婚活に悩んだ日本人女性が、なぜアメリカでマッチングサイトを作りヒットさせられたのか!?
世界の最先端が集まるニューヨークにて、アジア人に特化した婚活サイト「EastMeetEast」を立ち上げ急成長させている日本人女性がいます。それが、創業者で代表の時岡真理子さんです。
しかしこのヒットの背景には、時岡さん自身が、婚活で悩んだ経験があるのだとか。インタビュー前編では、日本でOLをしていた時岡さんが、なぜアメリカでアジア人向けのマッチングサイトを創るに至ったのか、その道のりを伺ってきました。
「このままでいいのだろうか?」とキャリアに悩んだ20代
―― 時岡さんは、元々は外資の大企業で勤務されていたんですよね?
時岡真理子(以下、時岡) アメリカの大学でコンピューターサイエンスを学んだので、卒業後は日本に戻り、オラクルという外資のIT企業に入社しました。
英語を活かせる会社だったので、最初は楽しく働いていたのですが、次第に「このままでいいのかな?」と将来のキャリアを悩み始めました。当時は自社の会計・経理ソフトウェアを、大企業に販売する営業をしていて、規模感でいったら何十億円ものコンサルティング提案。スケールは大きかったけれど、そのために毎日深夜まで働き続ける人生に、意義を感じることができませんでした。また職場で成果を出している素晴らしい先輩もいましたが、自分が目指している姿ではなかった。私はもっと仕事を通じて社会に貢献している、人の役に立っていると実感できる仕事がしたかったんです。
そんな時に、社会起業で有名なプログラムがあるオックスフォード大学のMBAを知り、寝る間も惜しんで1年間勉強し、無事合格。30歳の時にイギリスに留学しました。
オックスフォード大学に入ったら、世界がガラッと変わりました。同級生はみなモチベーションが高くてキャリアビジョンもあって、すでに社会起業をしている人もたくさんいた。すごく刺激を受けましたね。次第に自分も、いつか起業したいと思うようになりました。
DeNAの創業者と、イギリスで共同創業
―― 卒業後は、何をされたんですか?
時岡 オックスフォード大学の先輩から「DeNAを南場さんと共同創業した、渡辺さんという方がビジネスパートナーを探しているんだけど」と紹介してもらいました。彼は世界中の恵まれない子供達にも、公平に教育の機会を与えられるプラットフォームを作りたいという想いがあり、一緒に創業するメンバーを探していたのです。「これは私がやりたかった社会に貢献できる仕事だ!」と思い、すぐにYESと返事をしました。それからテクノロジーに強いメンバーも加わって、3人でQuipperという会社を創業しました。
もちろん何もないところからのスタートだったので、大変でした。最初はオフィスもなかったので、マクドナルドで渡辺と毎日夜遅くまで事業計画や経営戦略などを練っていましたね。大企業時代よりも仕事量は増えましたが、でもそれが苦というより楽しかったんですよね。やっぱり自分のやりたいことに直結しているということが、大きかったんだと思います。このQuipperは5年後の2015年にリクルートに48億円で買収されたのですが、それぐらい短期間で急成長しました。
―― 3人で立ち上げた事業が、そこまで急成長した理由はなんですか?
急成長した理由1. しっかりとしたビジョンがあったから
時岡 1つはしっかりとしたビジョンがあったからだと思います。「世界の子供に、公平に教育の機会を与えるプラットフォームを創る」というビジョンに共感して、優秀なエンジニアが入社してくれたり、投資家が潤沢な資金を投資してくれました。
急成長した理由2. スピーディにトライ&エラーをまわしたから
大企業は何かを決定する際も、何人もの承認を経てじっくり実行するけれど、ベンチャーはスピード命。とにかく挑戦と失敗を繰り返して、そこから学んでいかに早く次の施策をするかというのが、ベンチャーが成長する大きな鍵なんです。そうやって教育という軸はぶらさずに、いろんなビジネスに挑戦していく中で、次第にフィットするビジネスを創っていきました。
スピーディにトライ&エラーを繰り返す手法として『リーン・スタートアップ』を参考にしました。ユーザのモチベーション及び行動を最小単位に分けて仮説を立て、その仮説が合っているかどうかを見極める最小限の開発及びオペレーションを実装し、テスト検証を行う手法です。この結果検証を高速で回すことにより、スピーディに事業が進められました
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急成長した理由3. 創立メンバーに経験者がいたから
時岡 DeNAをゼロからあそこまで大きな企業にした経験がある渡辺が、創業メンバーにいたのは大きかったですね。一通り経験しているので会社を立ち上げる際に何をすべきか理解していますし、優秀な人材を採用する際や投資家に投資をしてもらう際も、それが大きな信頼に繋がりました。
―― 順調に成長していった反面、大変だったことはありますか?
時岡 とにかくいかに速く、トライ&エラーをまわすかに力を入れていたので、メンバーに常に同じ気持ちでついてきてもらうことが大変でした。皆の気持ちを一つにするため、「世界の子供達に教育の機会を」というビジョンをひたすら話して、「そのために中・長期でもっと成長できるビジネスがしたいんだ」と伝え続けましたね。
プライベートでは婚活に苦戦する日々
時岡 仕事は順調だったのですが、プライベートでは真剣に結婚相手を探していたにも関わらず、婚活に苦戦していました。イギリスではマッチングサイトを使うのは当たり前で、私も大手サイトを使っていたんですが、なかなかいいお相手に出会えなかったんです。当時は結婚するなら日本人がいいと思っていたのですが、それらの大手サイトでアジア人を検索しても、インド人とかスリランカ人を勧められてしまうんですよ。
海外にはユダヤ教徒向けのマッチングサイトや、インド人向けのサイトがあってそれぞれ成功しているのに、なんでアジア人向けがないんだろうと、すごく困っていました。
最終的には試行錯誤しながら、マッチングサイトで出会った日本人の男性とお付き合いすることができました。残念ながらその彼とは別れてしまいましたが、お付き合いしたいと思える人と出会えたということで、マッチングサイトの可能性を感じました。
オックスフォード大学時代から、いつか自分のアイディアで起業をしたいとずっと思っていましたし、その頃はちょうどQuipperの経営も安定したタイミング。自分が婚活で苦労した経験から、「アジア人に幸せなご縁をもたらせるようなサービスを作ろう」と起業を決意しました。
―― 起業することに不安はなかったんですか?
時岡 もちろん不安はありました。このビジネスは成功するのか様々な角度から分析しましたし、ある程度いい数字がでても、やっぱり不安は消えないんですよ。でもビジネスはアイディア5割、行動5割と思っているので、もしアイディアがダメでも残りの行動5割でなんとかなる。だから最後は気合でした(笑)。そしてマッチングサイトの世界市場は、アメリカが半数以上。やるからには市場の大きなところで勝負したいと思い、今度はイギリスからアメリカのニューヨークに渡りました。
アメリカの婚活事情を徹底分析
―― 「アジア人特化型の婚活サイトを創ろう」と決意して、まず行ったことはなんですか?
時岡 サイトを作る前に、とにかく色んなアメリカ人にインタビューをしました。すると国籍や人種によって結婚相手に求めるものが違うことが分かりました。
例えば白人女性が男性に求めるものは、体つきや目の色などの外見がトップの条件。だからアメリカの大手マッチングサイトでは、男性のプロフィール写真に上半身裸が多いんですよ(笑)。一方アジア人は出身大学や、現在の仕事や年収、どんな食事が好きかなど、もっと一緒に生活できるかなどの内面を重視しているんです。
tinderやokcupidなどアメリカで人気の大手マッチングサイトは、白人向けに作られているので、アジア人が求める相手を探しにくい。だから彼らが理想の相手に出会えるようにと、アジア系アメリカ人を徹底的に分析してサービスを創りました。
―― アメリカではマッチングサイトが普及していますよね。日本でも婚活アプリなどを活用する人が増えていますが、まだまだ使っている人は少ない印象です。そもそもなぜアメリカは、そこまで浸透しているのでしょうか?
時岡 理由は3つあると思います。1つはアメリカ人が合理的だということ。もし出会いを求めてパーティに参加するとしたら、そのためのお金や時間がかかりますし、参加したからといって理想の相手に出会えるかは分かりませんよね?でもマッチングサイトは通勤などの隙間時間でも利用でき、自分の理想の条件で検索できるので、効率的に婚活ができるんです。
ニューヨークに住む私の友人は、マッチングサイトを使ってかなり戦略的に婚活をしていました。1ヶ月以内に30人の男性とデートをし、第2デートまで進めたのは何人かなど、統計もとっていました。さらに第2デートに誘ってくれなかった男性にはその理由を聞いて、KPI分析までしていました。
―― ニューヨークの女性はすごい!恋愛も仕事のようですね!
時岡 昔流行った海外ドラマ「Sex and the City」でもありましたが、ニューヨークは男性より女性の方が多いんです。なぜなら、ファッションやメディア、金融など女性が活躍できるキャリアがあるから。だから男性が少ない分、女性が積極的なのかもしれませんね。
そしてアメリカでマッチングサイトが人気である2つ目の理由に、テクノロジーが進んでいるということも挙げられると思います。FacebookもUberもアメリカ発。様々なものがテクノロジー化しているので、そのテクノロジーを使って婚活をすることも自然な流れなんだと思います。
最後に3つ目は、マッチングサイトへの抵抗感がないからだと思います。CNNの世論調査によると「マッチングサイトは良い出会いを提供するツールか?」というアンケートに半数以上がYesと答えているんです。アメリカはここ10年でマッチングサイトに対する意識がガラっと変わったので、日本でインターネット婚活が常識になるのも、遠くはないと思いますよ。
―― アジア系アメリカ人を徹底的に分析された後は、何をされたのですか?
時岡 テクノロジーの会社なので、まずは開発してくれるエンジニアを探すことから始めました。以前日本で勤めていた会社の先輩で、優秀なエンジニアである江島健太郎がジョインしてくれることになり、制作期間3ヶ月でリリースすることができました。
しかしサイトができても、当たり前ですが最初は登録者ゼロ。登録してくれる人がいないとマッチングサイトは成り立たないので、ニューヨークの凍えるような寒さの12月、コリアンタウンに行ってアジア人を見つけては「登録しませんか?」と声をかけてまわり、100人ぐらい登録者を集めました。
ブレイクのキッカケは動画マーケティング
時岡 最初はアジア系アメリカ人が見るサイトに広告を出していたのですが、一番大きくブレイクしたのは、アジア系アメリカ人のYouTuberとのコラボ企画でした。彼らの動画のファンって、同じくアジア系アメリカ人なんですよね。だから「このアジア人向けマッチングサイト、おすすめだよ」と紹介してもらったら、一気に登録者が増えました。
YouTuberによって動画のジャンルは様々。例えば「オンライン・デーティングについてどう思う?」と色々なアジア系アメリカ人にインタビューする動画や、恋愛のコメディドラマ風に「見た?このサイトにカッコイイ人がいるんだよ」というショートストーリー動画だったり。動画の中でどんな風にサービスを打ち出していったらより効果が出るかなど、トライ&エラーを繰り返して検証していき、最終的に広告が目に入ってからサイト登録するまでの比率が、通常のWeb広告の20倍になりました。
また今の若い子は、基本モバイル。アプリでメッセージを送ったり、モバイルでやりとりすることに慣れているんですよ。そしてマッチングサイトはfacebookなどのSNSと同様に、写真をアップしたり、メッセージを送り合ったりと、そういうアクティビティがないと成り立たない。だからモバイルに力を入れ、ユーザーのアクティビティをより活発にするような機能をつけていったら、ユーザーの継続率も伸びていきましたし、課金も上がりましたね。
ベンチャーはスピードが命
―― 時岡さんがお仕事をする上で、意識していることはありますか?
時岡 いつも意識しているのは、いかに最新の情報をとってこれる環境をつくれるか、ということ。ベンチャーって参考にする本がないんですよ。というのは、常に新しいトレンドを創り出しているので、本が出る頃には古い情報になっている。だから時代の流れを掴み成長できるように、業界関係者のfacebookやtwitterをフォローしたり、最新情報をアプリで一覧で見れるようにしたり、起業家のネットワークを作ることによって、毎日フレッシュな情報を得られる環境を作っています。
人材の採用にもスピード感をもってやっています。昔は数百枚の履歴書を見て、面接をして3ヶ月ぐらいかけて採用していましたが、ベンチャーにとって四半期ってすごく長いんです。それに採用したからといって、その人が結果を出せるかは分からない。だからキーエグゼクティブなどの重要な採用は全員、信頼できる知人経由の採用に変えました。その採用方法に変えてから雇った人は、1ヶ月で採用して1週間目から結果を出してくれました。
―― 「EastMeetEast」は2013年の10月にリリースし、昨年2016年の売り上げは前年比8.7倍。短期間で急成長するにあたって、大変だったことはありますか?
時岡 どこのベンチャー企業もそうだと思うのですが、なかなか投資家が見つからなかったことですね。投資金がほしいベンチャー起業が何百、何千社ある中で選ばれなくてはいけないので、99%断られるんです。
私も何度も失敗しました。でもその時に、ベンチャーキャピタルに勤めている友人に「教科書的なプレゼンだったら決まらない。最終的に投資家の心を動かすのは、魂の入ったプレゼンだ。」と言われました。
そこでプレゼンにはストーリーが大事だと気づきました。自分は何でこのサービスを始めようと思ったのか、どんな想いで創ったのかなどのストーリーを入れ、自分のプレゼンを録音して聞いては何度も練り直し、魂の伝わるプレゼンを準備しました。その努力が実り、最終的には潤沢な資金の調達に成功しました。
この頃に参考になったのは、デール・カーネギーの『人を動かす』という本です。大企業で営業の仕事をしていた時にこの本と出会ったのですが、今でも度々読み返している名著です。
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現代のテクノロジーを使って、たくさんの人に幸せなご縁をつくっていきたい
―― 最後に、今後の目標や挑戦していきたいことがあれば、教えてください。
時岡 EastMeetEastではこれまで、2,200名以上が正式な交際へと発展しました。これをもっと大きな規模にしていきたい。その為にアメリカでよりサービスを拡大していきたいですし、これからはアジア諸国でも展開していきたいと思っています。
私自身が婚活で苦労をしたので、現代のテクノロジーを使って、たくさんの人に幸せなご縁をつくっていきたい。私が今一番追求していきたいのは、これに尽きますね。
インタビュイープロフィール
時岡真理子
EastMeetEast創業者、CEO
株式会社日本オラクルで勤務後、オックスフォード大学MBA取得。DeNA共同創業者の渡辺氏とロンドンにてQuipperを創立し世界の教育プラットフォームを創る。自身が婚活で苦労をした経験から、2013年にニューヨークにてアジア人特化型の婚活サイト「EastMeetEast」を立ち上げる。
EastMeetEastのHP: http://www.eastmeeteast.com
ライタープロフィール
鮫川佳那子(さめこ)
NY在住ライター/ニューヨーク女子部♡主催。青山学院大学フランス文学科卒業後、サイバーエージェントに入社し広告制作・メディア編集・イベント企画運営に携わる。2015年より夫の海外転勤で渡米し、現在はニューヨークの新聞をはじめ様々な媒体でコラムや、海外で活躍する日本人のインタビュー記事を執筆。またNY在住の20~30代女性が約400名所属するコミュニティ「ニューヨーク女子部♡」を主催し、イベント企画運営も行っている。