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『蜜のあわれ』は老人と金魚の少女のお話。
金魚の少女といっても普通の人には二十歳くらいの人間に見えるそうです。
実際は生まれて3年。
主人公は酸いも甘いも噛み分けた作家の老人。
彼は我がままに振舞う金魚の化身の少女に言いたい放題言われていますが、どこかそれを楽しんでいる風。
ブリジット・バルドーのお臀について語ったり、通りで幽霊の女を見かけたり。
全編会話で進行する、ちょっと艶っぽくて、ちょっと不思議なお話。
七十歳になる老作家と、時に悪女のようなもの言いをする金魚の少女との関係は、どこか背徳的。
金魚の少女が魅力的に見えるのは、生命力の輝き…なのかな?
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(2009/12/19購入&読了)
「蜜のあはれ」
悪女な金魚とおじいちゃんの恋愛小説だそうな。
金魚・・・気になる。
金魚は悪女じゃなかった。言動が可愛すぎる。たまらん。
不思議な物語だった。
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コケティッシュな金魚とおじさまの「蜜のあわれ」。でも時々その綺麗な尾鰭をひらめかせるように「生き物」の力強さ、貪欲さを垣間見せる描写が好きだった。「子作りしてくる!」ってやる気と健康的な色気を漲らせる金魚に思わずはっとした。
先日「火の魚」がドラマ化されていたので久し振りに読み返したのだけど、やっぱり好きだなぁ犀星…!
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まだこんなちんぴらなのに気が強くてわがままでこまっしゃくれて美しい女、またあるときは三歳の赤い金魚。
小説書きのおじさまは、飼ってる金魚の画を、ちょっと描いた。小さな文章もつけて。
瞳は大きく、お腹はデブちゃんな、出目金。燃えるような朱い色をしている。
のめのめしたあぶら、や、すぼっとしたお臀。おじさまの体の上ではしゃぎ、キスをする。小生意気な口をたたき、おじさまとの恋仲をたのしむ。
おじさまと金魚の子、そのほか、ひょっこり現れて来たおばさまとのやりとりがずっと聞こえている。会話のみで構成する美しい小品。金魚鉢をずっと眺めているような夏を思わせる。
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この中では1番蜜のあわれがすきです。可愛いらしい金魚ちゃんとたまに変態臭いところもありますが優しい上山さんの会話にすごくときめき、癒されました…こんなおじいちゃんと孫のような歳の離れた関係…大好きです
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犀星がいろんな作品で語るものが全部集約されたかのような「蜜のあわれ」金魚のラストが切ない。レビューで語りきれないくらい好きだ。いろんなひとに読んでみてほしい。
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いやあ……オッサンおいこらwwwと云いたくなる内容から、あ、やっぱセンスいいよなあ、という表現まで、幅広い楽しみ方ができてなかなか。どんだけ女好きなんすか室生先生。鏡花センセは強く気高い女性が大好きですが、犀星センセはキレのいい小悪魔な若い女が好きみたいですね(笑)
短篇に一作だけ入っていた詩もよかった。小説でも随筆でも、妙に生活感がありながら、どっかフェティッシュで優美な印象でした。
でも闘病生活の随筆「われはうたえどもやぶれかぶれ」は、最初から最後まで睾丸と排尿と…とにかくそういう話を延々するのでちょっと困惑する。
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友人より借りました。
小説。私小説風。文章は古いタイプ。
「蜜のあわれ」は七十歳ぐらいの老小説家と、若いぴちぴちの女の子の姿になる金魚との対話風小説。
なんとなく、劇調。(地の文がないから、台詞で説明するせい)
金魚(出目金・赤・三年子)との会話が妙に艶かしい。小説家には金魚にしか見えないらしいのだが、尻尾のぬめぬめを舐めてとか、金魚が言ったり、お金をせびったり(すごくせびる)、ヤキモチやいたり、キスしたり。
最後に他の金魚との間に子供を作って、おなかの中の卵は「おじさまの子よ」。
魅力的です、この金魚。我儘で、積極的。いい女です!
新聞に解説が載っていて、どうしても読みたくなったのでした。
読んでみて、語調は古いのに、読みやすかった。
ただし「われはうたえどもやぶれかぶれ」はどうにも合わなかった。
私小説。病苦。タイトルでもう苦しいのがわかりきってる。
読みにくかった。けっきょく、斜め読みしただけ。
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じいちゃんと金魚がいちゃいちゃする話はちょっと気色悪い。金魚の魚拓話もねえ……。「やぶれかぶれ」のほうはほとんど放尿の話。
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少し前に、ヨナキウサギさんに『陶古の女人』を教えていただいて探していた。
見つけたのが、そちらを含めて『蜜のあわれ(「後記 炎の金魚」を含む)』『火の魚』『われはうたえども やぶれかぶれ』『老いたるえびのうた』の5作、解説・作家案内・著書目録が収録されたこの1冊。
『陶古の女人』もおもしろかったのだけれど(でも私はきっと一生、こんな風に物に耽溺することはないなぁ、よかれ悪しかれ)、『蜜のあわれ』が思わぬ拾い物だった(本当ならば刊行時のように『蜜のあはれ』の方がしっくりくる気がするのだが。新仮名にしないとならないのかなぁ)。
表紙の金魚の魚拓が見たかったなぁ。巻末の解説に表紙写真が付されているのでそれを眺めてちょっと見た気分に(笑)。
続く『火の魚』はその魚拓作成を巡るお話。
『われはうたえども やぶれかぶれ』は癌の闘病記。壮絶といえば壮絶だが、どこかかなしいおかしさがある。凄みのある明るさとでも言おうか。
『老いたるえびのうた』が絶筆であった。
巻末の詳しい解説で犀星の来し方を垣間見ることができた。金沢の人ということは、犀星の犀は犀川の犀なのだろうか。私は大して多くを読んではいないけれど、小説であれ随筆であれ、どれも基本的には詩人が書いたものという感じがする。老後がさほど遠くない、しかしそれほど間近でもない自分。老いの暮らしって、漠然と思っていたよりも色彩に満ちたものになりえるかもしれない、と読後にふと思ったりした。
*『密のあはれ』の魚拓を取った折見とち子=栃折久美子さん。著作の『モロッコ革の本』は確か、高校の国語の教科書に一部、採られていたはず。よく覚えていないけれど、好きな文章だった気がするので、今度読んでみよう。
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カヴァーに「生涯最高の活動期ともいうべき晩年の名作五篇を収録。」とありますが、ほんとうに犀星晩年作品は素晴らしい。『密のあわれ』が好きな方は多いことだろう。こんなふうに自分のことを「あたい」と呼び、「おじさま」と語りかける、なんとも魅力的な少女。朱い金魚(出目金)を思い浮かべながら読むと、尚更。ガン闘病記『われはうたえども やぶれかぶれ』からもまた、犀星その人の「構え」を感じることができる。そして遺作、最後の詩「老いたるえびのうた」。この講談社文芸文庫には、解説、作家案内も詳しい。著作目録が載っているのも有り難い。陶古の女人密のあわれ/後記 炎の金魚火の魚われはうたえども やぶれかぶれ老いたるえびのうた以上を所収。
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「蜜のあわれ」が艶っぽくて素敵。金魚のはすっぱな感じが可愛らしい。
にしても犀星先生、女の人好きねー!(笑)
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室生犀星『蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ』読了。特に『蜜のあわれ』が不思議な感覚。若い金魚の女と人間の老人の対話篇。そこに幽霊が絡んでくる。全員、恋をしている。当然、現実的な話ではないのに、時々奇妙に現実に重なる。
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室生犀星と言えば「故郷は遠きにありて思ふもの・・・」ぐらいでしか知らなかったが、金魚と飼い主?の言語を介したやりとりは、すごく新鮮に感じた。シュルレアリスムの具象的な形式としては、非情に面白い。
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「おじさま」と三年子の赤い金魚との会話によって構成されている短編、「蜜のあわれ」が特に好き。
「おじさま」と金魚屋さんにとっては小さな可愛い金魚、他の人にとっては人間のはずなのに、どこからが金魚でどこからが人間なのかわからなくなる。
金魚である方が官能的で美しい気すらする。
その他の短編も秀逸。