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福沢諭吉が「脱亜論」において、「支韓両国は数年以内に亡国となり、諸外国に分割されることは疑いの余地がない。よって、支韓と伍するのを脱して西洋の文明国と進退を共にするべきである」と喝破して以来150年もの間、戦前は軍事力において、戦後は経済力において、日本の国力はずっと中国を上回っていた。けれども、近い将来中国の経済力は米国をも追い越し、超大国として君臨することになる。軍事的にも、もはや日本が中国に対抗するという選択肢はありえない。このような状況の中で、米国は東アジアにおいて、日本よりも中国を重視するようになってきている。一方の日本はといえば、経済は停滞したままであり、少子高齢化には歯止めがかからず、国力は衰える一方である。明るい話題はなにもない。まずはそれを認めた上で、では日本はどのような道を進むべきなのだろうか?
ASEANは、イスラム教、仏教、キリスト教国を含み、多様な民族・価値観を内包する共同体である。それにもかかわらず、今やASEAN諸国間で軍事衝突が起きる可能性は極めて低い。著者は、ASEANの叡智に倣って、日中韓で「東アジア共同体」を形成すべきだと説く。
中国は経済的に日本を追い越したとはいえ、それは単純に人口が多いためだ。一人あたりで考えれば、依然として貧しいままである。(一人あたりGDPがブルガリア、トルコ、メキシコ並みになれば、中国の経済力は米国を追い抜くことができる。)貧富の差・地域格差は拡大し、環境破壊は甚だしく、共産党の独裁が続く。そして国内には、政府が「核心的利益」と主張するチベット、東トルキスタンという大きな民族問題がくすぶる。そんな中国の覇権は長くは続かず、きっとどこかで破綻するに違いないと思ってしまう。
けれども、中国では伝統的に権威を重んじ、権力は「天」から授かったものとみなす。したがって、(善政を行っている限りにおいては)民主主義体制でないことは中国民衆にとって問題ではないのかもしれない。共産党が国内の不満を抑え込むためには経済成長を続けるしかなく、そのためには外国との経済的結びつきを強めるしかない。そうすると、中国は外国に対して宥和政策を取らざるを得ない。ということは、意外に中国はずっとこのままなのかもしれない。それがまさに、「不愉快な現実」なのである。
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領土問題は複雑だ。
確かに各国それぞれにその領土に対しての認識や主張は違う。
それぞれの国の認識や歴史事実を踏まえて外交は進めないと戦争になる。
特に日本は中国に対して、アメリカが助けてくれると信じているが、実際のアメリカがどのようなスタンスで接しているかを理解していないと放り出されることになる。
それが、不愉快な現実なのだから。
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データを色んな角度から見て、将来の国のあり方を模索し、現実的に政策を実践していく。
予断と偏見はなしだ。
アメリカと中国の位置関係、そして、その狭間における日本の立ち位置。
世界の歴史に学ぶところはいくらでもある。
日本人だけが考える希望的観測、こんなものは何の役にも立たない。
日本国を滅亡に導くだけだ。
そんなことを考えさせられる、元外務官僚の国際的な視点に立った著作だ。
冷静に読み解かなければならない。
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尖閣諸島の防衛に関する第5章は様々な論点が議論されている.「棚上げ」という一見不可解な政策の重要性が認識できた.
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最近、出版物が多い元外務官僚で、戦略論の著書もある孫崎氏の本。
これまでの著書は、日米同盟や日本の領土問題などの問題を扱ってきたが、この本では中国の経済的・軍事的な台頭、中国に対してアメリカはどのような関係を今、築こうとしているか、またロシアなどの国々はどのような意図を持ってきているのかなどを取り上げながら、感情論やナショナリズムではない、現実的な対処法の検討を行っている。
ドイツとフランスの戦争後の関係の築き方など、まだまだ歴史に学ぶ点は多い。脱亜論を説いた福沢諭吉の考えに私たちは非常に多く染まっているが、中国の新の狙いや国益を考えながら、来るべき時代(新しいパラダイム)でどのように振る舞うべきかを考えるべきかを強く思った。
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元々ドイツの文化圏だったアルザス・ロレーヌ地方はドイツ、フランス間で長年領土紛争が行われて来たが第二次大戦後の後その原因となった資源石炭、鉄鋼を共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体を作り後にEUへと発展した。日本も大国化する中国との付き合い方でお互いの利益となるような体制を作ると言うのが本書の主張のようだ。
前半では日米関係、日中関係、中米関係に関する分析がなされている。
冷戦下でアメリカの方針として対ロシアの防御線として日本の復興を後押ししたアメリカは80年代以降は経済的な脅威として日本を捉え逆に弱体化をはかる。それが銀行のBIS規制で当時世界の銀行の内ベスト10に7行あったのがBIS規制がもとで置いて行かれたと言う。しかしこれは元々資産バブルで膨らんだ価値だったので過大評価されていただけだったと思うのだが・・・とは言え日米貿易戦争でアメリカが日本を脅威として捉えていたのは事実。
現在のアメリカがアジアで最も重視しているのは日本ではなくて中国であり、中国が強くなりすぎないように日本を対抗させると言うのがアメリカでは一つの常識的な考え方だと言う。まあそれは有るかもね、筆者も書いてるがリチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、ジョセフ・ナイは日米同盟強化路線で裏には軍産複合体がいて日本にF−35なんかを売りつけようとしていると。一方金融、産業を代表するグループは中国との関係を重視し、またG2米中が国際問題を協議、解決すると言うことを目標とする勢力も有る。(個人的にはGゼロ説に1票w)筆者は日米関係強化路線にはむしろ反対の立場のようだが多くの日本人の感覚としては日米関係の強化は対中関係でアメリカのパワーを当てにしていると言うことだとの理解で日米関係さえ安泰なら何もかも大丈夫と言うほどのんきな人はあまり以内と思うのだが。
中国と尖閣で軍事対立が起こったらどうなるかについても中国軍事力が部分的には日本を圧倒し、米軍は日本が前にたたない限り全面にはたたない。中国のミサイルは日本の米軍基地を破壊する能力が有る。などなど列挙しているがさすがに米軍基地が攻撃されたらアメリカは反撃すると思うよ。尖閣諸島の帰属についてアメリカはノーコメントなのは事実なのですがやや意図的にミスリードしているように見える。
尖閣諸島が中国領であると言う根拠をいくつか示しているが、同様に尖閣諸島が日本領であると中国が認めた根拠もいくつかあるのにそちらには全く触れていない。北方4島についても日本が放棄した根拠のみを述べロシアが条約に参加していない部分は触れていないなど、相手方の見方はこうだという説明をするのはいいとしてもかなり一方的な主張に見える。
他にも中国は2002年にアセアンとの間で南シナ海の行動宣言で「現在占領されていない島や岩礁上への居住などの行為を控え、領有権争いを紛糾、拡大させる行為を自制する」の項目が有ることを元に中国は武力的な解決を行わないだろうとしているが、元々島を勝手に占領したのは中国でこの宣言はある意味やっちゃったのは仕方ないがもうしません、だから取り返しにくるなと言ってる様な物なの���そう素直に信じられないと言うのが普通の感覚だと思う。
紛争を避けて経済的にお互いに利益のある関係を作りましょうと言う主張は理解できるのだが、やったもん勝ちの中国の行為を責めずに日本政府の対応のみを問題視し平和的な解決をしましょうと言ってもねえ。最後は中国をどれだけ信用できるかと言う話になるし、それこそ中国人だってそれほど中国政府を信用していない。まあ経済的な結びつきを強くすることからですかね、EUの例に習うのであれば。
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我々日本人は「アメリカは日本の同盟国として中国に対峙してくれる」と、無邪気に信じ込んでいないだろうか。「アメリカが中国とのパートナーシップを選ぶ」という可能性について、真面目に考えたことがないのではないだろうか。そもそも歴史的に見てアメリカは中国寄りだった時期も多いわけで、いつまでも東西冷戦の枠組みの中でしか考えようとしない我々は非常に危うい。ロシア、北朝鮮、そして韓国といった「決して穏やかでない」隣国に囲まれた我が国は、どのように生きのびていくべきなのかを真剣に考える必要がある。60年前には殺し合っていた独仏に、多様な宗教、政治体制を乗り越えて連帯するASEANに学ぶべきところは多い。
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孫崎享さんに対しては、最近、著書『戦後史の正体』が「陰謀史観に過ぎる」というような批判も少なくないようだが、少なくともこの本で書かれていることは至極真っ当な指摘であり論であると感じる。
曰く「不愉快な現実」とは、
1. 日本の隣国中国は、経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる。
2. この中、米国は中国を東アジアで最も重要な国と位置づける。
3. 日中の国防費支出の差は拡大し、日本が中国に軍事的に対抗することは出来ない。
4. 軍事力が米中接近した中で、米国が日本を守るために中国と軍事的に対決することはない。
という「現実」である。
(「来るべき現実」という意味も含めて)
この現実の中で日本はどういう道を取るべきか?を論じたのが本書であるが、リアリズムに基づいた論だけに、根拠の無い単に威勢のいいだけの論とは異なり、非常に傾聴に値すると思う。
中でも白眉は第8章の「戦略論で東アジアを考える」だ。紛争解決とは「ゼロサムゲームではなく、非ゼロサムの思考が必要だ」という指摘はまさにその通りであり、著者が引用されているラムズボサムの「紛争への5つのアプローチ」のフレームワークは大変に参考になる。曰く、「自身への関心」が高く「他者への関心」が低い場合は「競争・対立」的アプローチをとりやすくなる。(上に書いた、単に威勢のいい論者はこのパターンが多い) 賢者のアプローチは「自身への関心」だけでなく「他者への関心」も高い、「問題解決」の姿勢だ。
「不愉快な現実」を前にして日本人は「米国に追従していれば安心」という"思考停止"状態から抜け出す必要があるという筆者の主張の根底にある姿勢に強く共感する。
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孫崎氏の著書は明快な記述のものが多いが、この本もその1冊。日本の立ち位置について、ASEAN諸国のあり方は参考になることが多いと思う。武力はいくら持ったところで安心が得られるものではないのだから、著者の主張する「複合的相互依存関係」を構築することは解になりうると私も思う。課題は何を、どうやってというところだ。悲しいことに、今の私はノーアイデア…というわけでもないか。
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キッシンジャー 日本人を戦略的にものを考えられない人たちと蔑視
米国の戦略的資産としての日本 マイケルグリーン
1 伝統的な日米関係を重視
2 米中二大大国が世界を調整する
3 米国は部分的撤退を図るがその分を同盟国で穴埋めさせ共通の敵として当たらせる オフショア・バランシンス
4 関係国で国際的枠組みを作っている
米国は日米同盟強化ししか動かないと錯覚している
日本の多くの人は十分に認識していないが、尖閣諸島近辺で日中間の軍事衝突が起こった時に、日本が勝つシナリオはない
棚上げとは現状を容認し、その変更を武力でもっておこなわないことである
新疆ウイグル地方 イスラム教
カトリック、プロテスタント間での宗教戦争 ドイツでは人口の10−15%減少
戦争における膨大な犠牲を避けるため、「国家の主権を認め、互いに干渉しない」ことを原則とするウエストファリア条約が結ばれた
ロシアの国別輸出額 日本は14番目 重要度低い
サンフランシスコ講和条約 日本国は千島列島に対するすべての権利、請求権を放棄する 吉田茂 千島南部の択捉、国後両国が放棄の千島に含まれている
望ましい対応 歯舞色丹は1956の日ソ間の合意にもとづき日本に返還すること 国後、択捉は歴史的事実を踏まえ日本ロシアは解決を図ること
北朝鮮 相互依存がいいが、実際は輸出輸入ともへっている
一方中国との相互依存は上がっている
孫子 十なれば、則ちこれを囲みこれと戦い、五なれば、則ちこれを攻め、倍すれば、則ちこれを分かち、敵すれば、則ちこれとよく戦い、少なければ、則ちこれをよく逃れ、若からざれば、則ちおくこれを避く。故に小敵の堅は、大敵のきんなり
戦争の原則としては、味方が10倍であれば敵軍を包囲し、5倍であれば敵軍を攻撃し、倍であれば敵軍を分裂させ、等しければ戦い、少なければ退却し、力が及ばなければ隠れる、だから少勢なのに強気ばかりでいるのは、大部隊の捕虜になるだけである
ナッシュ均衡 我々が考える最善の戦略は、自らのあるべき姿を考えて出てくるのではなく、相手国の動きによって最適な戦略が変わる
日本が抱える火種は領土問題である。ここで顕著なのは日本側が領土問題について相手方の主張をほとんど知らないことである
米国の軍事思考の根幹にはトゥキュディデスの戦史がある。ここでは、アテネの滅亡は、アテネの国益に密着していない同盟国を助けたことにある
望ましい戦略は、相手と我の力関係を冷静に判断し、最も適切な戦略を選択することである。「こうしたい」では望ましい戦略は出ない。相手と関係なく「戦う」という選択をすれば、破れ、滅びる運命が待っている
阿部信行首相 1939/8-1940/1 無謀な戦争をやめようとした
それを回避するためには互いに平和的解決を志向する者同士の連携を図る。これが国際政治で強く望まれることである
欧州共同体も、はじめは欧州石炭鉄鋼共同体からスタートした
いま日本人に求められているのは、「日本の隣国中国は、経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる」という事態を直視できるか否かである。そして米国との協調のみを求めれば日本の繁栄があるという時代は終わったという事態を直視できるか否かである
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孫崎の日頃の主張通り。ただツイッターを最近フォローし始めてTPP反対とか東アジア共同体についていろいろ言ってる背景を初めて知れたかも。
中国が大国化するなかで米国も東アジアで日本より中国を優先していくだろう、その中で日本はどうやって生き抜くかを考えるとゆう本。
地政学において軍事力の重要性が弱まっていること、今までは金、技術を欲しがっていた中国がマネジメントを欲しがっていること、中国にとってEUや米国との関係が重要であるほど、日本との問題が悪い影響を与えないようにと日本にとっても都合がよくなること、逼迫する財政で手が回らないところを日本の自衛隊との共同を深めていくことで補おうとする米国、中国との関係を強化しつつ、中国との関係が悪化したときに備えて日本やインドとの同盟を強化するザカリアの「ヘッジ戦略」、BIS規制で起こった日本経済への悪影響、どうしようもなくなる日中の軍事バランス、リアリズムより複合的相互依存関係へとゆう主張、中国や韓国が領土問題についてどうゆう認識を持っているか知らない日本人、実質的な複合的依存関係を中韓と深め、EUやASEANのように段階的に東アジア共同体をつくっていこうとゆう主張など、TPP反対や経済についてはともかく、孫崎さんの国家戦略論にはいつも納得させられます。
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明治以降150年間で経験しなかった中国の大国化に日本はどう向き合うか。2020年には中国のGDPはアメリカを越えるという情況の中で、米国のオバマ政権は同盟国重視からG2戦略へ転換するのか? 中国の戦略等々を踏まえた分析、提言は傾聴に値する。
反米傾向が強いと言われる著者だが、この本ではかなり冷静な分析、提言をしている。
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中国がアメリカをしのぐ超大国となり,アメリカも日本より中国を重視する状況が近づきつつあるという現状認識のもとに,今後の日本外交の進むべき方向を論じる。
TVやネットで著者の言動を目にして,唯我独尊な思い込みに基づくように感じていたが,本を読むと,まことにもっとも。
勉強になったし,説得もされた。
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中国の台頭、アメリカとの二極化はわかるがアジア共同体というのは少し違和感あり。EUの現状を見ると緩やかな統合も場合によっては危機的状況を脱出できない。むしろ今の日本が経済力を再生し大国とのバランスゲームを演じるほうを志向したくなる。
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主張のブレ無さが逆に気になるというか、中国農村部、チベットの状況を聞いて何故そこまで信頼を寄せられるのか。
自分が実際に係ったところに近くなるほど近視眼的になるのはよくある現象。
アメリカが首位を脅かされる恐怖で、80年代の日本にしたように中国に噛み付くのを期待して待つしかないのか。