微視的お宝鑑定団

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投稿者：みーちゃん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

東海林さだおの本は、いつも読みたいなあ、と思っているんですが実際に手にすることはほとんどありません。理由は単純で、本の版型もふくめてシーナさんのものに印象が似ているにでつい比較してしまう。絵は違いますし、世界も違うんですが、もっぱら出しているのも同じ文藝春秋だし。Ｂ級グルメなんて、絶対に東海林さんの世界なんですけど、でも勢いで言えばどうしてもシーナさんに軍配となってしまうわけです。

ただし、小市民的な世界となると、この力関係は逆転します。こういう言い方をすると変ですが、シーナさんは活動の範囲がともかく広い。どの本かは忘れましたが、一年の半分以上は移動しているはずで、そこには国内はもちろん海外も含まれています。食事をする場所も、お店は当然としてアウトドアも多い。自炊もよくしている。その点、東海林さんは専らお店。だから、私たちには参考になるんです。

ところがです、この本で扱われるのはＢ級グルメではなくて、お宝なんです。シーナさんと比べてばかりで恐縮ですが、シーナさんがいわゆる骨董、美術といったお宝を集めたという記事をほとんど見ません。ただし、実用的なものでコレクションになっているようなものはあります。例えばカメラ。それからテントで読書する時のライトの類。でも、本で読む限り、執着していません。案外簡単に捨てる、というか人にあげたり交換をします。

では、私のイメージする東海林さだおのお宝って何だ？　となります。仕事の関係で言えば、ペン先とかインク、或いは絵の具。それに紙。それからインスタントラーメンの袋。それからドンブリの類。でも、それ以外は思い浮かばない。ま、私は彼のエッセイ集をほとんど読んでいないので、基礎データ皆無状況のなかでの、想像なんですけど。要するに高級品っていう感じは全くない。

そこらへんは装丁の和田誠もよく分かっていて、『微視的お宝鑑定団』という雰囲気がよく出ています。といっても、それに寄与しているのはなんといっても東海林さだおの絵ではあるのですが。でも、初出を見ると『オール讀物』2006年5月号、2007年8月号～2009年4月号（「男の分別学」を改題）とあるのには驚きました。「男の分別学」なんてちっとも面白そうじゃありません。その点、「微視的（ちまちま）お宝鑑定団」と改題したのは正解です。

いよいよ、目次に従ってお宝拝見となります。

・台所お宝鑑定団
　其の一　知られざる実用の逸品たちに魅せられて：東海林の趣味、台所用品の全てを楽しい漫画とともに味わう。タレかけが私好み・・・
　其の二　古式ゆかしき道具たちに触れて：そうですか、天突きですか、物は知ってましたけど。ちなみに欲しいのは親子鍋・・・
　其の三　舟を一隻買ってみたのだ：舟の話より、ビリー化するおとうさんの絵が好き・・・

・深川発、はとバスの一日：私もいつか乗るのかな、で、お昼は麦とろかな・・・
　
・脱力リーグ　マスターズリーグ：私はやっぱり大リーグ・・・
　
・Ｂ級銀座ぶらぶら歩き：戸越銀座、看護婦時代によく利用しました・・・

・清貧電鉄おさかな旅行：夫なら全行程を歩くと思います、銚子電鉄・・・

・対談　東海林さだお×牧田善二
　間違いだらけの糖尿病予防：目からウロコの内容、必読です・・・

・微視的生活入門
　其の一　目のつけどころがパンツでしょ：確かにパンツの値段を夫には言いにくい・・・
　其の二　ズボンの深い闇にせまる！：社会の窓から出入りするものの価値観の相違・・・
　其の三　ネクタイは無用の長物か？：ネクタイの新しいスタイル、でもイマイチ・・・
　其の四　ベルトの穴に隠された謎：そうですか、真ん中のベルト穴を使うのが正しい・・・

・大島でくさい！　うまい！　のぶらり旅：大島に調布から飛行機で、っていうのが新鮮・・・

・めざせお大尽！　昼間っからの芸者遊び：確かに、高級料亭のランチサービス風の感が・・・

・夢混（夢の混浴）よ、いずこ：小さな夢よのう・・・

・飲んだぞ日本一の居酒屋で：名古屋についでがあったら行ってみよう・・・

・対談　東海林さだお×藤原智美
　よぼよぼでもいいじゃないか！：でも、結局元気で好かれる老人がベストか・・・

お宝鑑定があるのは、最初だけなんですが、台所用品を集めているのは知りませんでした。しかもです、家庭で日常的に使うものではなくてプロ用のものが多い。ただし、決して高価ではありません。高くても数万。でも、面白いです。ああ、職人さんはこんな道具を使うのか、って思います。普通ならそれで終わるのでしょうが、東海林はそれを購入する。で、それを一度は使って、あとは仕舞う。使う、といっても水を入れて動作確認するだけで本格的調理は滅多にしない。

ためになったのは、対談。これは立ち読みでいいから一読をお勧めします。それと日本一の居酒屋です。私は長距離の出張がないので、頭に入れておくだけですが名古屋方面にお出かけの方には貴重な情報でしょう。それと大島です。といっても、私が興味を抱いたのは「くさや」ではなくて調布からでる飛行機の話。この本を読んだ後、どこでか忘れましたが誰かが「島民割引っていうのがあるんだよね」と言っているのを聞きました。まさに「ちまちま」がぴったりの世界・・・