時価総額1兆5000億円のニトリが大切にする
「成功の5原則」が、いま注目を浴びている
丸善とジュンク堂は、ビジネスパーソンや各界の専門家を主な利用者とする大手書店グループです。その購買データを分析すれば、ビジネスパーソンにとって「いま注目の本」が見つかるのではないか、というこの連載。今回は、9月の「企業研究」分野に絞り、売れ筋のランキングとトレンドを読み解いてみました。
「企業研究」分野の本は社会人にとって、自分の働く業界を知ることに限らず、他業界の事例から普遍的な成功法則や気づきを得る”手がかり”となるものです。また、業界や働き方を知りたい就活生にとっても、秋のこの時期にはニーズが大きくなるものでしょう。企業研究を行うことは、働く上で自分が何を重視するのか明確にするときに役立ちます。
そんな「企業研究」分野において9月のランキング1位となる本は、8月後半に発売された『ニトリ 成功の5原則』でした。日本最大の家具チェーン「ニトリホールディングス」会長・似鳥昭雄氏の著書であるこの本は、なぜこれほどまでに注目されたのでしょうか。
超優良企業を一代で築き上げた似鳥氏ですが、かつては自他ともに認める「落ちこぼれ」だったそうです。この本の魅力は、その似鳥氏が成功した秘密を描いていることなのか。他にも何か注目される理由があるのか。本書の魅力を探ってみました。
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丸善・ジュンク堂「企業研究」書籍 2016年9月ランキング
(2016年8月26日~2016年9月25日までのデータ)
「ロマン」と「ビジョン」がビジネスを大きく変える
「お、ねだん以上。ニトリ」のCMで知られるニトリは、生活に必要不可欠な商品を、誰でも手に入れやすい低価格路線で販売しています。今でこそ、時価総額1兆5,000億円を超える超優良企業へと成長を遂げたニトリですが、似鳥氏自身は完璧な人ではありませんでした。むしろ、自他ともに認める「落ちこぼれ」だったといいます。
似鳥氏は、23歳の若さでニトリを創業。創業当時は「なんとか食べていければ」と考え、すべて行き当たりばったりで事業を手がけていたそうです。また、創業当初の似鳥氏は対人恐怖症で接客がまったくできなかったほどでした。
“ 月に70万円の売上がないと利益が出ないのに、実際の売上は40万円ほど。創業したはいいけれども、いつ倒産するか時間の問題という状態でした。お金がない私は穴の開いたジャンパーを着て、インスタントラーメンばかり食べて、不健康で歯茎から出血するような有様でした。 ”
(『ニトリ 成功の5原則』より、以下引用箇所は同様)
しかし、経営がうまくいかなかった27歳のときに、「状況を変えるヒントがないだろうか?」と視察のために訪れたアメリカで抱いた「ロマン」が、似鳥氏の人生を変えることになります。そこに、人生の師として尊敬する故・渥美俊一氏から教わった「ビジョン」が加わり、似鳥氏のビジネスを大きく変えることになったのです。
「成功の5原則」があれば、落ちこぼれでも再起可能
似鳥氏は、渥美氏の教えをもとにしながら、成功を収めるまでの実体験をふまえて「成功の5原則」をまとめあげました。その5原則とは、「ロマン(志)、 ビジョン(中長期計画)、意欲、執念、好奇心」だと言います。この原則は「どうしたら成功できるのか?」をニトリの社員に示すために考えられたものですが、多くのビジネスパーソンにも通じる原則として、本書で紹介されています。
意外なことに、かつては「のろまなカメ」と思われていたという似鳥氏ですが、渥美氏から「鈍重でもいい、一歩一歩前へ進め」と言われた言葉に支えられ、この5原則を意識したことで成功を掴みました。似鳥氏は、この5原則があれば、マイナスからのスタートでも成功できると唱えています。
“ 落ちこぼれのいじめられっ子だった私が、どうしてこれほど大きな成功を収めることができたのでしょうか。それは、私の考え方が変わったからです。そもそも机上の問題を解く力と、実社会で活躍する力とはまったく別です。(中略)「勉強ができないから、成功もできない」と思うのは間違っています。大事なのは物の見方、考え方なのです。考え方を変えることで人生を変えていけるのです。 ”
成功のその先をイメージすることの大切さ
「成功の5原則」の中でも一番大切なことは、「ロマンを抱くこと」だと似鳥氏は言います。そして二番目に大切なことは、「ビジョンを持つこと」です。
ロマンを抱くこととは、「人のため、世のために、人生をかけて貢献したい」と考えることです。ロマンは「大志」と言い換えてもいいでしょう。
似鳥氏がこの考えに至ったのは、前述のとおり、27歳のときにアメリカの豊かさに衝撃を受けたことがはじまりです。そして、「日本人の暮らしをアメリカのようにしたい」と考えました。当時1970年代のアメリカ文化といえば、日本人にとって実現困難な憧れの対象です。それでも似鳥氏は、「アメリカ人にできて、日本人にできないはずはない」とロマンを抱きました。
このように書くと簡単なことのように思えますが、本書を読んで興味深かったのは、「似鳥氏と一緒にアメリカへ訪れた40人ほどの人々は、同じ家具業界の人でありながら、ひとりとして同様のロマンを描けた人はいなかった」ということです。
“ 他の人たちが、アメリカの家具文化のうちの1つ2つを「あ、このテーブルちょっといいな」という感じで、適当に「いいとこ取り」しようと考えていたとき、私は「日本の家具文化はこれからすべて変わっていく。(中略)」と考えました。 ”
この「視点の違い」こそが、似鳥氏の述べる「ロマン」なのです。そして、この「ロマン」を抱いた似鳥氏の行動が、以前と比べてどのように変わっていったのかも本書では書かれています。結果としてこの気持ちがビジネスを大きく動かしました。本書は、そのようにロマンを持ち、先をイメージすることの大切さを教えてくれます。
似鳥氏は、ロマンの持ち方について、このようにも書いています。
“ ロマンを心に焼き付けるためには、想像してみることです。そのロマンが実現したときに、どんなことが起き、どんな気持ちになるのか、想像してワクワクしてみるのです。 ”
フランスの作家、ジュール・ヴェルヌは、「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」と述べていますが、いかにリアルな想像をできるか、本気で自分ごととして想像できるか、が成功の原則なのでしょう。
いかにして「ロマン」を実現するか
しかし、「ロマン」だけでは夢は実現しません。似鳥氏は、「ビジョンを持つことで、それだけでは漠然としていたロマンが形を持ってくる」と言います。このときの「ビジョン」とは、具体的な目標のことです。
“ ビジョンとは、20年以上先に達成すべき、長期の目標です。目標とする数字とそれを達成するまでの期限を入れた、具体的な数値目標を言います。しかもそれは、達成不可能とも思えるほど大きな数字でなければなりません。 ”
そうして立てたロマンとビジョンの追求には、必ずリスクが伴います。その挑戦において必要となるのが、「意欲」。すなわち、「できそうもないことに挑戦する」気概です。さらに、「目標を達成するまでにあきらめない」という「執念」。そして、ありえないほど高い目標を達成しようというときに必要な、今までとは違うやり方を探す「好奇心」が支えとなるのです。
本書を読むことで、似鳥氏の述べる「成功の5原則」が、具体的にどのようなものなのかがわかります。そしてそれが、時価総額1兆5,000億円を超えるニトリをつくってきました。
成功するための思考法を求めるビジネスパーソンにとって、本書は成功への指針となることでしょう。
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最後に。本書は似鳥昭雄氏が「成功の5原則」を実体験とともに記したものですが、本書を出すきっかけになったのは、2015年4月から日本経済新聞で連載されていた「私の履歴書」でした。
掲載直後から、「ぶっとんでいる」「おもしろい」「そこまで言っていいの?」という評価で話題になった「私の履歴書」の連載も、まとめて一冊の本になっています。似鳥昭雄氏の波乱万丈、破天荒な人生をのぞき見してみたい人には、この本がおすすめです。
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さて、今月の「企業研究」分野の注目本は以上です。10月はどのような本がランクインするのでしょうか。次回の配信もお楽しみに。
ライタープロフィール
hontoビジネス書分析チーム
本と電子書籍のハイブリッド書店「honto」による、注目の書籍を見つけるための分析チーム。
ビジネスパーソン向けの注目書籍を見つける本チームは、ビジネス書にとどまらず、社会課題、自然科学、人文科学、教養、スポーツ・芸術などの分野から、注目の書籍をご紹介します。
丸善・ジュンク堂も同グループであるため、この2書店の売れ筋(ランキング)から注目の書籍を見つけることも。小説などフィクションよりもノンフィクションを好むメンバーが揃っています。