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紙の本
キュン死の記憶
2019/06/08 23:54
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
少年や少女の頃に見た不思議な光景の、どれが事実で、どれが夢だったのかは、だんだん曖昧になっていくだろうが、その出会った瞬間を思い起こさせられると、疼くような切なさにおそわれる。そのどれかは本当に魔法だったのかもしれないとすれば、なおさらだ。
「恋のお守り」は、どこが魔法だったのかよくわからないが、少年にとって勇気もまた魔法なのだとすれば、いや全くその通りなのだが、魔法は確かに存在する。
「マライア蝿」もちろん少女は鳥にも虫にもなるし、でもそんなことはすぐに忘れてしまうのだろう。それだけに儚い。
「プリンセス」魔法の時間もあれば、魔法が解ける時間もあって、それ全部まとめて魔法。
「名人」だが魔法が解けた時の恐怖だけは、生涯忘れないのではないだろうか。
「ミス・ダヴィーン」それがいつか解けることがわかっていた魔法だったとしても。
「つむじまがり」魔法でも幻想でもなく奇妙なものというものもある。それが一生を左右してしまうことがあるかもしれない。
「熱狂」時には自分自身の中で起きる不思議というものもある。
「奇妙な店」それから老人の中に蓄積された不思議なもの、ふとした瞬間にそれを垣間見てしまう。
「クルー」不思議というのは、自分に向かってくるのではなくても、現実感を失わせてしまう効果もあるらしい。
「オール・ハロウズ大聖堂」大人、あるいは聖職者でも、恐怖はある。ホラー映画でよくあるのだが、一般人なら失神しそうな恐怖でも、日常の一コマのように流せる人たちのこと、なんかすごいですよね。
幻想は、超自然的なものに限らない。不思議なお守りや、何か恐ろしいものだけでなく、子供の時に目にする虫や植物だったり、さりげなく存在する装飾品などの中にもある。いつか忘れてしまう不思議な経験は、ふとした日常の中で思い起こされ、苦しいけれど喜びでもあった胸きゅんな記憶が呼び覚まされる。そのしびれる感覚が、僕らの長い人生をかたちづくっているのだ。