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絶対君主の武家社会の中での下級武士の悲劇が描かれているんだけど、今の日本にも同じような部分があると思った。
貧富の差や、周りに流され本質を見ていない考え方とか結局今も変わってないんだなと。
そんな中でかけがえのない一瞬を大切に生きようとした人たちの姿は美しく思えた。
現代なら自ら死を選ぶことが美しいなんて絶対に思えないけれど、この時代のこの状況なら仕方なかったのかもしれない。
気に入ったのは拝領妻始末。
いちに感情移入したからかな。
女性に対しての扱いがひどかった時代。切ないなぁ。
高柳父子も割と好き。
父の無念を晴らす息子。
織部の正義感というか、周りに流されない考え。
外記の最後。
周りには認められなかったけど、なんかスッキリした。
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高柳父子、拝領妻始末が良かった。武家社会のルールや無理難題で家臣が苦しむのは読んでて歯痒くなるが、人間としての心を貫く様で最後は満たされる。
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時代小説は、難しいからあまり得意ではないが、たまに妙な大和魂にスイッチが入って買ってしまう。でも本作は短編集なのでかなり楽に読めた。
読後しばらくして島田紳助の引退会見を見た。きっとこの人の中にもなんかの侍魂のスイッチがあって、押さなきゃならない事情があったんだろうなとこの小説の事を思い出した。
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武士の行き方。
江戸時代の女性の在り方。
親子の絆、守るべきもの。
最後迄すべては書かない分読みてに
最期は委ねられる。
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「異聞浪人記」「貞女の櫛」「謀殺」「上意討ち心得」「高柳父子」「拝領妻始末」の6つの短篇時代小説。武士道とは対極にある士道。個人の生死など歯牙にかけない武家社会の欺瞞を描いている。なかでも「異聞浪人記」は、1962年『切腹』そして本年『一命』のタイトルで映画化され、二度にわたりカンヌ国際映画祭コンベティション部門に出品されたそうである。
巻末の解説によると主に史実に基づいたものと推察される。読むほどに奥深さが伝わってくる秀逸な短篇集だっ!
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武士道、士道の裏側を描いて見事。考えさせられる小説である。
昨今はこういう流れの武士小説が増えたように感じるが、元はこの作家さんなのではないかとも思えた。
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仲代達也主演の映画 「切腹」、そしてリメイク版 「一命」を観て、二つの映画のラストが異なることから、原作はどうなっているのか気になり、この短編集を読んでみた。
6作のうち、「浪人異聞記」がその原作だが、原作は主人公の津雲半四郎の立ちまわりは、書き込んでおらず、余韻を持たせて終わっている。
ここが、小説と映画の描き方の差だと感じる。
この原作は、井伊家の庭先で切腹させてほしいと浪人が申し出るという
意外な冒頭から始まり、その後も謎めいた展開で、惹きつけられる。
描かれるのは、武士の生き方の理念である士道というものが、次第に硬直化して建前に堕して、形式的になり人間味を欠いている様であり、
また、安泰こそい第一という組織の論理に押しつぶされる、人間の哀しみ
である。
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2004年に亡くなっているらしいが、恥ずかしながら「滝口康彦」という作家を知らなかった。一貫して「士道」を題材にした小説を書かれた作家らしい。
「異聞浪人記(2度映画化)」「貞女の櫛」「謀殺」「上意討ち心得」「高柳父子(直木賞候補)」「拝領妻始末(映画化)」傑作6短編集、かなり一級品。
「武士は死を尊ぶ。生涯のすべてをその一瞬にかける」という死を賭した意地を描く。爽やかまたは説教くさい士道ではない、主人公の一方的な思いに同化するのでもなく、「少し違うな」という違和感と哀しみみたいなものを感じる。それは士道を賛美するのではなくむしろ逆。狂言切腹、追腹、お家大事など、歪んで成熟した士道や武士の意地で片づけるのを否定し裏には「生身の人間の思い」があるということを描こうとしているのか。
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短編小説なので読みやすい!
自分の判断で恋もできない、死ぬ時期も決められないのが当たり前の時代。日本人の考え方も大きく変わってきていると思った。
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時代劇小説なので仕方が無いが言い回しが難しく個人的には読みにくかった。
内容はぐっと引き込まれるものは少なく、タンタンと読み進めていける本。
詰んなかったとは言わないが、面白いとも言えないな。
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『切腹』『一命』と2度映画化された「異聞浪人記」などの6つの短編集。
武士の悲哀が描かれているのだが、どれも清廉潔白すぎて、ちょっと痛々しく思えてならない。
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切腹、追腹、御家大事。士道という美名に欺かれた不条理。命を賭けて守るべきは何なのか。せつない気分の高まる短編集です。
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以前「切腹」というビデオを観たけれど、まさか原作がコレだとは・・・!
読んでいて、あれ?これは・・・、あれ?ってなった。
竹光で腹を切らせる映像が怖ろしく印象深かった「切腹」。
はてさてリメイク版の映画「一命」はどんなもんか、気になります。
小説は短編集で読みやすかった。
佐賀や福岡が舞台の話も多く、馴染みも深く感じた。
淡々と武士の悲哀や覚悟を記していて、そこがまた切ない。
自分たちの時代が終わるからといって、たとえ人に笑われ、嘲られても、そこから降りるわけにはいかないんだろうなぁ。
そういう人たちの礎の上に、私たちの世の中だ成り立っているんだ。
私はそういう人間になれるだろうか・・・。
今のところ無理そうだー!
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2013.12.17~24 読了
なかなか骨太な時代小説の短編集、たびたび映画化されることも頷ける。えっ、ここで終わり、という所もあるが読後の余韻につながっている。直木賞を落選し続けた理由が分からない。組織の非情さと弱者の悲哀を描いているものが多く現代社会にも通ずるものがある。映像作品も見てみなくっちゃ。
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久しぶりに異彩を放つ名匠に出会えた気分。この本を読むまで全く知らなかった著者は寡作ながら古参の実力派。過去2作品が映画化・ドラマ化・舞台化されている。
剣豪物や一般的な時代劇、あるいは庶民の情景を扱った市井物などいろいろ読んで来たが、とくに武家社会の非情な掟の中に生きる武士たちの「士道の峻烈さ、酷薄さ、無残さ」ばかりを描き続けた作家という人は珍しい。そのテーマから理不尽な死による悲劇的な物語が多く後味はあまり良くないので、何度も直木賞候補に上がるほどの秀逸さの反面、読み手を選ぶ小説と言うべきかも知れない。例えが相応しいか分からないが、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞するタイプの映画に通じるものがある。また、先日立ち読みした漫画『シグルイ』(原作/南條範夫・作画/山口貴由)がちょっと頭によぎった。
日本人は体裁や体面ということにこだわる。文化的にもかなり西欧化された昨今は人によってその価値観も様々ではあるが、本質的に本音より建前を優先し個人の意志を抑えてしきたりに従うのが日本人。とくに本書のように武家社会にこそその厳格さが色濃くあった。
また日本独特の価値観に「耐え忍ぶ」という美徳がある。これこそまさに、本音より建前を優先し個人の意志を抑えてしきたりに従うという場面における心模様だろう。昨今では逆に理不尽な状況や境遇に対して迷わず声を上げることが常に正道であるかのように思い込んでいる軽薄な者も多いが必ずしもそうであるとは限らないと思う。
個人同士の問題なら感情に囚われることなく客観的に冷静になって話し合えば済むことだし、その時自分の思い違いであれば逆に謝罪するべき時だってあるだろう。しかし相手が個人ではなく企業や団体あるいはその意志を代弁する人間である場合は、感情論を抑えて損得や合理性で考えた方が後悔せずにすむというのが常識。
個人が企業や団体の過ちを告発して溜飲を下げたいという発想はドラマやマンガなどフィクションの見過ぎであって、現実にはその後さらに酷い境遇に陥るのは個人と相場が決まっている。命がけではないかも知れないが人生を踏み誤る結果となることは間違いないので、本当に頭の良い人間なら黙って身を引くのがベストであると言っておこう。それはかつての厳しい武家社会から時代の移り変わった現代社会においてもそれほど違いはない。
本書の中の物語で言えば1967年に主演三船敏郎で映画化された「拝領妻始末」というお話がその見本。お上の命の理不尽さに歯向かった結果のやりどころのない結末はフィクションの世界だから他人事として達観できるが、自らの心情や欲求のみ優先して家族や親族の運命を地に落とし、自分達も実りのない最期を選択することが本当に正解なのかどうかは疑わしい。現代人の自由な発想で考えれば、どのみち同じ結果が想定されるなら皆がそれなりに不満を残さないもっと建設的な選択や方法も可能であっただろうと思わずにはいられない。
◎映画化作品(いずれも本書に収録)
『切腹』/原作「異聞浪人記」
監督小林正樹/主演仲代達矢/1962年松竹作品
『上意討ち 拝領妻始末』/原作「拝領妻始末」
監督小林正樹/主演三船敏郎/1967年東宝作品
『一命』/原作「異聞浪人記」
監督三池崇史/主演市川海老蔵 (11代目)/2011年松竹作品