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自然に囲まれ、都会から遠く離れた土地。
年老いた父と保育園に通う息子の3人で暮らす看護師の和夫は、
林の中にある町立病院で働いていた。
表題作「ダイヤモンドダスト」の他、3作を含む短篇集。
タイ・カンボジア国境の情景と、信州の自然の情景を行ったり来たりする。
巻末には、加賀乙彦と著者南木圭士の対談付。
「ダイヤモンドダスト」の最後のシーンはとても美しかったです
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和夫が小学四年生のとき、夏になると必ず姿を見せていた、自転車のうしろに氷箱を積んだアイスキャンデー売りが現れなくなった。
その年の冬、電気鉄道は廃止された。
旅客の輸送はバスに代わり、春になると路線は雑草に覆われた。
父の松吉はバスの運転手への誘いを断り、あっさり退職した。
そして、今。
(冬への順応/長い影/ワカサギを釣る/ダイヤモンドダスト)
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浦野所有。
→11/01/30 葉月さんレンタル →11/08/21 返却
浦野レビュー - - - - - - - - - - - - - - -
生きることは哀しいこと。人はただ、死に向かって歩み続けるしかないのですから。
…そんな、あらがうことのできない時の流れのなかで、人は何を感じ、何を思うのでしょう。死期せまる患者と、患者を看取る医師が見るものとは、一体何なのでしょう。
本作の著者は難民救援医療チームに参加した経験をもつ医師です。臨場感いっぱいでありながら、静かにことが進む病院内の描写はさすが! 人の生死をテーマにしていながら、無駄に力んだクライマックスがないのも好感がもてました。とくに芥川賞受賞作の「ダイヤモンドダスト」は超オススメです。
話の後半で、45歳の末期の肺癌患者マイクが、主人公の看護師・和夫に語りかける場面があるのですが、そこにいたる筆致がすごい。美しすぎます。
併録の「冬への順応」「ワカサギを釣る」もいいです。
ぜひ、読んでください。
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記載日: * 2008年09月22日 17:32
僕はあまり小説を読んだことがないのですが、久しぶりに読んでみました。
作者は医者でもあり、本作品で芥川賞を受賞したとか。
始めは妙に表現に凝っている気がしてあまり好きではなかったけど、最後には心に根強く残るものを感じました。
途上国での風景など筆者も僕も見た景色は全く違うでしょうが、なにかそこに共通する「空気」のようなものを思い出させてくれたような気がします。
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生と死を見つめた秀作。人間はいつか死ぬという見地から生を見つめ、死は決して暗い物ではないという。地に足をつけた揺るぎないものを感じる。
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以前、南木佳士氏の「医学生」を読んですごくよかったので、今回は知人に勧めてもらった「ダイヤモンド ダスト」を読みました。
南木氏は現役の医師です。
4編からなる短編集でした。
どの作品も医療についての物語。(南木氏の経験談)
情景描写がすばらしく、美しい文章の中で物語が静かに流れていきます。
「死」がテーマになっているように思います。
「死」が哀しい暗いものばかりではないように感じました。
気持ちが穏やかになれる本でした。
もう一冊、南木氏の「ふいに吹く風」も勧めてもらったので、次はそれを読もうと思います。
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淡々と静かに繊細に綴られた物語であるが、その背後にある葛藤や苦悩が強く心を打ちつける。ダイヤモンドダストという言葉に准えられる抒情。なんとも侘びしい読了後の余韻とともに、これぞ芥川賞受賞作品だと唸らされる傑作。
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高校のときテストで「この南木佳士の芥川賞受賞作品は?」という問題にダイヤモンドダストかダイアモンドダストか迷って印象に残っている作品(笑
テストのときはおじいちゃんがうちに帰る場面しか読んだことがなかったのだけど、実は医局ものだったんですね。
全体的にテーマがどこにあるのか私はよくわからなかったのだけど、たぶん自分が理解できないだけだなぁと思わされました。
後半のほうの水車の話はどこか国語の教科書に載っていそうないい内容でした。
前半の作者の実際の経験に基づいた難民医療の実態、すごくよく描写されてました。
でも実際、私は全体を通して生と死のメッセージを受け取りきれなかったと思う。
もっと精神的に成長したら深い部分が見えてきそうです。
医学生や生きるって、死ぬって何だ?と思っている人に読んで欲しいです。
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「冬への順応」のせつなさったらない…芥川賞受賞作「ダイヤモンドダスト」外国人患者マイクの自らを達観した強さが好き。淡々と死に接していかねばならない著者の医師としての眼、田舎に軸足を置いた作家としての眼、その経験則が個性となっている。
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まだ直木賞/芥川賞作品を続けて読んでいます。
今回は1989年第100回芥川受賞作品。
なんか、読みやすい。
そして、波長が合いやすい。
どぉーしてかなぁ~と思ったら、生年月日がやたら近い。
ごくマトモで、奇をてらっていない。
芥川賞より、直木賞じゃないかと思うくらい。
職業であろう医者の視線から離れていない。
そして、長野という土地からも離れていない。
同じ小説でウソを書くにしても、あまり自分の生活圏から飛躍すると、ウソが嘘っぽくなってしまう。
その点、この作者は自分が体験できる範囲を大きく逸脱することがなく、しかもその範囲の中でイロイロなバリエーションを考え出しているところがエライ。
多分、こういう作家は多作に変貌しないだろうな。
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4つの短編集。いずれも医療と地域が絡む。芥川賞受賞の表題作「ダイヤモンドダスト」が良かった。あとは、文章が少し雑な感じで読みづらい箇所が散見した。12.12.24
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短編集.芥川賞受賞の「ダイヤモンドダスト」以外はいまいち.末期がんで避暑地の病院に入院してきた元戦闘機乗りのアメリカ人宣教師と,認知症がすすみ脳梗塞をくりかえしている主人公の父親(元電車運転士)とが,病院で同室となる.2人はお互いに死期を悟っている様に思えるが,機械好きを共通点に心を通わせる.
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第100回芥川賞受賞作。作者自身が地域医療に従事する医者で、難民医療チームに加わり、タイ・カンボジア国境近くに派遣された経験を持つ私小説的な作品。
「冬への順応」「長い影」「ワカサギを釣る」いずれも難民医療チームに参加した体験が反映。芥川賞受賞作の「ダイヤモンドダスト」は、アメリカ人宣教師と昔草軽電鉄の運転手だった和夫の父が病室で一緒になり話が展開していく。
生と死、家族、老人等現代の重いテーマを日常的に坦々と描き出す手法は見事だが、やはり芥川賞系は私には重い。作者は38歳の秋にパニック障害、うつ病と、究極には生死を突き詰めていってしまうのだろうか。
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1988年下半期芥川賞受賞作。本書には受賞した表題作のほかに短篇を3篇を収録する。これらの3篇はいずれも、著者のカンボジア難民キャンプでの経験を踏まえたもの。もちろん、これらも基本的にはフィクションだが、表題作はより小説としての構想を持って書かれている。手法そのものに斬新さはないが、個性は十分に発揮されている。特に著者が現役の医者であることもあって、日常の中で日頃は意識することのない「死」が、尊厳を持って描き出されている。最後は、ダイヤモンドダストの透明なイメージと共に、読後は静かな余韻と感動に包まれる。
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オススメされて読んだ本。医療団としてタイで働いた色々な人達の、死と向き合ったそれぞれの人生が描かれた作品。なんでもない、平凡に小さな幸せ
を大切にし、与えられた人生を受け止め生きるような優しい印象を受ける。とてもシビアで深い内容を描いているが、受け止めやすく穏やかに読める。オススメしてくれた人の性格がでてる気がした。作品の中で、母を無くした息子に死というものは風のようにやってくる、特別なことではなく誰もが起こりえることなのだとストレートに教えてるシーンがある。このシーンの言葉は、すっと私の懐に落ちた。