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良作。おそらく初となるオリジナル長編『ちくたくぼんぼん』は、昭和初期を舞台にしたロマコメ。拾ったコウモリと同じ名前の文系病弱成年が登場するあたり、設定に少々あざとさを感じるが、なんだかんだ良い。やはりこういう19世紀くらいの様式美を感じさせる時代を描かせたら勝田文は天下一品である。部分部分の演出に拙さを感じるが、長編ゆえか。先が気になる。一方同時収録の中篇読切『ビーチ・イズ・ビューティフル』は海辺の街の理容室で働く女性を描いた現代劇。勝田が手癖で描いたような空気漫画だったが、悔しいことに面白い。慣れたタッチなので演出も巧みで、綻びもなく、完成度は高い。