期は信仰を持つ者の方が救われるのだろうか。信仰を持たない、と強く主張する主人公もまた、ある種の信仰に傾倒しているように思える。無宗教のわたしには登場人物の気持ちを完全に理解することは難しかったけれど、無宗教だからこそ、信仰を持つという生き方についてもっと知りたいと思った。
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「サラを憎しむことはサラを愛することにしかならず、自分を憎しむことは自分を愛することしかならない。」
恋愛と憎悪がみごとに描かれた重厚な純文学小説。主人公が一人称視点で、詩的な語り口でひたすら心情を吐露していく。ミステリー的なプロットも交えながら、ストーリーが展開する。
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新潮文庫の名作新訳コレクション「スタークラシック」シリーズからピックアップした一冊。
恋愛小説とも、不倫小説とも言えると思うが、そのベースにあるのは宗教。ただ、サリンジャーの『フラニーとズーイ』ほど宗教色が濃く出ていないので、飲み込みやすい。取り上げられているのは紛れもない三角関係なのだが、決してどろどろしたものではなく、むしろ深い読後感が残る。神の存在を問いながら、愛そのものの存在を問う。果たして愛はそこにあったのか。人妻との恋に落ちた自分は許されるのか。ミステリー風なテイストもあるものの、自己の内面や暗部を赤裸々に描きながらの展開は重厚だ。人間の心の深いところに触れた感覚がじわっと来る。
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主人公ベンドリックスがサラに抱く身勝手とも言える愛,サラがベンドリックスに抱く静かで純粋な愛,そこに戦争,サラの死と信仰が交錯する.死の直前のサラの心にあったものが本当に信仰であったかは,実は分からないと思うし,一方,ベンドリックスは神の存在を頑なに否定するが,彼が拒めば拒むほど,実は神に取り込まれていっているようにも思える.
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江國香織さんのインタビューで紹介されていて手に取った一冊。インタビューが印象的だったので。
恋愛小説のようで、実は信仰や宗教について問いかけている小説。
宗教があまり身近でない私にとっては、キリストの歴史等よりもよっぽど信仰について考えさせられた。
主人公はあることをきっかけに信仰と向き合わざるを得なくなるが、主人公も信じていなかったからこそ、頑なに拒否すれば拒否するほど、実は神を信じ始めているのだと思う。
偶然を偶然と捉えていたはずなのに、そこに意味を見出だし始めると…と、日頃の自分の都合の良さも思い知らされた。
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初めてグレアム・グリーンの本を読みました。神への信仰や激しい嫉妬、憎悪、罪の意識、愛とは何か?を絡まり合う人間関係のうちに問う作品。カトリックの信仰に馴染みが薄いので理解や共感が難しかったですが、話の筋を追うだけでも充分に面白い作品でした。主人公の小説家が一番人間らしいように思えます。サラはとても愛情深く、それこそ神のように持てるだけの全ての愛を人に与えようとする。でもサラの内面は複雑だ。第三部の彼女の日記はもう一度よく読む必要があるかもしれない。映画の方も見てみたい。
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男女の恋愛における心理劇小説かと思っていたら、これは信仰をからめた深い物語でした。心理ミステリーみたいな趣もあり、後半は夢中で読破。傑作です。