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紙の本
名作揃いの短編集。お勧めは「うらぼんえ」
2002/03/16 00:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ninja - この投稿者のレビュー一覧を見る
女にはもう、帰る家がない。住居、という意味では無論ない。自分を優しく迎えてくれるところ、といえば聞こえは良いが、一敗地にまみれた時に頼る逃げ場、がないのである。主人公である「女」にとって、帰る家とは夫であり、家庭であったわけだが……、夫のある不始末により、帰る家はその形を揺らがせてしまった。女は、自らのアイデンティティを保持するため、郷里の仏事に参加する夫に従い、夫の親族に従う。しかしその行動は、やがてその意義すらゆるがす重大な決断を女に強要する結果となってしまう。
この、どのように身を振っても不幸な結末の待つおぞましい状況に、とあるブレイクスルーが起きる……というのが本作「鉄道屋」内、短編「うらぼんえ」の大まかなあらすじだ。
私たちは誰しもが帰る家をもっている。それは趣味であったり、仕事であったり、ともすれば家庭や道楽、思想や信仰であったりするかもしれない。日常に起こる出来事より引き起こされたストレスは、そういった個々人の家に帰ることで、忘却することができる。
そんな「帰る家」の欠損とは、すなわちアイデンティティの喪失である。言い換えれば、自分を、自分ならしめている存在のひとつを失うことに等しい。女がそれを平穏な家庭に求めてしまうことに反発を覚える方も多いかもしれない。しかし帰る家はその人によってそれぞれであり、ましてその在りかを別の人が押しつけることは無為なことであろう。
仏事中のひと波乱によって、女と読者はカタルシスを得、義兄嫁の告白により心情を喚起せられ、やがて美しい情景へと誘われる。そうして彼女はその閉塞感の正体を理解した上で、次のステップを自ら選択する。
本作の運びは、正に著者入魂の出来と呼ぶにふさわしいだろう。
紙の本
直木賞作品で映画化もされた「鉄道屋(ぽっぽや)」を始めとする8編の物語
2000/11/04 00:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なりてん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は直木賞作品の「鉄道屋(ぽっぽや)」を含む8編の短編集で、映画化されて話題になったので、多くの方がタイトルぐらいはご存知だろう。実は著者にとって本書は、処女短編集だそうだ。
本書に収められている8編の作品のうち、どれが1番好きなのかというのは、読者の色々な人生経験が如実に表れる。文庫本の解説で北上次郎氏が書かれているように、まさにリトマス試験紙である。
おそらく、どの作品にも著者の人生経験の断片がちりばめられていて、どの部分に1番共感できるのかが、読者によって様々だからだろう。それも(くわしくは知らないが)様々な経歴を持つ著者ならではだと思う。そういう意味では著者にとって、小説家は天職なのではないだろうか。
そんな作品の中で、私が1番好きなのは「ラブ・レター」という物語で、あったこともない女性からのラブレターを中心に展開される物悲しい話だ。実はこの作品も映画化されているそうだ。
著者の作品は、実際の現実に少しの不思議を織り込んだ話が多いと感じるのだが、それでいて少しもその違和感を感じさせない。そしてなにより登場人物が、ある意味実在の人物以上に存在感が強く、読んでいてぐいぐいと引き込まれて感情移入してしまう。そのため、おもわず涙する話も多い。
ラブ・レターも、主人公の吾郎に感情移入して泣いてしまった人も多いのではないだろうか。
またこの文庫本のあとがきでは、1つ1つの作品の背景や、解説もあって興味深い。単行本を持っている浅田次郎ファンの方も、このあとがきだけでも読む価値があるかもしれない。
電子書籍
逍遙自在
2019/05/18 09:28
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投稿者:ぽるけのてかりゃす - この投稿者のレビュー一覧を見る
駅員の、穏やかな佇まいの根底に、確かに、かつ、強く存在する信念を感じました。読み進めるなかで、小泉信三のことば(すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる)を、思い出しました。
電子書籍
無くなった人との不思議な縁の物語
2018/08/19 09:43
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投稿者:ねこすき旅人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ぽっぽやは、映画で見たのですが、実際の原作を読んでいなかったので、手に取ってみました。かなりページ数が少なくてびっくりでしたが、幼き頃に亡くなった娘の成長した姿を鉄道員のおじさんが見て一緒の時間を過ごすことができ、亡くなっていくところが哀愁を感じました。ほかの物語も考えさせられたり、悪魔がでるなど怖い要素を含んだ短編が続きますが、心に残るお話が多かったです。