紙の本
大阪を楽しもう
2014/10/05 16:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ところ点 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宇野浩二の「橋の上」、織田作の「大阪の女」、岩阪恵子の「おたふく」が、大阪の街に人生の機微を投影した心に残る作品だ。他に、幻想・SFもの、ミステリー系、捕物帳など色々あるが、全体としては玉石混交か。
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大阪にゆかりのある作家による、大阪をテーマにしたアンソロジー。
条件は上記2点なので、純文学と娯楽小説という区別もない。その結果、他に類を見ないユニークなアンソロジーになったように思う。まさか、横溝正史と織田作之助、小松左京が1冊の本の中で並んでいる目次を目にすることがあろうとはw
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大阪の作家による大阪を舞台にした短編アンソロジー。
それぞれ全く関係がない話でありながら、不思議と微妙にリンク(戎橋や道修町、太閤さんの抜け穴から梅田地下街迷路)したりして、個々の話の面白さとともに、作者の言う“ラビリンス”的要素も含めなかなか楽しめた。
特に、最初のほうの今まで触れたことが無かった昭和の香りが溢れる話になかなか味わいがあり、流石に織田作之助、横溝正史など只者ではないと改めて思わす。
一方、岩坂恵子とか芦辺拓などよく知らない人(失礼)だったけど、千林が舞台!だったり、あの人が曽根崎の新聞社に勤めていたりで、これらもなかなか良かった。
しかし、私のように九州から出てきて大阪に住み着いた者には、知った地名を舞台にしながら興味深い話が展開されるのが結構楽しめるものの、他にどういう人がこの本を手に取るのだろうねぇ。
地名に馴染みがないとイマイチ興が乗らない気もするし、梅田地下街が迷路と言っても新宿辺りと比べれば大したことないような気がするし、東京の人はこれは手に取らないだろうなぁと思うと、他人事ながら売れ方が気になる。
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大阪をテーマにしたアンソロジー。編者の有栖川有栖は以前より「戯画化された大阪」でない「大阪」をテーマに据えたものを発表していたが、このアンソロジーでもそういった大阪の魅力や味わいを持たせた作品が集められています。「ボケとツッコミ」も「粉もん」も「でんがなまんがな」もない大阪を堪能できます。
収録作家は宇野浩二、横溝正史、織田作之助、小松左京、堀晃、田辺聖子、有明夏夫、岩阪恵子、芦辺拓、柴崎友香。なるほどという顔ぶれで純文学からSF、ミステリとジャンルも多岐に富んでいます。
お気に入りは「梅田地下オデッセイ」(堀晃)。梅田地下街に閉じ込められた人々の話。ただでさえ迷宮と呼ばれる地下街を舞台にし、パニックものにするのかと思いきや、思いも寄らぬ方向へと導かれます。
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大阪――ここは数多の物語を生み出してきた迷宮都市である。
宇野浩二 横溝正史 織田作之助 小松左京 堀晃
田辺聖子 有明夏夫 岩阪恵子 芦辺拓 柴崎友香
ミステリ、SF、純文学。
ジャンルを越えた傑作小説11編を人気作家がセレクト。
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【収録作品】宇野浩二「橋の上」/横溝正史「面影双紙」/織田作之助「大阪の女」/小松左京「大阪の穴」/堀晃「梅田地下オデッセイ」/田辺聖子「コンニャク八兵衛」/有明夏夫「川に消えた賊」/岩阪恵子「おたふく」/芦辺拓「天幕と銀幕の見える場所」/柴崎友香「火花1/火花2」
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大阪人の、大阪人による、大阪人のためのアンソロジー!?
いつも大阪を舞台にした物語で楽しませてくれる有栖川有栖さんが編者という事で思わず手に取りました。
普段はまず読まないような作家さんやジャンルの作品にも触れられて、自分の読書の幅が広がりそうな気がします。
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これはいい。大阪に住んでる自分にとっては、土地勘があるだけにさらなる深みに触れられる。いろんな時代のこの街の面白味がいっぺんに味わえる。
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『銀二貫』(高田郁著、2009)でなにわの商人魂に感涙して以来、大阪を舞台にした小説・時代小説を探してきた。
『プリンセス・トヨトミ』もページをめくる手が止まらなかったけど、もっと小説に、大阪に、夢中になりたい。
そんな中、本書の背表紙が目に留まる。
相変わらず資料を見つけるのだけは得意である…
見つけたは良いけど、またいつものパターンで飽きてこないか聊か不安に。
要らぬ心配。
ページをめくる手が止まらん。
短編集だから飛び石をジャンプして渡ってくように次々と大阪にまつわるストーリーに出会うことができる。
有栖川有栖氏(編者)のストーリーのチョイスがまた良いセンスしてる!!
私のお気に入りは、
・面影双紙(横溝正史)
・川に消えた賊(有明夏夫)
・天幕と銀幕の見える場所(芦辺拓)
さすがは横溝氏!
どうにかなっちゃいそうな位、ゾクゾクの連続。ラストにとどめを刺された。
有明氏の捕物帳はシリーズを通して読みたいと思った。新旧が混在した維新後が舞台になっている時点で面白いやろし面白いに決まっている。笑
恐らく大阪が東京をしのぐマンモス都市だった頃が背景であろう芦辺氏によるミステリー。
奇想天外でまさにラビリンスに相応しい世界観。「何でもあり」の大阪だから尚更奇々怪々に映って見える。
なかなか良い出発点を見つけましたえー。
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大阪に関わるアンソロジー10編。大阪を指すのは大阪府でなく大阪市だなと思った。水の街、食の街、地下街、子どもを叱る他人の大人、大阪城。じわっと纏わりつくような文化を感じる。2019.11.6
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大阪、いやナニワを舞台とした短編小説を集めたアンソロジー。
世間で思われている「大阪」ではなく、自分たちも含めた土着関西の人たちが想う「古き良きナニワ」を感じる作品ばかりなのが、昭和生まれ大阪育ちの俺には実にうれしい。
王道オダサクは外せない。宇野浩二、おせいさん、あたりは随想っぽい小説、小松左京の作品はプリンセストヨトミっぽい。その合間合間に横溝正史や芦辺祐、有明夏夫とミステリーを挟むのがアクセント。ミステリーに固執しない有栖川有栖のセンスの良さ。
そして「ラビリンス」ときて大阪が舞台なら、絶対外してほしくない堀晃の「梅田地下オデッセイ」の存在感がすさまじい。1970年代のウメチカを舞台としたSF小説なのだが、古さを感じないアドベンチャーSFである。初読は大学時代なんだが、30年以上もたって、この本で再読できたことの喜び。今読んでも面白かったことの感動…
大阪人じゃなくても楽しいと思うが、大阪人であればあるほど、このアンソロジーははまれるはず。
ひな壇芸人の大阪弁に「こんなん、大阪ちゃうわ」と感じているクラシック関西人は、是非この本を読んでみてほしい。
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大阪は大都市でもあるし住民の気質など物語を生みやすい土地柄やろうと思います。でも最近は全国的な均一化で少しずつ特異性は薄れていってるようにも思います(特にキタは)。そこで暮らす人間としては生きてるだけで物語になりそうやった時代のお話を読んでみたいかなと。
■心覚えのための簡単なメモ
[△]宇野浩二「橋の上」/宇野浩二さんは持ってた本を最近全部売ってしまいました。E橋は道頓堀川ということでひっかけ橋(戎橋)かしら? 哀歓を淡々と。
[△]横溝正史「面影双紙」/人骨模型のひみつ。堀割が近いということで道修町の東端、高麗橋の南あたりが舞台か? 当時の地理は知らんけど。
[△]織田作之助「大阪の女」/戦後、喫茶店を営む雪子は、娘の葉子と道修町のボンボン島村の浮わついた恋に時代が変わってたらエエなあと思う。
[△]小松左京「大阪の穴」/友人でヌケ穴研究家のSはついに真田の抜け穴を見つけだしともに穴の中に入ると・・・
[▽]堀晃「梅田地下オデッセイ」/ぼくが生息していたのは主に三番街から阪急ファイブ、阪急と阪神の間、泉の広場、富国生命ビル、東梅田駅周辺のエリアでした。「ウメチカ」にラビリンスを感じここで閉じこめられて生きていくことになったら・・・と考えたことのある人は少なくないと思いますがそんな妄想ができるような雰囲気がどことなくありました。この話じたいは好みでないですがどこかに好みのウメチカラビリンスの話があるかもしれません。現在規模はさらに大きくなっていますがそれにしても「ホワイティうめだ」とはまた間が抜けてて想像力が働きにくいつまらない名前になったものです。大阪に似合わへん・・・これからも謎な場所への敬称として「ウメチカ」と呼んでいくことでしょう。
[○]田辺聖子「こんにゃく八兵衛」/「芦刈」の説話とタノキのコンニャクハ兵衛と旧知のさえへん中年男須賀サン。取り立てて言うほどのこともない雑談ですがなぜかたのしい。
[○]有明夏夫「川に消えた賊」/「海坊主」こと赤岩源蔵親方が手がかりをほとんど残さなかった牡蠣船連続強盗事件を追う。事件そのものよりナニワの捕物帖の風情を味わうのが吉。
[○]岩坂恵子「おたふく」/千林商店街の路地にあるうどん屋「おたふく」を営む美佐子の日々。大阪っぽい。そう前の話でもなさそうやし千林で暮らしてたことがあるので親しみ感じました。
[△]芦辺拓「天幕と銀幕の見える場所」/娯楽の殿堂「楽天地」(表紙カバー絵にある建築)を楽しむ記者と少年、そして・・・
[○]柴崎友香「火花1/火花2」/舞台はどこらへんやろ? 「眼鏡橋」という記述があったりするので大正あたりでしょうか。一度好奇心で自転車で渡ったことがあるようなぼんやりした記憶があります。この作品は「大阪っ!!」て雰囲気が滲み出ています。