紙の本
時代を語るまくら
2015/12/22 23:01
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投稿者:人麻呂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
立川談志の落語のまくらは、時代に密着している。その時々の世相をブラックな視点で批評することで、結果的にそれは時代の暗部や愚かさを暴きだしている。すぐれた落語家は、同時代のすぐれた観察者であるということが、この本を読めば納得できる。
紙の本
芸としての毒舌奇行
2018/09/25 22:31
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投稿者:和田呂宋兵衛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伝説となるほどの毒舌奇行の人である。「二日酔い記者会見」で沖縄開発政務次官を棒に振り、それをマクラに爆笑を取る無茶ぶり。今日びの毒舌を売りにする芸人、タレントなど、裸足で逃げ出すだろう。だが不思議なことに、いわゆる破滅型の芸人ではない。落語協会を飛び出して立川流の「家元」を名乗り、育てた弟子達は今や落語界の一大勢力となっている。落語のマクラを集めた本書も、一見無茶苦茶を言っているようで、芸への強いこだわりが感じられる。生涯、「洒落のキツさ」をギリギリまで追求した求道者と言えるかも知れない。
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現下の原油価格下落について、いくつかの経済誌が特集していると知り、購入のため近くの書店に行きました。
本業であるところのローカル紙の記者として、燃油価格の値下がりについて取材して記事にするからには、背景をある程度理解しておきたいと思ったのですね。
自分で言うのも何ですが、なかなか殊勝な心掛けです。
ただ、書店に行くと、本読みとしてまずチェックしたいのが新刊コーナー。
単行本の新刊コーナーを一通り眺めた後は、文庫本の新刊コーナーを眺めました。
「立川談志まくらコレクション 談志が語った〝日本の業〟」
タイトルを見て、2秒後には手に取って、7秒後にはレジに並んでいました。
談志ファンとしては人後に落ちないと自負している私です。
まあ、そんなだから、足元を見られて、アマゾンからはしょっちゅう「末永さん、談志関連で今度、こんな本が出ましたよ」とメールが送られてきます。
「コイツ、談志に関する本なら何でも買うだろう」と踏んでいるんですね。
事実、そうなんだからしょうがない。
便乗本と思しき本も含めて、かなり買っています。
うくく。
本書は、談志が高座で実際に語った「まくら」だけを選んで編集したもの。
本編とまくらが全く関係がないことで知られる談志ですが、まあ、とにかく落語とは関係なく、社会の出来事や自身の近況について歯に衣着せず語っていて飽きさせません。
特に社会ネタは、一般の常識からすればかなり不謹慎。
このレビューにその一端を書くだけでも、読む人が読めば眉をひそめるでしょう。
でも、談志はいくら不謹慎で反社会的なことを言っても、人間が元来あったかいんです。
シャイですしね。
あくまで一人の談志ファンとして評ですが。
談志の本やCDはかなり持っているので、本書に収められた「まくら」も既知のものが大半でした。
それに、やっぱり文字起こしした「まくら」より、実際に高座で語られた「まくら」を音でそのまま聞く方が私はいいかなぁ。
それで★は3つ。
ただ、小噺やジョークは文字で読んでも面白いですね。
本書で初めて知った小噺やジョークもいくつかありました。
「好きな小噺に、サバンナを行ったら、ライオンにバッタリ出っくわしちゃって、逃げりゃあ後ろから来るだろうし、前にも進めないし、ともかく、奴の眼を見てる。向こうも、こんな顔して、こっちを見てるんだってね。そこで『心配するな、おれも五千円で雇われた』って言えばいいんだけど(笑)、そんなこと言わないんだってさ。こいつが、じっと見てる。一分、二分、三分、どれほど長かったことか。冷や汗をかいたままね。するとライオンが『私は食前の祈りをしてるんですけど、あんた何やってんの?』(笑)。」
次のジョークも知りませんでした。
「その時分の、ケネディだかなんだか、アメリカの親分と、フルシチョフだかだれだか、東側の親分が体力で優劣を決めようってんで、クレムリンの周りを二人でマラソンして、当然若いからケネディが勝ったら、翌日のプラウダ紙にこう書いてあったと。
『わが同士フ���シチョフは、健闘の暁、二位に食い込んだが、ケネディはビリから二番目であった』と(笑)。まあ、こういうような書き方をするところに、向こうのジョークがあってね。日本みたいに解放されていると、こういうのがないのかも知れません。」
こういうふるったジョークが、海外にはいくらもありますね。
談志は、海外のジョークを愛した人でもありました。
あ、経済誌買うの忘れてた。
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家元のまくら。で、ファンにとってはそれ以上でもそれ以下でもない本。
というのは、本書に残されたのは綺麗に整形された家元の発言という「情報」だけであって、家元本人が著した原稿の呼吸ともまた異なるからだ。
で、家元贔屓としては違和感が残る。家元の言葉を家元ではない誰かが喋っているような違和感。これは最後まで拭えなかった。
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談志さんの昭和40年代から平成18年までの「まくら」スペシャル。
理屈っぽくて、発言が危なすぎだけど、常に世の中の事、落語の事を深く考え分析して、逆説的に笑いに持っていく才能はすごいと思う。
自分を誉めすぎ、相手を馬鹿扱いしすぎだけど、終盤は体調も悪く、自殺しないでいるのがやっとなんて発言も。
「芝浜」などが聴けるQRコード付き。
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落語のまくらとは、本編に入る前に、ある種のウォーミングアップのように、噺家が話す部分のこと。これによって客席の注目を噺に集める。実際には、まくらは「話す」のではなく、「振る」というらしい。まくらを振るのだ。
先日、立川談春の「赤めだか」を読み、談春はもちろん、立川談志に興味を持ち、談志の振った「まくら」の部分だけを集めた本書を読んでみた。
そうなると、談志のまくらと実際の落語を聞きたくなる。そういう時にスマホというか、ネットは本当に便利だ。You tubeに、談志の画像がたくさんアップされており、話しぶりを堪能出来る。
「赤めだか」を読む前は、特に落語に深い興味があった訳ではない。テレビで見ることはあるが、実際に寄席に行ったことは、記憶では2回だけ。
まだ何かが分かったというレベルではないが、興味深い世界だと思う。