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日本生まれのイギリス文学者。日本の話なのに翻訳されてる不思議。淡々と綴られる物語。一定のトーンで描かれる戦後の日本は、細かい説明がないのに、リアルに胸にせまるものがあります。
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カズオ・イシグロという作家は長崎出身の作家です。
長崎出身の作家が英語で書いた日本の物語を日本語に翻訳して読むという行為は不思議なことのように感じます。
イギリスの日本人作家のお言葉
▲緒方さんは笑って首をかしげた。「どこかよそへ行ってそれなりの仕事をしたとしても、けっきょく」と言いさして彼は肩をすくめると、淋しげに微笑した。「けっきょく、自分の育った土地へ帰りたくなるものなんですな」▲
そして、解説で池澤夏樹はこう述べます。
▲人間は互いに了解可能だという前提から出発するのが哲学であり、人間はやはりわかりあえないという結論に向かうのが文学である▲
読了 2007/8/5
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日本人による日本文学を英語で書いたものを別の人が訳したもの。このとても珍しい状況を楽しめて贅沢。
久しぶりにはまる作家が出た。でもそれは訳者の力かもしれない。次の本を早く借りに行きたい。
物語は戦後すぐの妊婦さんが主役、でも現在のおばあさんになったその人の回想録としての主役。舞台は長崎で復興がだいぶ進んだ状態。だんなさんと二人暮らしでお舅さんがたまたま滞在している。そこに謎の多い女の人と、無口な女の子が登場する。女の子はキーワード。おばあさんになった主役の人はなぜかイギリスに来ていて、ハーフの娘を産んでいて、もうひとりの娘は自殺してしまっている。だんなさんとはうまくいかなくなったのか死別してしまったのかいなくて、そもそもなぜイギリスに来たのかも分からなくて、そのあたりにはまったく触れられず戦後の日本を中心に物語りは進む。やがて静かに鍵は開けられるのだが、その終わりの充足感ときたら幸せといってもいい。よい小説はそれが幸福な終わり方でなくても気持ちを満たしてくれるのだな。
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カズオ・イシグロの長編第一作。後の長編、『孤児だったころ』、『私を離さないで』のようなストーリーのダイナミックさはないが、彩度が同じ。暗い。この作品では、実際に夕方の暗闇のシーンが多く、全体の印象となっているが、その分、夏の日差しが強烈な、猛暑の日の描写が際立つ。また、女性の自立や日本人の戦争への意識など社会的要素が多分に含まれており、メッセージ性が強い。
作者のインタビュー(http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/kazuoishiguro.html)で、自身ののアイデンティティーや日本への特別な意識、作家として作品に込める普遍的テーマなど語っているが、いずれの作品にも共通して反映されている。「状況を受け入れていく人間」への興味と愛情、ささやかでも愛の力や希望の光がある。ただ暗く重いだけではない。
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めちゃ暗い話(汗)。長崎に原爆が落ちて何もかも失った戦後の暗い時代を生きた女性の回想録。え、万里子はクビをつったの?なんで悦子さんは縄をもってたの?あそこのシーンだけ「ひぐらし」みたいで怖かったです(汗)。佐知子の生き方も浅はかだ・・・・。
現代になってイギリスに住んでるシーンになっても長女がクビつってるし(汗)。暗い。暗すぎる。
二郎となんで別れたんだとか些末なことが気になります。
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カズオ・イシグロの処女作。イシグロ作品を僕はまだ、3冊しか読んでないのだけれど、長編においては、先に結果が置かれて、読んでいくうちに謎が少しづつ明らかになっていく、ミステリーのような手法はこの本でも使われていて、ページをめくる手が止まらなくなる。正直、オチらしいオチはないのだけれど、万里子と景子は、同一人物?と考えると、主人公がイギリスに向かったくだりがはっきりしていないので、最後、もやもやとした感じが残る。それでも、処女作にしても読ませますね。
…英語で書かれた日本の話を翻訳で読む…。不思議な感じだ。
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最初に私を離さないで,次に日の名残りを読んで,その次に読んだ。日の名残りを読んだときはこの人何を言いたいの?と思ったけど,遠い山なみの光を読んで少し腑に落ちた。日の名残りと遠い山なみの光は,価値観が大きく変わったときのそれぞれの立場の人の暮らし向きの変化や,人々の自問自答というかそういうのを描いたのかもしれないと感じた。
佐知子は正直読んでいて腹がたったけど,ああ,こういう人は私の田舎に確かにいたなと思うし,私に一番似ていたと思う。
登録日時は2010年5月30日だったので,買ってから読み終えるのにずいぶん時間をかけた。
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ある意味、心理戦のような(心のさぐり合いのような)作品だと思った。静かにたんたんと物語が語られていく、そんな印象。
ずっと気になっていながら、読んでいなかった作家さんだけど、けっこう好きかも、この文章。
おもしろかった。
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戦後という価値の転換期に、悦子という主人公の女性と
友人の佐知子の生き方を対比しながら、人生とはいかなるものかということをテーマに描いている佳作。
最初読んだときは、え、ここで終わっちゃうの?って感じましたが読み返してみると、まあこれでいいのかなあと。
あと、佐知子という女性が、あまりに非常識なお友達に思えてならないです。
以上、俗っぽい感想でした。
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カズオ・イシグロ長編処女作。悪くはないが、いまいち。一貫して陰鬱な雰囲気が作品の根底に。ほかのイシグロ作品にあるような、勢いにのって読み進めていくような、トランス状態にはならなかったのが、期待が高かっただけに残念。
原爆投下後、復興期の長崎を舞台にした作品。価値観の揺らぎ。その揺らぎは、読者からみると小さな揺らぎに過ぎないのだが。丁寧に綴られてはいるけど、テーマを盛り込みすぎたということだろうか。
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戦後、日本の欧米化に合わせ柔軟に変わっていく人々と、
変われない(信念の元にかわろうとしない)人々とのコントラスト。
現代の日本人が果たしてどこから来たのか考えるきっかけになった。
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初のカズオ・イシグロ。
文章は上手い。が、話につかみどころがなく、最初はついていくのが大変だった。
慣れてくると、登場人物たちのまるでかみ合ってない会話を読むのが楽しくなってきた。
他の作品も読んでみようと思います。
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戦後、復興しつつある長崎の町で、主人公である悦子が佐和子との出会いを通じ、人生の方向を変えていく。悦子による1人称の語り口ながら余計な心理描写が排除されているので、彼女自身の考え方は控えめな彼女の会話と、並行して進む現在の彼女の姿とから推察せざるを得ない。そのように読者に推察の余地を与えることで、物語に深い印象と奥行きとを与えている。
過去の自分やその考え方と現在の状況との対比という意味では、「日の名残り」に通じるものがある。しかし、本作では悦子と佐和子との完全な符合が若干作為的な印象を与えるので、その辺りが「日の名残り」との違いかもしれない。
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記憶が語る物語。
なつかしく、遠く、
まるで主人公と一緒にその記憶をたどっているような気がしたのは、
新鮮な感覚だった。
知らなくても、どこかで見ている、感じている、
そういう瞬間ばかりが切り取られ、紡がれて、丁寧に差し出されているような長編小説。
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・気になること。全部妄想に委ねられてるの?
悦子と前夫二郎
悦子とフランク
悦子と長崎生活
景子と英国生活
ニキ
佐知子とフランク(実在する?悦子の夫と同一人物?)
・佐知子が異常に感じられるのは、長崎時代の悦子視点だから?