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棚の書いた「国」の話を読み終え、ピスタチオの生涯をふたたび俯瞰したとき。
宮澤賢治の「グスコーブドリの伝記」を思い起こした。
しかし似て非なることは明らかだ。
水、木、鳥。梨木香歩の作品を読むときに、そのひとつひとつの名前や特性に目を向けずにいては大切なことに気づけないとずっと思っている。
賢治を研究していた私には、やはり同じに見える刹那がある。
しかしその違いはあからさまだ。
梨木香歩の作品には「匂い」が漂っている。「死」が身近である。おおよそ人として生きるにおいて避けられないもの、そのすべてが必ず描かれている。人が忌み嫌うものほど、ことさらに。
イーハトーブのような理想郷を求めることなく、描いてはいけないと自らに課するようなサンクチュアリ(聖域)も設けることなく、すべてをあるがままに描いて、人の生と死の匂いがぷんぷんとする、生臭いファンタジー。
それが、いい。
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主人公の名前が翠、彼女が選んだ名前は『棚』。
棚は誰もがその作品を一度は目にしたことのある『ターナー』からもじった。
勉強不足で知らなかったがターナーは緑を描かない作家だったらしい。
そこから敢えてつけたのは、自分とライターである自分を分けるためだったのだろうと最初は解釈していた。
そして、彼女は物語の中盤から仕事と個人的な理由のため、アフリカへ行く。
アフリカというと、日本人のイメージでは緑のほとんどない赤茶けた草原が続く風景だ。
ますます緑から遠ざかっていく。
しかし、最後、彼女がたどり着いた場所は緑で埋め尽くされている。
まさにピスタチオグリーンに。
ふと思い出したのだが、植物の『緑』は実は彼らが使わない光の色。言い方は悪いが残りかすなのだ。
私たち人間は植物のグリーンに癒されるが、彼らは実はグリーンではなく、透過した光に過ぎない。
棚は後半、霊媒的な役割を背負うことになる。
縁もゆかりもない紛争で行方不明になった女性のもとにその片割れを導くのだ。
そして、さらに巻末の『物語』は棚の中に湧いてきたものを棚という触媒を通じて完成させる。
『翠』は『緑』を取り込まず『ターナー』のごとく素通りさせる。
彼女がそこにいることで、ひとつのことが回り始め物語が生まれていく。
棚はあちこち移動するが、その行動はどちらかというと受け身である。彼女が逆らうときはそこにいく必然があり、何かによってきめられているからだとそんな結果になっていく。
梨木作品によく登場する『場』という概念。
それが非常に凝縮された物語だった。
表紙のように鮮やかで濃密な緑の小説。
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人にはいろんな側面がある、玉葱みたいに。
私の皮をむいて行って、最後に残るものは、この本に書かれている生き方と同じ方向を向いているのではないかと、何度か思った。
死者の眠りのための物語は、存在することへの承認と分かち難く結びついてる気がして、ここはまだ自分の回答が出ない。
ゆっくりお休みと、言われたいと思うけれど。
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本屋で出会った本。
今の自分に必要なんだなと思う。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❁
2015.08.14 読了
立ち止まり立ち止まりでようやく。
アフリカについてからは一気読み。
東京で起こる、棚に起こる出来事、その棚の気持ちに共感していた。
やっぱり最初に惹かれたのは、前線の話。前に雨だと具合が悪くなるという方を知っていてその事を思い出したり。自分でも天気に左右される事あるなと思っていた。この本はきっと今の自分に必要だなって。。
アフリカについてからは、アフリカの人達の描写が気になった。
その日暮しとゆうか、自分も近いかもしれないと思いながら読んでいた。
途中読んでいて怖くなってしまい、一気に読んだのも。三原さんと出会うまでかな??ナカトと行動を共にするまでは、何か怖さがあった。
最後の巡り巡って辿り着くのはびっくりしたけど、納得だなぁと思いました。
絵で、木になってしまう女の人の絵があったなぁと思いました。
最後の物語も良かった。不思議な言い伝えの絵本を読んでいるような感じ。
梨木さん2冊目ですが、他の本も手にとってみようかな。
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作家の女性(小説家ではなく、文章を書く仕事?)が、亡くなった知人の足跡を辿り、アフリカの地で呪術医という現地文化を知る話。
「人が病や死といったものに向き合うときに必要なのは物語だ」というようなテーマについて書かれている。
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図書館で借りて面白かったので、自分でも購入することに決定☆ どんどんと、何かに動かされるようにして進んでゆく主人公から目を離せなくなって、一気に読んでしまいました。力強いおはなし。
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梨木さんのこの地に足が着いているのにファンタジックなところがとても好きだ。
それも実際にもしかしたら感じるかもしれない、
世界と繋がっていくのかもしれないというこの
感触もたまらない。
洪水とダバ。
それが最後に濁流のような勢いで現地アフリカの
人を巻き込んで巻き込まれて繋がっていく所は
本当に身体を締め付けられるようだった。
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『西の魔女が死んだ』に小学5年生に出会ってからというものも、私は梨木香歩さんのお陰で、少しずつ死を人間であるべき最後の姿と理解できつついます。(まだまだとっても怖くて突然泣きたくなりますが…)
梨木香歩さんの自然と魂と死をゆるやかに糸を紡ぐように結びつける文体、読んでいて安心感してしまいます。ちょうど、大学の授業で目取真俊さんの『魂込み』を扱い、これまた題名を見ての通り魂のお話だったので(こっちは沖縄)レポート作成にあたりも助けてくれそうです…!
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読んでいるときは、どんどん引き込まれていき
この本の世界観にひかれていくのだけど
結局、どういうお話だったのか
つかみどころがなく、わからない
人間のエゴな生活や考え方ではなく
自然に寄り添い、自然に習い、
水、鳥、雨、風、土、全てが意思をもって
動き関連しあっているよう
アフリカの不思議な民話とピスタチオの話
どうにもこうにも、まとめられず説明できない
不思議な読後感の本でした
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梨木香歩ワールドということで★4つ。
中盤からの何かに導かれてゆくようなストーリー展開はさすがのワールド。
結末はちょっといつもと違う雰囲気?
雰囲気とも相まって不思議な感じの本でした。
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梨木香歩の小説は、しっかりと芯がとおっていながらも、どこかふわふわと柔らかい感触が印象的だったのだけれど、今回はとても力強くて少しこわいほど。
高野秀行のノンフィクションと「ガダラの豚」「13」ぐらいでしか読んだことのなかったアフリカに一段と興味がわきました。
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静謐な文章、眩惑のアフリカ。なんだかわからないままにそれでも貪るように読んだ。読後もやっぱりよくわからないままなんだけど。この人の文章の持つ、不思議な引力。
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梨木香歩のピスタチオを読みました。
棚という名前で通している女性ライターがアフリカのウガンダに取材旅行に行くことになります。
出発の前には飼い猫の子宮に腫瘍ができてしまったり、アフリカで取材をしていた友人の男性が亡くなったという連絡が来たり、不吉な出来事が重なります。
アフリカの呪術師の取材の中で、棚はナカトという女性と知り合いになります。
ナカトは幼い頃に双子の姉妹のババイレをゲリラの襲撃で連れ去られてしまったのでした。
棚とナカトはババイレの消息を追ってウガンダの中を旅していくのでした。
この物語で描かれているアフリカの現実を思いやると気持ちが暗くなってしまいますが、その中でも人々は明るく暮らしているのでした。
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冬場の東京→香港は意外に長い。2冊は確実に読める、出来れば3冊手元に置いておきたいところ。1冊目は初物シリーズ、梨木香歩。全く知識無かったけれど、珍しくブクログを流してて目にとまった作品。ははあ、これはある種のファンタジーと言えば良いかな。面白いのは、展開は早いし、物語はどんどん進んでいくのに、文章からたちのぼる印象が「静謐」そのものであること。そして最終章、主人公が手がける物語、ここは正直捉えるのに難儀したけど、ファンタジーのファンタジーたる所以かなあ。アフリカ・ウガンダと東京郊外、生と死。死者が抱いて眠るための物語、そして全体を通して緑。不思議な世界だけど、嫌いじゃ無い。一度いってみたいよね、アフリカ。
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自身で気づいているかどうかにかかわらず、アフリカは、すべての人が密かに郷愁をおぼえる土地なのではないでしょうか?
主人公は文章を書くことを職業にする女性なのですが、何かに導かれるようにしてアフリカに向かいます。彼女にとって、アフリカは初めての土地ではありませんでした。因果に導かれるような主人公の体験が、この地球をめぐる命の物語として紡がれていきます。
ここに描かれている死生観、世界観をもとに、物語の解釈を全面的に読者に委ねるような作品で、読後も尾を引くお話でした。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2