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特に毒気を孕んだ美の香る「瓶の中の悦楽」、すれ違ったたくさんの人が描かれた「詩人のいた店」、大人の秘めたる少年心を覗かせる「少年の聖域」を面白がりながら読んだ。
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久世光彦さんのエッセイ集。昭和初期を語ったエッセイは色々とあるけれど、この人の優しい感性が伺える文章は、中でもすごく好きです…
また、このエッセイを読んで「蕭々館日録」の麗子や「陛下」の梓が久世さん自身でもあったり、そうでなかったりするんだなと勝手に思いました。
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大人は過去の経験を分類し、記憶にとどめ、その文脈で今の体験に対して判断を下したがる。これは教育を通り越し、自己洗脳といえるのかもしれない。
多くの人は大人になるにつれて忘れてしまっているが、本来誰しも子供のころは持っていたように思う感覚。
この本で著者は、そういった経験知が成立する以前の感覚を表現している。
病弱な子供の頃、布団の中で感じた生死が隣り合わせの感覚。戦時空襲の中で体験した現実と認識の乖離感。
薄暗い白熱灯、障子越しの光と影。水漏れ、隙間風、虚無僧の尺八、隣家の暮らしの音。金木犀、便所掃除口のそばに生えるドクダミのにおい。
社会通念や条件付けられた感情の決まりきった反応ではなく、表現しがたい生々しい感覚なのだ。