紙の本
6月12日FIFAワールドカップ22時開始の一時間前。
2006/06/13 11:16
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2006年6月12日午後10時は、FIFAワールドカップの日本対オーストラリア戦が始まる時間でした。
NHKでは、早くも午後7時半からその一戦の前解説を始めておりました。
たしかに午後10時というのは、たとえば待ち合わせるとしても、
何か中途半端。そういう場合、外での待ち合わせをするなら、どうするでしょう。私なら本屋に入って時間をつぶすとかしそうです。
なぜだか、私はスケートの荒川静香選手を思い浮かべました。自分の演技が始まる前は、たしかヘッドホンをつけて、なるべく前の選手の声援とかが気にならないように細心の注意をはらっておられたその姿をです。
サッカーの試合が始まる前は、なるべく他のことでも見ていよう。
というような気持ちで、ちょうどTBSの月曜ゴールデン映画特別企画「突入せよ!“あさま山荘”事件」が9時からなので見始めたわけです。
新聞のテレビ欄には「1972年2月、長野県軽井沢の『あさま山荘』に、連合赤軍のメンバーが管理人の妻を人質に取って立てこもった事件のいきさつを描く」とあります。番組の時間表の枠には「人質救出に命を懸けた警官たち・苦悩の10日」ともあります。
見はじめると、これが犯人側の心理を描いたわけでなく、警察官の命令指揮系統のむずかしさに腰を据えて描かれているのでした。
そういえば、
最近読んだ池田清著「海軍と日本」(中公新書)に
「昭和18年9月から終戦の日まで軍需省航空兵器総局長にあった遠藤三郎元陸軍中将が回想しているように、前線をそっちのけにして、米国よりも陸海軍の間で戦争をしている観があったほどである。海軍が陸軍を『横暴』『謀略的』と非難すれば、陸軍は海軍に『りこう者』『便乗主義者』『大勢順応』とののしり返した」
「海軍軍人における豊かな外国理解は、彼らの国内政治への関心の薄さと奇妙なアンバランスをなしていた。およそ政治力は、気の遠くなるほどめんどうで細かい日常的事務の処理と、複雑微妙な対人折衝のうちに培われるものである。『板子一枚下は地獄』の伝統と運命観のもとに育てられた海軍士官には、陸上でのコセコセした人間関係を毛ぎらいする風潮が強かった。」(p153)
という箇所があったことを思い出します。
だからって、現代でも傍観者でいていいわけでもなく、
たとえば松井秀喜選手の番記者をしていた広岡勲さんは、
「松井選手から『メジャーに行きたい。サポートしてほしい』と依頼されたとき、僕は迷わず彼が入る球団の職員になろうと決めた」
「つまり、こういうことだ。たとえば球団外部にいても、松井選手の連続試合出場が途切れた後で『なぜ、試合に出さなかったんだ』と主張することはできる。球団や首脳陣にクレームをつけ、批判することはできる。しかし、それに何の意味があるだろうか。
僕が目指したのは、途切れる前に何とかすることだった。それには球団内部にいなければならない。相手の懐へ飛び込まねば本当の勝負はできない。・・」(「こんな時代だからこそ心にとめておきたい55のことがら」p86)
映画を観ながら、10時になったら、
サッカーの試合をコマメにチャンネル替えしながら、結局最後まで映画をみて。
それからサッカー。そう後半のあの試合を見たのです。選手のことや、あらためてジーコ監督やスタッフのことを思い浮べたのでした。映画でいえば、これじゃ黒澤明監督「影武者」の、ラストじゃないか。
ところで、今回紹介した本は、bk1レビューでは、5本かかれており、参考になりました。
電子書籍
深く頭を垂れる
2013/11/10 19:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nobby - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学生の頃、先生が授業を放っぽりだして生徒と一緒に教室で一日中テレビ中継を見てました。
その頃は何が起きているのかほとんど理解しておらず、授業が無いのがただ嬉しかった記憶しか残っていません。
子供心に、警察=権力の手先・悪、左翼=革命家・良い人達と単純に思っていました。
日教組教育の賜物だったのでしょうか?
我が命を犠牲にする覚悟で献身的に治安のために身を捧げた人達に、ただただ頭が下がる思いです。
佐々さんの素晴らしい筆力もあって、第一級の読み物となっています。
若い人達にこそ読んで欲しい。
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戦後の重大事件史の1ページに間違いなく残る、近頃映画化もされたあさま山荘事件を、実際の現場で指揮を取っていた著者がドキュメント形式で時系列を追って書いている。警官も指揮官も人質の無事救出を目指すという到達点は変わらないのに、立場によって言う事やる事が全く違っていたり、実力もないのに地位や年次が上なだけで偉そうにしてる輩がはびこる、警察内部の悪しき習慣が露呈したりと、普段ニュースで見てるだけでは全然分からない醜い部分が満載でありながら、それとは逆に、寝る間も惜しみ命すら献上しても構わないという覚悟で臨む、警官たちの心意気も充分に感じ取れ、凄く読み応えがある1冊だった。この事件当時私はうまれておらず、リアルタイムでの体験は当然ながらないが、これを読み、プロジェクトXでやってた鉄球の映像を頭に浮かべつつ、知った気になることは可能。そしてこの本で、亀井静香代議士が警官であったことや、後藤田官房長官、ライフル銃で狙撃された国松警視総監もこの事件に携わっていたことを知りました。
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非常に面白かったです。現場の緊迫感や情景が頭にすぐに浮かび上がる文章で、はまり込んで読んでしまいました。
「あさま山荘」はリアルでは知らない世代ではありますが、すさまじい戦いだったんだなと思いました。身震いする思いで読んでいました。いや〜、面白かった。
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死者3人、負傷者27人、動員された警察官のべ12万人、報道陣6百人。テレビ中継の視聴率は史上最高を記録。極寒の軽井沢の山荘で何が起こったのか。10日間にわたって繰り広げられた戦後警察史上最悪の事件の一部始終を克明に再現した衝撃のノンフィクション。
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民間人一人を人質にとり「あさま山荘」に篭城した赤軍派と警察との熾烈な戦いの詳細が示されていた。「あさま山荘事件」の背景として赤軍派の引き起こした数多くの事件の経緯が述べられ、その上で「あさま山荘」事件現場でのさまざまな苦闘・民間人救出・犯人逮捕までの事実が詳述されていた。精神的に追い込まれながらも励ましあい、外乱・激論・計画失敗・犯人の抵抗に遭いながらも目標に向かって突き進んだ警察官の直向な姿に心を打たれた。本事件を始めとし無慈悲な事件を数多く引き起こした連合赤軍なるものがなぜ生まれたのかが強烈な問題意識として残った。
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迫真のノンフィクション。こういう事件だったんだ…。現場の刻々と変化していく様子が生々しい。次はきちんと、危機管理本として再読しようかしら。
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読んだこの人の本では『東大落城』が一番面白いですが、これもオススメ。頭で想定している内容と実戦はどれだけ難しいかという(ついでに指揮系統も)いい例。警察側の視点なので、警察官を銃弾で薙ぎ倒していくまったく肉声の聞こえてこない赤軍幹部たちは恐ろしい存在ですが、これ読んだあとに見沢知廉『囚人狂時代』(新潮文庫)を読むと「………こんな人?」という拍子抜けが。<このとき山荘に立て籠もってたうち一人と刑務所で一緒だった人の体験記。
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あさま山荘事件を警察の視点で描いた迫力の一冊。緻密なデータと迫力ある文章で小説仕立てになり、すさまじく面白い。著者は当時の警察側の実質的な指揮者。組織横断の型破りさもあったと初めて知る。
緊迫した状態での悲喜こもごもが活き活きと語られ、一気に読みきった。傑作。
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いろいろな浅間山荘本を読んだが、結局一番リアリティのあるのはこの本。当事者ならではの、緊張感、いらだち、達成感、虚脱感などいろいろな感情が伝わってくる。
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著者がいかに優れているかという自慢話が鼻につきますが、事実を詳細に述べた語り口は迫力があります。
あさま山荘事件をリアルタイムで経験していなかったので、偏った視点とはいえ知ることができてよかったです。
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小学生か中学生の頃に祖母に渡されるもおそらく未読
たぶん途中までは頑張って読んだのですが
挫折したものと思われます
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指揮官の視線で描かれているので、賛否両論あるとは思いますが、この事件をなによりも知ることができる、フィクションを超えたノンフィクションです。
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犯人5人対警官1,500人。これが中国で起きてたら、確実に犯人全員殺されてる。犯人5人対特殊部隊5人、というコストパフォーマンスの良い結果になったと思う。多分ペルーなんかでも。でも、日本ではこういった事件には警察があたるし、そのために機動隊がある。あくまで検挙が目的だから、こんな途方無い非効率な結果に見える。けどそれがこの日本って国のくそったれで馬鹿馬鹿しくありながら、甘っちょろいけど素晴らしい部分だよ。 / けど学生達の投石にしたって、警官が発砲してこない事が分ってるから出来る、甘えがあるから出来てたんだと思う。だからこの事件の犯人達も、殺されないって思ってたんじゃないか、とか考えたけど、総括なんつって平気で仲間をリンチして殺すような連中だから、その辺の覚悟だけは出来てたのかも知れないな。 / 犯人の1人の板東が今でも超法規的措置で国外に出されてそのままだってのは劇的。今の日本から見たら隔世の感だ。俺が生まれてからの日本なんて、バブルがあってサリンと地震があっただけに見える。うーん、激動の時代だったんだなぁと感慨を覚える。 / 鉄球、あれ本当に効果的なんだろうか。うーん。良くわからない。
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前半、自分自慢が鼻につく。中盤、過去の警備実施の話しは少々面白い。警察庁批判が強くなってくる。ラスト、やっぱり自分自慢は止まらない。
結論、「小説」ではないんだなぁ。しょうがないか「ノンフィクション」だし。でも、作者の偏った主張が強い分「エッセイ」もしくは「ポジティブな私小説」の方がいいかも。
映画の方がおもしろい!めずらしいなぁ。