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「副業解禁」で得られる3つのメリットとは?
知っておきたい、失敗しない副業制度の進め方

これまで日本企業の多くは就業規則で「副業禁止」を定めていることが一般的でした。しかし、ここ数年、副業を解禁しはじめた会社を目にする機会が増えてきました。なぜいま、このタイミングで副業解禁の動きが広がりつつあるのでしょうか。また、副業を解禁することは企業にとってどんなメリットがあり、どのように進めれば、企業と個人双方にとってwin-winの関係性を築けるのでしょうか。自分自身、3年前から副業を続けており、同時に企業人としては人事・採用に関わる身であることから、複業解禁にまつわる疑問を考察してみました。


「副業禁止」は世界の非常識?

今年の2月に、ロート製薬が、他社やNPOなどで働ける「副業制度」を導入したことが話題になりました*。その後も、『「副業禁止」を禁止しよう』というサイボウズの青野社長による記事が話題になるなど、ここ数年で、「副業」や「パラレルキャリア」など、本業以外に収益源を持つ働き方に関するキーワードを目にする機会が増えたように思います。* 日本経済新聞2月24日記事より

Google trend 2004年以降の「副業」というキーワードの推移

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しかし一方で、未だに多くの企業は就業規則で副業を禁止しています。「平成26年度 兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」(経済産業省)によれば、副業を認めていない企業が96.2%を占め、容認している企業はわずか3.8%、推奨している企業はゼロでした。

そもそもどうして、日本企業では「副業禁止規定」がこんなにも一般化しているのでしょうか。日本にいると当たり前のことと感じてしまいますが、世界においては普通のことではありません。もちろん、競合にあたる会社の仕事はできない、機密保持は絶対、などの規定はありますが、基本的には業務時間外(個人の時間)を尊重するため、その時間に何をしていても自由だというのが、大勢を占める考えのようです。

高度経済成長期の形骸化した終身雇用制度を引きずる日本

日本において「副業禁止」がこんなにも浸透しているのは、高度経済成長期における成長モデルとその慣行がとてもマッチしていたためではないかと思います。もともと「御恩と奉公」の文化がある日本では、「終身雇用」と「年功賃金」という御恩を企業が与える代わりに、残業・休日出勤・転勤などは当然のことだという奉公の気持ちが働いていたのでしょう。

これは決して皮肉っているわけではなく、供給より需要が勝る社会情勢や、若者の多い人口ピラミッドなどの社会背景においては、このモデルが有機的に機能していたのだと思います。しかし今、時代背景は当時と変わっています。日本のGDPも日本企業の売上高も、そして労働者の所得も「右肩上がりが自明」な時代は終わりました。そうなると当然、効果的な働き方も変わるわけです。

その結果、「一社だけで稼ぐ」よりも、本業と並行して副業を行うことで収益源を複数持つ方が、メリットが大きいのでは?という意識が、専門的なスキルを持つ人たちの間で浸透し、個人側のニーズに応える形で、ここ数年で急速に企業側の副業解禁の動きが広がってきたのです。社員の副業を認めることなくして、優秀な人を採用することや、つなぎとめることが難しい時代に突入しつつあるのです。

私は幸いなことに会社の理解もあり、3年以上ものあいだ、会社の業務時間以外で、NPO活動や起業を行ってきました。また会社勤務の身としては、中途採用業務を主に行っているため、「副業をしている身」でありながら、「副業したい人を雇用する会社側の視点」も持ち合わせていると自負しています。

そんな私の視点から、「会社が副業を解禁することによる3つのメリット」と「これから副業を解禁するための3つのステップ」を以下では記したいと思います。

副業を解禁する3つのメリット

それでは、社員が副業を行うことが一体どんなメリットを会社にもたらすのでしょうか。いくつかの理由を完結にお伝えしましょう。

1. 副業はコストゼロの社員研修

副業には大きく分けて2パターンがあります。一つは本業で得たスキル・経験を活かした副業。もう一つは本業では得られないスキル・経験が得られる副業です。例えばWebマーケティング担当者が、顧客の集客に課題を持つNPOでプロボノとして働くことは前者でしょうし、営業担当者が趣味のイラストを活かしてクラウドソーシングでイラスト制作の仕事を受けることは後者にあたるでしょう。

そのいずれも、本業に活かせる余地は十分にあることは想像に難くありません。そうした「実践的な研修」のような役割を果たしてくれるのが副業なのです。また、副業をはじめると、本業だけをやっていた時には出会えなかった人に会えたり、得られなかった情報が得られたり、スキルが身についたりします。そういった情報・スキル・人脈を掛け算することによって、それまでは出てこなかった発想が湯水のごとく出てくるようになります。

2. 副業は組織のトランザクティブメモリーを増やす

最先端の経営学では、組織にとって共有されるべきは“What”そのものではなく、「誰々さんならそのことを知っているはずだから、彼に話を聞けばいい」という“Who knows what”であるという「トランザクティブメモリー」が大切だとされています。

もし、社員のネットワークが自社内に閉じていると、自社の社員分しかトランザクティブメモリーが機能しませんが、副業を通じてネットワークが社外に広がると、その分組織全体のトランザクティブメモリーが増大することになります。

なお、トランザクティブメモリーと経営に関してもっと詳しく知りたい方は、米ニューヨーク州立大学で助教授を務め、現在早稲田大学ビジネススクール准教授である入山先生が書かれた、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』がオススメです。トランザクティブメモリーに関する記述以外にも、目からウロコの最先端の経営学が記されており、発見が多い本ですので。

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3. 副業を認めると、人材採用の選択肢がひろがる

正社員にするか、契約社員にするか。それら現在の選択肢に、副業を可能にして正社員を雇うという選択肢を加えることはどのような意味をもつでしょうか。たとえば、広報の専門家やWEBマーケティングのプロフェッショナルを雇いたいけれども予算が限られている場合。「副業」や「兼業」を可能にすることによって、予算のわりに専門性の高い人材を呼び込める可能性は高まることでしょう。

メリットの1つ目にも通じるのですが、職種によっては、人材を1企業で囲い込まないことが、より専門性を高めることになる場合があります。この見極めと活用の意思決定を行うことで、人材採用の選択肢を増やすことができるのです。

また余談ですが、世の中の多くの人が副業に興味関心を持ちつつある反面、いまだに多くの企業では副業が禁止されています。そのような状況の今、「うちは副業OKだよ」と謳うだけで、実は大きな差別化要素になってしまうのです。

例えばエンファクトリーという企業では「専業禁止」と、明示的に副業を推奨した結果、多数のテレビ・新聞・Webメディアでも取り上げられ、応募が急増したそうです。あと数年もすれば副業OKが当たり前の時代になる、と考えれば、この魔法が使えるのは今のうちだけかもしれませんね。

これから副業を解禁するための3つのステップ

ところで、副業解禁に関心はあるけれどもなかなか踏み切れない、という企業はどうすればいいのでしょうか。以下に、副業解禁に向けた3つのステップをおすすめします。

1. 副業禁止のメリットとデメリットを比較する

就業規則で定めている以上、「副業禁止」にもまったく理由がないわけではないはずです。そこには何かしらのメリット(或いは副業を禁止しないことによるデメリット)があるはずです。「我が社ではなぜ副業を禁止しているのか」「副業禁止のメリットは何か」を棚卸しすることからはじめましょう。

例えば研究重視の会社であれば、その知的財産が他社に漏れることを怖れるでしょう。営業力重視の会社であれば、社員が日中に外で他の業務を行うことに危惧を抱くかもしれません。

しかし、冷静に考えてみると、知的財産の他社への流出は機密保持を徹底すれば良く、副業禁止がベストな解決策とは言えないことが分かります。 また、副業禁止規定があっても、サボる営業マンはサボります。一方で、副業禁止にはデメリットもあります。知らず知らずのうちに、社員の成長機会を奪っていたり、ネットワークを広げる機会を奪っていたり、優秀な人を採用し、つなぎとめるチャンスをみすみす逃してしまっているかもしれないのです。

「もし、複業を解禁したら?」と実際に社員に問いかけてみることも大事です。「実は、こんなことにチャレンジしたいと思っています」「知人から力を貸してほしいと言われて、プライベートで手伝っているんです」など、「副業禁止規定」があることで顕在化していなかった社員の「やりたいこと」が浮かび上がってくるはずです。

一事が万事、で画一的にルールを決めてしまうのではなく、ルールを当てはめたい理由と、当てはめなくてもいい可能性、その両面を見つめてみることが、会社にとってプラスとなる副業解禁の第一歩なのです。

2. 既に副業を解禁している企業から学ぶ

わたし自身も以前、「日本で副業を認めている会社は具体的にどれくらいあるのだろう?」と思い、 主要な企業をまとめてみました。調べてみると、先行して副業を認めている企業は、意外とあるものです。それらの会社がどのように副業を活用しているのか、見てみるのはいかがでしょうか。

全面的にOKな企業もあれば、「申請制度かつ本業と競合しない範囲内」という条件つきで許可している企業、果ては、社員の70%が地方在住という企業もあります。サイバーエージェントの藤田社長などは、「悩んでいます 社員の副業を認めるべきか」というタイトルでブログを書いており、その「悩み」のプロセス自体を見ることができます(結果、副業を認めたようです)。

やみくもに副業を全面解禁するのではなく、まずは、各社の「副業の解禁の仕方」を学んでみる。このステップをふむことにより、自社に適した副業解禁のかたちが見えてくるでしょう。

ケーススタディに関して、ネット上だけでも断片的な情報を集めることはできますが、先行事例を深く知るためには書籍も有用です。例えば、副業OKな企業の代表ともいえるサイボウズが2015年末にその内実を語った、『チームのことだけ、考えた』という本があります。

かつて「離職率が年間28%」にまで達してしまったサイボウズが、悩みながら、「社員が辞めない会社」に変わっていったプロセスは、とても参考になることでしょう。

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3. まずは「やってみる」ことが大事

副業禁止のメリット・デメリットをきちんと洗い出し、他社のケーススタディを一通り学んだら、あとは「はじめの一歩」を踏み出すだけ。副業解禁によって、社員が仕事に集中しなくなってしまったらどうしよう?など不安は尽きませんが、最後は社員を信じて決めることが大切です。サイボウズのように「申請すら不要」というのが不安であれば、まずは「申請制」という形で解禁してみるのも、一つの方法だと思います。

実際に副業を解禁した後、問題が発生しそうな場合はルールを設けたり、リスクを最小限に抑える制度設計・制度運用をしていけば良いのです。

例えばロート製薬は「勤続3年以上の国内正社員を対象とする」という制約を設けた上で、約1,500人の対象者に限って副業解禁を行っています。社員へのヒアリングや他社事例の調査などを経てシミュレーションを行った上で、対象を「勤続3年以上の国内正社員」にしているのだと思われます。会社によって状況は異なると思いますので、できる範囲でシミュレーションをした上で、まずは試してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

以上、「副業を解禁する3つのメリットと、副業推進の3つのステップ」をご紹介しましたが、いかがでしょうか?

さいごに

実際に副業を行うこの私も、3年前に個人事業をはじめ、昨年自分の会社を登記した後も、未だにサラリーマンで居続けています。その理由は、仕事そのものが面白いこと、組織文化自体が好きなことに加えて、副業を認める環境であることが非常に大きいです。あまりにもやりたいことがたくさんあるので、どんなにやりがいが溢れる会社でも、副業がNGな時点で選択肢からは外れてしまいます。そして、会社が副業を認めてくれているからこそ、会社に対してしっかり価値を発揮しよう、とも思います。

皆さんの会社ではどうでしょうか?心の底では副業にチャレンジしたい!と思っていたり、実は会社に黙って副業をしていたりする社員が、必ずいるはずです。いきなり全社的に副業を認め、推奨することは難しいかもしれませんが、まずはその人たちの声を聴くところからスタートしてみることをオススメします。

ライタープロフィール

 

西村 創一朗

株式会社HARES CEO。1988年生まれ。大手人材総合会社で法人営業を経て、現在は新規事業開発とキャリア採用を兼務する一方、NPO法人ファザーリングジャパンにて最年少理事を務め、昨年6月には自身の会社として株式会社HARESを設立。大学1年時に高校生の頃から付き合っていた彼女と結婚し、19歳で父親になり、現在は三児の父。プライベートブログ「Now or Never」は月間30万PVを超える。ニュースキュレーションアプリNewsPicksでも精力的に発信を続け、フォロワーは46,000人を超える

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