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『晴天の迷いクジラ』は各自それぞれに喪失を抱えた由人、野々花、正子の三人が訪れる場所に迷い込んでいる象徴的なクジラがいる。まるで先祖帰りして陸を目指すかのようなこの巨大な生物の行動は自殺に似ている。三人は「鯨の胎内」に入り再び出てくるという死の世界から戻って来るような通過儀礼の代わりに、その町で(彼らと同じように)大事なものを失った人とある種の偽装的な「家族」のような日々を過ごす。そして、死のベクトルから生のベクトルに向かって行く。それは癒しに似ている生への渇望であり、柔らかな日差しが差し込んで冷えきった体の緊張が解かれるような喜びのようにみえる。
闇をきちんと見据えた上での光。それは共存し、どちらかがなくなることはない。彼らは死の側(絶望)から生の側(希望)に少しだけ向かいだす。そして、僕たちは出会った人たちとすべて別れて行く。得たものはすべて失ってしまう。あなたも僕もやがて消えて行く存在だ。
だけど、いつかやって来る喪失と向かい合いながらも諦めずに日々を生きて行くこと。それは、死を見据えながら毎日を生きて行くということだろう。そんなふうに、それでも誰かと生きていきたいと思える小説が『晴天の迷いクジラ』であり、窪美澄という作家の作品の骨格にはあると思う。
ほんの少しの光や温かさが冷めきった心をわずかばかりに癒す、完全には癒せなくてもそれで少しだけ笑えたら、前に進めたらそれはとても素敵な事だと思うから。
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デザイン会社社員・由人、デザイン会社社長・野乃花、女子高生・正子の3人は、死にたいと思っている。
主要登場人物が死にたくなった背景を描き、クジラを見に行く様子を描く。
女性作家にありがちな『悩みがリアル』戦法。
リアルな悩みは出口がないから、ただただウツになる。
迷いこんだクジラは、その後どうなったのかは分からないけど、一旦は海に戻れてよかった、と思う。たぶん、良かった。
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デザイン会社勤務の由人は失恋と激務でうつを発症.社長の野乃花はつぶれゆく会社とともに人生を終わらせる決意をする.二人は人生の最後に港に迷い込んだクジラをみるために車を走らせる.道中,母との関係で心を壊した女子高生の正子と出会う.彼女もまた死を求めてさまよっていた.
誰しも人には語れない傷を抱えているもの.もがき,苦しみ,そして傷つきながらも生きていく.果たして,そこまでして希望を探さねばならないのだろうか・・・
ふと,そんなネガティブな考えが頭を過ってしまった.
興味深い作品でしたが,ストーリとしてはちょっと,まとまってない印象を受けました.
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倒産したデザイン会社の社長と社員、途中で拾った女子高生の3人で湾に迷い込んだクジラを行く話。
死んでしまうのはクジラを見てからにしよう…、クジラと周辺の人達と過ごすにつれて少しずつ変わっていく3人。
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「死にたい」と思う気持ちと、自死を選ぶまでの距離が、うんと離れていますように…と願う。私にも、どの人にも。
疑似家族ゆえの調和に、深く納得する反面で切なくなった。
してほしかったこと、したかったこと。
他の誰かじゃなく、かけがえのない相手に伝えられるといいな。
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生れ落ちた環境の中でがんぱって生きてきた。けれど、どんなにがんばっても、うまくいかない。窪さんはそんな人生を描くのが上手い。いろいろな人生があっていろいろな苦しみがある。もう生きるのはいやだと思った時、もっと違う世界があると知れば救われるのかもしれない。
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社長と社員と女子高生がクジラを見に行く話。
迷っても悩んでも苦しくても
失敗しても失恋しても後悔しても
生きていたほうがいいのかな。
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人は色んな悩みを持って生きている。絶望からの脱却。生きてるだけでいい、死ぬ気になればなんだってできるし、自分以上の悩みを持つ人だってたくさんいる。クジラを見て自分を見て空を見て、未来を見る。自分と照らし合わせられる、わかりやすくいい本だった
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本って、本当に良いものだなと思った。
本を読んでいると、この主人公のような体験をしてみたいと思うことがある。
遊園地や水族館、花火大会、旅行、スカイダイビング・・・。
本の中の世界に、良い意味で影響されることで、世界が広がってゆく。
でも、時には、あまり体験したくない出来事が書かれていることもある。
人は、簡単に壊れてしまう。死んでしまう。
この本を読んで、改めて教えてもらった。
大切な人の全てを受け入れて、何かを求めるんじゃなくて、ただ、自分の傍にいてくれる。それだけの事が、とてつもなく幸せなことなんだと。
悲しい思いをするために生まれてくる人なんて一人もいない。みんな、幸せになって良いんだよと言っているような気がした、心が暖かくなる小説でした。
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このお話の主要キャラの3人、皆それぞれ死にたいなって追いつめられているのですが、
自殺考えている割には自分ではない誰かが自殺しようを考えているのを目の当たりにすると「死んだらだめ」って思うところが矛盾しているというか、人間くさいというかなんか好きでした。
後は3人がくじらを見に行った先で出会ったばあちゃんが死について語っているとこが好きでした。
亡くなった大切な人の代わりにやりたいことをなんでもやってやろうと思った事や、
実は亡くなった後もそばにいるような気がして、何かにつけて心の中で話しかけていた事。
大切な人を失って「自分だけ幸せになっていいのか?」って思ってしまいそうなところを「その人の代わりにやりたいことやって幸せになってやる!」ってところがステキ。
失って悲しい気持ちを忘れることで吹っ切るのではなく、その人を忘れずにいて、前向きに生きていく。
かっこいいばあちゃん!
読んでいて驚きとかハラハラとかある感じではないけど、登場人物達それぞれの悩みや辛さ、それを乗り越えていく様を見守りたくなるようなお話でした。
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誰しも色々と悩みを抱えているものだなと、改めて思います。
それでも、生きないとですね。
生きてさえいればって素晴らしく思いました。
ただそれだけで、きっといつか良いこともありましょう‼︎
無ければ無いで、死ぬときに後悔すればそれで良いですね。
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2013年本屋大賞6位
「死にたい」と思った3人が出会い、湾に迷い込んだクジラを見に行く話。
本の4分の3が三者三様の「死にたい」と思うまでの生い立ち。
かといって取り立てて感情移入するほどでもなく、逆に腹立たしく、憂鬱になってくる。
でも、そんな「負」の状態が、3人が出会ってからの最後の4分の1は…
マイナス×マイナスはプラス?
それとも
毒を以て毒を制す、ってこと?
いつの間にか泣いてもーたぁ。
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過労と失恋のダブルパンチで鬱になった青年由人、暗い過去を捨て起業するもあっけなく会社を倒産させてしまい自殺を考える女社長野乃花、過保護な母に育てられ精神を病んでしまった高校生正子。死を考えた3人が、それぞれの想いを引きずりながら、湾に迷い込んだクジラを見に旅をする。3人や周りの人々の抱えるつらい過去や現在に気が重くなりつつも、最後にはそれでも生きていく希望が湧いてくる。自分がどれだけ恵まれているか思い知る。
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14/07/20読了
素敵な話だった。
母親と離れろと言われ、田舎を出てデザイン会社に勤めるものの彼女にフられうつになった由人。
貧しい家庭から妊娠して"玉の輿"になったものの子どもをおいて上京し、おこしたデザイン会社を潰すことになった野乃花。幼くして亡くなった姉を通じた母親との関係に苦しみ、初めての友人を亡くして逃げだした正子。
3人が、迷い込んだクジラを見に行くものがたり。
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独りは淋しくて何かココロにひずみが生じるのかもしれないけれど、親子の確執というのもまた、ココロの基本になってしまうのね。切なく哀しい、だけど前を向ける、そんな小説。ばあちゃん、半端ない。泣ける。