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これは面白いぞ!
助産婦(2002年3月の法改正により現在の名称は助産師。著者注有り)の推理劇なんて読んだことがない!
しかも、「お母さんをさがせ」「お父さんをさがせ」「赤ちゃんをさがせ」と、物語それぞれのタイトルは端的。
でも実はその単純
さゆえに思いがけない展開に驚かされる作品だ。
人が死ぬミステリ、日常の謎、人が死なないミステリーは当たり前。
でも、人が産まれるミステリーなんて聞いたことがない。
若手助産師(本編で使用される助産婦はここではあえて使わない)の陽奈、先輩の聡子、この二人のコンビが謎をとくのかと思いきや、この二人は謎にぶつかる方。
特に陽奈は猪武者ならぬ猪助産師で、待ち伏せをしたり、さらに謎を深めてしまったり、「任せてください」の言葉が信用ならない愛すべき登場人物だ。
聡子はそれに対するツッコミを入れるが、自分自身が謎の一部になってしまうこれまた探偵とは言い難い人物。
では誰が?
安楽椅子探偵は彼女たちの師匠、推定70歳の明楽先生。
助産師としてのアドバイスもさることながら、その人生経験に基づく「家族」の謎を解き明かしてしまう。
しかし、彼女の解決方法は、あくまでサポート。
真実に気付くのは本人たち、というのだからハイレベル。
私自身は病院出産、しかも管理入院(予定日超過及び胎児発育不全)だったので自宅出産には縁がなかった。
だから自宅出産という方法が目新しく感じたし、何より、本書は単純に病院対助産師(管理対自然)という図式でないことに安心した。
対立を煽るより、子供、そして母体の安全を考えることが重要だというメッセージに共感するからだ。
これについては『コウノドリ』三巻を参照されたい。
しかしだ。
そんな難しいことを考えずとも、純粋にミステリーとして楽しめるので、設定の珍しさも含めて是非一読をお勧めする。