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動物病院の先生が、主に「珍獣=犬・猫以外」の診療について書いた本。また、動物病院をとりまく色々な事情もわかる。
獣医師養成の事情についても記述があるのだが、教わっているのは主に家畜(牛、豚など)のことであり、犬・猫のことをほんの少し、あとはあまり教育らしい教育というのはないらしい。そんな中で、持ち込まれてくる動物の多くが習ったことのない動物。実際の症状や治療の様子を読むと、常に試行錯誤のような状況であることもわかる。
元々、動物病院に縁がない生活をしているので、書いてあるあらゆることが「そうなんだ!」というかんじ。
診療費のこと、使われる薬のことなど。また、医師として飼い主さんに考えてもらいたいと思っていることなど。
素人である飼い主側には厳しいというか、「そんなこと気が付かなかった」ということも多いのかと思うが、本当に動物が好きでプロになった著者の思いが、この本で少しでもわかるんじゃないかと思う。
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ペットとして飼える動物たちに起こる様々な病気や事故。獣医師だからこそ目にする、その現場の最前線を紹介する。
この医院では哺乳類から爬虫類、無脊椎動物まで、幅広い珍獣が舞い込んでくる。それだけにその症状も治療法も多種多様。登場するのは歯が伸びきったハムスター、甲羅が割れた亀、自分の大きさほどのおもちゃを呑み込んだ蛙、巨大に膨らんだ金魚など。いかに自分が普段テレビなどで健康な動物たちしか目にしていないかを痛感するほど痛ましい姿の数々。こういった動物たちと日々向き合っている現場の方々には頭が下がるばかり。
痛いという想いや苦しい箇所を伝えられない動物たちと真摯に向き合い小さな命を助けようとする、声なき声を聞く獣医師の想いや気苦労がよく伝わる貴重な本だと思う。
ペットショップで出会った、保護した、迷い込んで住みついた…動物を飼うきっかけは人それぞれだ。しかし飼うということは、最後まで動物と向き合う義務が発生する。人によっては「可愛いから」「癒しがほしいから」という受け身で安直な気持ちで動物を飼い始める人も少なくないらしい。
飼育することは「飼って」「育てる」こと。毎時間その動物に合った餌を与えたり、排泄を助けたり、ダメなことを覚えさせたり―そういった楽しいことばかりでは済まされないことも十分分かっておかなければならない。尊い命を預かるという心構えと、その間で発生する飼育の苦労も覚悟した上で飼ってほしい、そういった問題提起もされている。
とお堅く書きましたが、元来フランクな先生なのか時折にやっとさせられるエピソードもあり、こういった厳しい視点を持ちつつも柔和な獣医さんが近くにいると飼い主の方は心強いだろうなと思わずにはいられません。
動物を飼育している人、そして特に獣医師を目指す人にはぜひ手に取ってほしい本です。
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文句無しに面白い。動物飼育好きが高じて獣医となった著者による、様々な哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、(そしてそれら動物の飼い主)の臨床記。アマガエルの骨折、亀の尿路結石、などの手術の記録が興味深いだけでなく、文章が上手。
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貧血のトカゲに輸血、体長2㎝のアマガエルを開腹手術、ヘビの大腸ガン摘出など、ペットとして飼育される動物は、犬や猫だけでなく、ウサギ、モルモットをはじめ、カメレオンやカメ、カエル、プレーリードッグ、サル、珍しいものではアリクイなど、さまざまな種類に及ぶ。そして、最新のペット医療では、血液検査はもちろん、CTやMRIなど人間に行うのとほとんど同じ検査や治療を動物も受けることができる。しかし、いわゆる「動物病院」は、その大多数が犬と猫を中心に診療しており、野生動物やエキゾチックペットと呼ばれるこのような変わったペットが病気になったとき、診療してくれる動物病院は少ない。
田園調布動物病院の院長、田向健一先生は、自らが変わった動物が好きだということもあり、哺乳類から爬虫類、無脊椎動物まで、ほとんどすべてのペットの診察を行っている。「具合が悪いアリクイ」や「元気がないタランチュラ」など、初めて診察する動物が来たときに、いったいどのように診断し、治療を行うのだろうか。悪性腫瘍ができてしまったハツカネズミから、ビー玉を飲み込んだカエル、ハリネズミの爪切りなど、「珍獣」診療の、驚愕かつユーモアたっぷりな最新現場を除くことができ、命を飼うということを考えさせられた。
この本は、主にエキゾチックアニマルや野生動物を飼うことの是非について書かれている。そもそも人は、どうして、生き物を飼うのだろう?私も以前、もとは野生動物であった、エキゾチックアニマルに分類されるシマリスを飼っていた。ペットショップで一目ぼれだった。だが、ハムスターとかウサギとかは飼っている友達はいたが、シマリスを飼っていた友達はいない。何を食べるのか、ちゃんと最後まで育てられるのか、そもそも自分に育てられるのか、飼いはじめた後に不安になった。そんなとき、手をさしのべてくれたのが獣医さんであった。動物をちゃんと、一つの命として見るということ、特殊な動物を飼う場合にはリスクがあるということを親身になって教えてくれた。その時の経験と、この本を読んでみて、改めて、当たり前だけれど、動物は物ではないし、自分が思っていることを動物が思っているわけでもない。かわいがって、愛情を注ぐというのはすごく重要で、愛情に勝るものはないが、生き物としてちゃんと見ることが、動物を飼うことの最低限の心構えだと思った。
野生動物を飼うことに、考え方は2つあって、人間は地球の中でどういう位置づけなのかという話になる。生態系のピラミッドの中の一つと考えるか、人間は超越した存在で、自然の生態系になんか属してないと考えるか。野生動物を大切にしよう!保護しよう!と皆は言うが、保護するにもしないにも、これはあくまで人間サイドの思いに過ぎず、もし動物たちに感情があるのなら、「今さらなにを…」という気持ちに違いない。
この本の中で田向先生は、「ペットを飼うのは人間の業にほかならない」と言っている。そう、言葉はよくないけれど、「愛でる」も「消費」の一形態。自分の気持ちや日常の隙間を埋めるため、生き物を迎えたことには代わりない。暮らし方、生活の中でのプライオリティ、病気になったときにどこまで治療をするか、野生動物で言うならば、どこまで守ってあげるのか。選択するのはすべてその動物に関わっている人間である。まじめに考えると、生き物を飼育したがりな自分が嫌いになりそうである。
そんな悶々とした気持ちを抱えつつ『珍獣の医学』を読めたことはとても幸せだと思う。なぜ飼うのか、なぜ人間の感情や常識を投影してしまうのか。動物に対して、「可愛い」「可哀想」の線引きがすごく曖昧な自分に気づく。そして、命を飼うということに、私も田向先生も自問自答し続けていくのだと思う。
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日本の動物病院のほとんどは、犬と猫を中心に診療していて、それ以外の動物(珍獣)を診てくれる病院はそう多くありません。
獣医師の田向さんは、哺乳類から爬虫類まで、他の動物病院で断られるような動物も診察する珍獣ドクターです。レンコンを食べ過ぎた犬や甲羅が割れたカメなど実際の症例から、ペット医療の知られざる現場を伝えます。
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タイトルから固いイメージを受けるが、とても読み易い。少なくとも都心部では、そこいら中に見掛ける獣医医院だが、はて?そもそも何が謎なのやら?
という所から、結構分からない事だらけだったりする。「珍獣」のペット視点での定義、人間の医療との違いや共通点、様々な例、獣医の気持ち、患畜と飼い主の様々さ・ビックリ実例、獣医さんの経済面…。筆者の姿勢が強く描かれていて好ましい。
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大変、大変、大変という印象
3年目の獣医さんが年収300万円
※2010年の本
6年間大学で学び国家資格を取ってこの金額
そりゃ臨床に進む人は減るだろう
爬虫類の患畜の9割は亀
骨折、断踋したほうが良いことも
畜産と犬猫以外はエキゾチック
料金踏み倒す飼い主もいれば
亀が死んだら喪服で引取りに来る人も