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刑事訴訟法の課題本ということで読んだ一冊。
裁判員法施行前の批判本で、いかに裁判員制度が杜撰かを事細かに書いている。
実際裁判員制度の問題は様々あるが、それを全体的に見ることは法に触れていない人にとってはほとんど無い。その点これは一冊にまとまっているので素人にはわかりやすいのではないか。ただ揚げ足を取っているだけの記述も散見されており、鵜呑みにはできない。
裁判員制度を考えるうえで問題意識をどこに持つか、ということを念頭に置いて読めば良書といえる。
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裁判員制度について批判的な観点から紹介する本。著者曰く、この制度は
①無用な制度(国民の「健全な社会常識」を司法界に持ち込むため生まれた制度だったはずなのに、そもそも制定した側も皆望んで生まれた制度ではなかった)
②違法な制度(憲法18条の「奴隷的拘束および苦役からの自由」、19条の「内心の自由」、31条の「裁判の適正手続」、37条の「公平・迅速な公開裁判」にそれぞれ違反)
③粗雑な制度(手抜き審理に陥る可能性)
④不安な制度(事件の真相究明、事実認定の上で問題あり。さらに裁判員による誤審、興味本位の尋問また、それによる冤罪の増加を招く)
⑤迷惑な制度(被告が証言を否認または黙秘し続ければ、それだけ裁判が長引き、裁判員の時間的拘束が莫大なものになる。これは赤紙ひとつで国民を動員する徴兵制(やはり18条に違反)を髣髴とさせる制度)
だそうだ。
他にも、
・「無作為にお上から選ばれてしぶしぶ裁判員になるのに裁判官よりも『常識的な判断』ができるのか?」
・「殺人事件が対象なら、死体の写った現場の写真を見せられるそうじゃないか。特にバラバラ殺人の場合だったら一生モノのトラウマだろうね。国が強制的に呼び出しておいてこうなったらどう落とし前をつける気?」
・「『健全な社会常識』を謳い文句にするなら、なぜ殺人といったほとんどの国民と直接関係のない重大な刑事事件が対象なんだ?もっと関わりが深いであろう軽微な刑事事件や民事事件に導入したほうがましじゃないか?」
・「そもそも『健全な社会常識』って何?」
と私が裁判員制度について疑問に思っていたことについても答えています。
あと、「呼出状が届いたかもしれないけど犬が食べてしまった」とか「酒を飲んだので出られない」という笑ってしまうような逃げ方について書かれているが、これは蛇足。徴兵されるのを前にして醤油を一気飲みして逃れたという話は聞いたことはあるが。
全体的に論理的でわかりやすく、裁判員制度を知るならこの本をお勧めしたいところだが、どうも負の側面のみに焦点が当てられている気がするのでマイナス1。
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国民が殺人犯を直接裁く裁判員制度が,あと一年と少しで始まるという。裁判員という言葉は聞いたことがあったが,内容はよく知らなかった。しかし,義務教育を終えた成人なら誰しも裁判員になる可能性があるらしい。これはひとごとではない。いろいろ読んでみたが,読めば読むほどこの制度,いくらなんでも無茶では?と感じる。
推進派の主張は単純だ。今の刑事裁判は書面主義で時間もかかり,国民の健全な意識から離れたものとなっている。他の先進諸国は陪審制や参審制を導入している。日本でも裁判をお上に任せず,国民がもっと参加すべし。国民の司法参加がよりよい社会につながる,というものだ。米国的な陪審制(陪審員のみの評議,評決内容(有罪無罪)につき上訴不可)を目指したが,審議の過程での妥協によって,結局は欧州の参審制に近い制度(裁判官・裁判員混成の合議体で判決を出す,控訴審で犯罪事実も争える)となった。が,陪審制をあきらめきれない人も多いようだ。
反対派の主張もいろいろあるが,西野の意見がまとまっていて分かりやすい。裁判員制度は,無用・違憲・粗雑・不安・過酷・浪費・迷惑・危険であるというものだ。以下その内容を列挙。
アメリカの圧力で始まった司法制度改革。その機に乗じた推進派の策動により,国民的な議論を経ずに誰も求めていない制度ができてしまった。導入が決まった今も大多数の国民が裁判員などやりたくない,という無用の制度。裁判官の独立に反し,被告人から裁判所による裁判を受ける権利を剥奪する憲法違反の制度。書面主義を排し,法廷でのやりとりをもとに裁判を行うため,十分な検討が尽くせず杜撰な裁判を生み出す粗雑な制度。裁判後,守秘義務違反による摘発や,被告人によるお礼参りのリスクが裁判員に一生つきまとう不安な制度。法廷で裁判員の興味本位の質問に答えさせられる,犯罪被害者にとって過酷な制度。裁判所の改装,裁判員の日当・交通費など,巨額の費用がかかる浪費の制度。日々自己の仕事をし,平穏な生活を送る一般人を,殺伐とした法廷に引きずり出し,強制的に議論させ,意見を求める迷惑な制度。くじで裁判員に当たると,国家権力により突然召集され,原則断ることはできない。それゆえたとえ現在その意図がなくても,事実上将来の国民総動員・徴兵制度の導入への地ならしとなる危険な制度。
こういう意見が対立する問題について,一方の立場からなされた発言は,不利な情報を隠していることも多いから,だいぶ割り引いて考える必要がある。西野も田中も,現在の司法制度の抱える問題についてはあまり触れていない。そこで丸田の主張や政府の公式情報など,推進派の意見にも目を通したが,やはりこの制度には賛成できない。反対派の挙げる裁判員制度の問題点が,推進派の挙げる従来の裁判の問題点よりも重大だと感じるからだが,何よりの理由は,自分自身が裁判員になりたくないことである。凄惨な写真,兇器などの証拠物件を見せられ,何週間も連日見も知らぬ赤の他人と議論し,判断を迫られるなど,想像するだに恐ろしい。早く解放されたいばかりに細かいことには目をつぶり,裁判官や声の大きい他の裁判員に敢えて異を唱えない人も多いだろう。そんな議論に果たして意味があるのか。そもそも,氏名を明かさず判決に一切責任をもたない裁判員に,人を裁く資格があるのか?責任なくしてした決定ほど問題の多いものはない。推進派は,何でも国まかせにせず,皆が積極的にかかわっていくことが,個人として自立するために必要だというが,それは程度問題だろう。裁判員のように,重大・兇悪な犯罪の処理に市民が直接かかわることが是非とも必要とは思えない。
推進派の主張の一番の問題は,お礼参りの危険がないかとか,仕事を長く休んで会社から不利益な取り扱いをされないかという不安に対して,「そういう行為は法律で禁止されているから大丈夫」としか説明していないことだ。子供じゃあるまいし,はいそうですか,と納得することは到底できない。法律で禁止されていることが発生しないのなら,そもそも裁判員が参加する裁判自体起こらない。明らかに論理矛盾だ。こんな制度は,どうか施行前に廃止してもらいたい。
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裁判員制度のデメリットをひたすら強調した本。メリットについては、ほとんど書かれていない。著者がメリットなんてないと考えているからだろうが、推進論者にも言い分はある訳で、そこをもっと親切に紹介しないとフェアではないし、何より説得力に欠ける。
発行が2007年ということで、参考にするならもっと新しい本の方がいいかも。
少なくとも、現在においてこの本に星5つってありえないと思います。
公判前整理手続の存在について全然触れられていないのは、発行された時期のせいか?
財政上の問題については、まあその通りかなぁ。
裁判員になるのを回避する方法は、現在ならもう少し詳しく書いてある本がありそう。告発を適当にするっていうのはどうなの。
その他、憲法との関係についての問題提起は、少なくとも現在の判例を前提とすれば、???なものがあった。
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「恐怖の悪法を徹底解剖!」
裁判員に(強制的に)選ばれることで
国民一人一人にどれほどの負担が強いられるか。
そして素人が参加した審議が如何に杜撰になり、
加害者被害者ともに不利益を被らせるか。
いやそもそも裁判員制度って憲法違反でしょ!
etc...
わが身に降りかかってくるかもしれないこの制度、
時間がない人は、最後の二章だけでも読んでおきましょう。
このまま潰れなければ、なんと来年から施行なんて…
てゆーか、この制度徴兵制と何が違うの??
って思う方、その回答もこの中に。
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論理的でないし、屁理屈の連続で読むのキツいです。これもですが、反対派の本をちょいと読むと制度を赤紙、徴兵制に例えるのが多くて、ジェネレーションギャップですかね。 多分施行前に出されたと思うんですが、裁判員に選ばれた場合に、どういうことを任されて、どれくらい費用、時間がかかるのかなどについて詳しく書かれていたので、それだけにもったいない持論展開。
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(2015.05.08読了)(2013.09.24購入)
裁判員制度は、平成21(2009)年5月21日に開始されました。今年で6年経過したことになります。
この本は、裁判員制度が始まる前に、裁判員制度がいかにいい加減で、いかに国民に負担ばかりかける制度かを訴えて、実施見送りにしてもらおうとした目的で書かれたようです。
目的が達成されず、もう6年も続けられていることになります。
新聞などをみると、裁判員を経験して、心に深い傷を受けた、と裁判に訴えている方も、中にはいるようですので、筆者の訴えていることは、当たっている部分もあるようです。
ふだんの生活のなかでは、悲惨な現場写真などを見ることはないでしょうし、他人の運命をきめてしまうような判決に加わるという負担・責任を負わなければならないという重圧、等、経験したことのないことを経験し、心に傷を負ってしまうということはあると思います。
一般の人が、裁判に加わることによって、誤審を減らそうという目的で導入されたようですが、一般社会人が加わるためには、長期にわたる裁判は、難しいということで、なるべき裁判の日数を減らそうと、丁寧な裁判ができなくなるということもあります。
選ばれた裁判員にとっては、交通費・日当をもらって、本の世界でしか知らない裁判の現場に立ち会い、判決に加わるという経験をすることができるという側面もあります。
著者は、最悪の場合を想定しながら、導入を見送るか、導入しても早急に廃止すべきだといっていますが、実態としては、著者が危惧したほどのことは、あまりないのではないでしょうか?
国民の70人に一人は、裁判員を経験することになるという試算もありますので、小学校の二クラスに一人ぐらいの割で、経験者になりそうです。
宝くじよりは、はるかに当選確率は高いものです。心の準備をしておいてください。
【目次】
まえがき
第1章 裁判員制度とはどのようなものか
第2章 裁判員制度はどのようにしてできたのか
第3章 無用な制度―誰も求めていないのに
第4章 違法な制度―憲法軽視の恐怖
第5章 粗雑な制度―粗雑司法の発想
第6章 不安な制度―真相究明は不可能に
第7章 過酷な制度―犯罪被害者へのダブルパンチ
第8章 迷惑な制度―裁判員になるとこんな目に遭う!
第9章 この「現代の赤紙」から逃れるには―国民の立場から
終章 いま、本当に考えるべきこと
ブックガイド
あとがき
●世論調査(64頁)
時事通信社の世論調査によれば、裁判員制度は必要だと答えた人の割合は、2003年、2004年、2005年にそれぞれ49.7%、39.9%、33.6%だったのに対して、不要だと答えた人の割合は、それぞれ上と同じ年において、23.4%、34.6%、40.9%となっていました。周知が進むほど国民に嫌われる制度というのも困ったものです。
●憲法違反(80頁)
憲法は、裁判所や裁判官に関する規定はいくつか有しているものの、参審(陪審も同じ)に関する条文をまったく有していません。
●旅費・日当(142頁)
裁判員法によれば、裁判員選任のために呼び出されたたくさんの裁判員候補者にも旅費、日当を支払うことにな���ています。
全国ではいったいどれほどになるでしょうか。一日当たりにならすと、少なくとも毎日数百万円ずつの国費が費消されることになるのは間違いのないところでしょう。
●苦労(161頁)
裁判員の苦労の一つは、公判に立ち会って、証人尋問を聞くことです。これは公判に出席し、毎回五時間あまり裁判員席に端座していれば済むことではありますが、それまでの自分とはまったく縁のない世界、関心を持たずに済んできた異質な世界に無理やり引きずりこまれ、まるで興味を持てないような議論に巻き込まれるというのは、普通の国民にとっては決して楽しいことではありません。
(事件に興味・関心を持てない人と言うのは、割合として少ないのではないでしょうか?)
●裁判員に選ばれる人(223頁)
定年退職者、失業者・無職者などのほか、もの珍しさから一度体験してみようかといういわば軽率な人、日当目当ての人、気が弱くて裁判員を免れきれなかった人などが考えられます。
(体験者にアンケートで聞ける内容でないのが残念です。軽率な人ですか、とか、日当目当てですかとか。)
☆関連図書(既読)
「犯罪と刑罰」ベッカリーア著・風早八十二訳、岩波文庫、1938.11.01
「裁判員法」船山泰範・平野節子著、ナツメ社、2008.06.09
「裁判員のための刑事法入門」前田雅英著、東京大学出版会、2009.05.15
「裁判長!おもいっきり悩んでもいいすか」北尾トロ・村木一郎著、文藝春秋、2009.05.15
「ぼくに死刑と言えるのか」北尾トロ著、鉄人社、2009.07.30
「きみが選んだ死刑のスイッチ」森達也著、理論社、2009.05.21
「殺人者たちの午後」トニー・パーカー著・沢木耕太郎訳、飛鳥新社、2009.10.20
「あなたが裁く!「罪と罰」から「1Q84」まで」森炎著、日本経済新聞出版社、2010.11.05
(2015年5月10日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
元判事の大学教授が「赤紙」から逃れる方法を伝授。恐怖の悪法を徹底解剖。
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裁判員制度の問題点、実施された際に懸念されることをまとめた一冊。少々極端だと思うことはたまにあったけど、著者のおっしゃることは一理あると思う。しかしこの本はあくまで実際の裁判員裁判が開始される前に書かれたものなので、実際に行われた結果と照らし合わせる必要は感じた。また、賛成派の意見が書かれた本も読みたいと思う。
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今年から始まる裁判員制度について書かれている本。とはいっても、単に裁判員制度を解説している訳ではなく、裁判員制度の問題点を明らかにしようとしている。
本書を読むと、裁判員制度が如何にひどいものかが理解できる。本制度のネガティブな側面を針小棒大に誇張していると感じられる部分があることは否定できないが、それを差し引いても、何故このような制度が成立してしまったのか理解できない。
3年後の見直しで廃止されることを願うし、それまで裁判員候補者に選ばれないことを祈る。
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裁判員制度発足以前の2007年に出版された制度への批判的の書である。裁判員制度にはデメリットがあまりにも多く実施すべきではないという意見だ。
制度上の問題点を多方面から並べ、素人に人を裁くのは無理だと主張する。くじ引きで被告人の生死が決まったり、裁判員の生活に甚大な影響が及ぶことが法律上も許されないというのだ。
2009年に始まった裁判員制度も10年目を迎えようとしている。この間にも凶悪事件に対する裁判は幾つもあったが、裁判員はどのように振る舞ったのであろうか。
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言いたいことは伝わった。
裁判員制度は天下の悪法である。
もう少し文章が面白くかけていればいいのだが。